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CIID Winter School Tokyoの3人分の予算のつくりかた

「やっていいのなら、興味はあります。でも…」

私が最初に、リブセンスの社内のデザイナーたちに、CIID Winter School Tokyoの提案をしたときの反応は、こうだった。

でも…に続く言葉は、

「予算がないから…」
「英語が苦手だから…」
「実務に直接は関係ないから…」
「デザイナーの横断組織がないから…」
「そういう研修をこれまでデザイナーがやったことないから」

「やりたいって言っていいのかどうかもわからない」

かすかなポジティブに、はるかに大きな懸念と不安がただよう。

こんな状態から CIID Winter School Tokyo の3人分の予算を獲得するまで、私と、デザイナーたちと、リブセンス社内に何が起こっていたか。

リアルな実体験をこのnoteではお伝えします!

【このnoteを読んでシェアして欲しい方】
デザイナーの教育研修を本気で考える方
デザイナーの来期の予算をUPさせたい方
デザイナーの学びへのモチベーションをあげたい方

そんな方々に、少しでもお役に立てたらいいなという気持ちを込めて💖

じゃん!

CIID Winter School Tokyoとは

今回のnoteのメイントピックであるCIID Winter Schoolって?

簡単にいうと、世界的に有名なデザインスクールのひとつであるCIIDの短期間のプログラムを、日本国内で初めて開催するよっていうものです。

ABOUT CIID
CIID(Copenhagen Institute of Interaction Design)は2006年にコペンハーゲンで創立されたデザイン教育機関。人とモノだけでなく、技術・コミュニティ・社会・環境などあらゆるものごとが相互に作用する(関わり合う)デザインを考える『北欧型インタラクションデザイン』を提唱し、クリエーティブな発想からソーシャルインパクトを創造しビジネスにつなげていくことを目指しています。
トップ企業から優秀な人材が受講するサマースクールを毎年コペンハーゲンで開催したり、ビジネスの中心で活躍するクリエーティブ人材を多く排出するなど世界からの注目度も高い教育機関です。
About CIID Winter School
本スクールの参加者は8つあるコースからひとつを選び、 5日間を通してコース毎に異なるビジネスデザインのアプローチを体験・習得することを目指します。
すべての授業はジェンダー平等・気候変動・持続可能な生産消費といったSDGsで掲げられているテーマに沿って構成されており、世界のトップ企業から優秀な人材が派遣される「CIID Summer School」と同じ内容を体験することができます。

カリキュラムは8種類。
「UIデザイン」や「ツールの使い方」などのデザインの実務が学べる訳ではありません。

CIIDで学べるのは、「デザイン」を取り入れたビジネスとの向き合い方、ということがまず大切なこと。

Week1
「People-Centered Research」
「Service Design」
「Intro to Interaction Design」
「Prototyping as a Process」

Week2
「Designing for Impact & Inclusion」
「Designing Interactive Spaces」
「Change Management through Design」
「Future Casting」

そして、さらにお伝えすべき、大切な情報。

🔥基本は英語。現地と同じ英語圏の講師。参加者もグローバル。
 (講義パートは同時通訳あり)

🔥スクール受講費はUSD $2,550 (約27万円)

英語で学ぶ必要があり、それなりの覚悟の必要な受講費がかかります。

それでも、国内で社会人が受けられるデザインの教育プログラムとしてはトップレベルだと思ったことと、

すべての授業はジェンダー平等・気候変動・持続可能な生産消費といったSDGsで掲げられているテーマに沿って構成

という、社会課題に向き合うテーマに触れられることで、人間の根源的な幸せを見つめるリブセンスのデザイナーとして視野を広げるために、この機会を獲得しておきたいと強く感じたことがポイントです。

(-詳しくは下記から)

リブセンスのデザイナーの越えるべき4つの壁

この高額な教育研修の予算をつくるなんて無理じゃないかな、って思えるくらい、私たちリブセンスのデザイナーには、越えるべきたくさんの壁があった。

1.社内にデザイナーの横断組織がない
リブセンスのデザイナーは、各事業部にそれぞれ1〜3名が所属している事業部付の組織のみ。

過去にはデザイナーの横断組織が存在していたこともあったけれど、現在はなくなっていた。人数比率としてもエンジニアに比べて7~8分の1の状況で、予算はもちろん、キャリアも、評価も、組織としてどうしていくべきか、あまり議論ができていなかった。

2.デザイナー組織の担当役員がおらず経営層と直接話せない
エンジニアやPMは、組織の長が直接経営層と話す機会があるものの、デザイナーはその機会を作る必要があった。でもそもそも社内のデザイナーのうち、リーダーが誰かも定まってないので、誰がやるの?からの始まり。

3.デザイナーの大きな教育研修の前例がない
これまでも、図書費や数千円程度の小規模なイベントの参加費などは経費負担で行くことはあったものの、このような高額な出費の場合に、どうやって予算を作ればいいのか、わかる人も、参考になる前例もなかった。

4.本件を誰がどのように進めればいいか誰もわからない
1〜3の状況から、誰が、誰に、何を、どのようにして、どう決めればいいのか、全てが手探りの状態。これが私たちのリアルな状況だった。

私たちが、壁を越えるためにやった7つのこと

ここまでないない尽くしの状況でも、私たちはあきらめなかった。
ひとつひとつは小さいものの、「こうしたらいいかな」と思いつくできる限りのあらゆることを、実行にうつし、積み重ねてきた。

1.社内イントラにデザイナーのことをたくさん書いた
これは主に私が入社して半年の間に、confluenceというWikiのようなナレッジベースをフル活用して、なんどもなんども書き連ねていった。

デザイナーのあるべき姿、教育研修のあり方、スキルの捉え方、評価のこと、他社のデザイン組織の状況、過去のリブセンスデザイナーが残したことなど、たくさんの情報を拾っては残すの繰り返し。

もうあまり書いたときのことは覚えてないけど、そのうちのひとつには、こんな風に書いてあった。

デザイナーって?
ユーザーに最も近い距離に立つ。
曖昧なものを視覚化する。
ビジョンをあらゆるカタチにして届ける。
ヒトやモノの狭間で調整する。
バラバラな要素をまとめあげていく。
組織や事業における「翻訳」職務を担う。

事業や組織の状況によって変わるけど、そういうことをしているのがデザイナーではないだろうか。
デザイナーが立ち上がろう。
リブセンスのデザイナーは、すでに輝いていて、これからも輝ける存在であることを、私たち自身が信じて動いていこう。
一人のデザイナー、事業部内のデザイナーだけでは難しいことを、リブセンスの全社の視点で考えたり、解決できるようにしていこう。
声を出そう
まずは、デザイナーの声を拾い、声をあげられる状況を作ること。
デザイナーが日々、どんな気持ちでいて、どんなことに困っているかを吸い上げること。
伝えていこう
デザイナーって、どんな人が、どんなことをしていて、どんなことができるのかを可視化して他職種に伝えよう。
あり方を伝える。価値を伝える。リブセンスのデザイナーがどんな存在かを伝える。
チームになろう
お互いを理解しよう。私たちのための解決のアクションをみんなで決めて、みんなで作ろう。

これは私が勝手に書いたもので、公式なミッションステイトメントなんかではない単なるメモだけれど、少しでもデザイナーがプレゼンスを発揮できる状況を作りたかった。

confluenceに書いたことは、デザイナーだけでなく、社内の人事や、他職種の方に共有して、デザイナーの理解を深めていった。

2.デザイナーが自ら情報発信する土壌ができた
リブセンスのデザイナーには「自ら社外に情報発信する」経験も習慣も場所も足りなかった。どこで何をどう書いたらいいのか、というところから。

noteがよさそうだよね、とnoteを書くネタにしやすい勉強会に参加したり、Livesense daysという職種を限定しない社内のnoteマガジンに参加してみたり。情報発信ができるデザイナーが少しずつ増えていった。

デザインやデザイナーのことを自分たち自身で伝えていくんだ、という輪が広がり、ついには、リブセンスデザイナーのnoteマガジンを作ろう、という話に発展して、近々、社内外にマガジンをシェアできるように準備を進めている。

3.リブセンスのデザイナーのロゴをつくった
きっかけは「リブセンスデザイナーのnoteマガジンのアイコン画像をどうしよう」という課題から。情報発信を意識したことから、ロゴのニーズが生まれて、リブセンスのデザイナーロゴをつくることになった。

コーポレートデザイナーが社内の有志のデザイナーに向けて、ロゴのワークショップを実施し、ロゴを作るための一連のプロセスをその場の全員で体感した。

そのプロセスの過程で、お互いに、

リブセンスのデザイナーってこうだよね
こういうのが私たちだよね
可視化すると、こういうことだよね

という、それぞれの思いは少しずつ違えど、向かう方向性は近しいこと、社内におけるデザイナーの存在価値のような、共通の認識を確かめることができた。これはすごく大きなことだった。

(ロゴ作成のプロセスも、現在noteを作成中なので、公開をお楽しみに)

4.デザイナーが英語を勉強しはじめた
私が社内のデザイナーに「CIIDのような研修に行けるよう、なんとかしたい」という話をしたあと、まだ「行ける」なんて決まってもないうちから、社内のSlackに #デザイナー英語勉強会 というチャンネルができた。

英語に苦手意識のあるメンバーばかりだったけれど「英語を学ぼう」という小さいけれど、自分たちが変わるための行動が始まった。

5.仮で代表者を立てて、経営層にアタックした
誰がリーダーであるべきかとか、誰に本件の承認を得るべきかなんてわからなかったけれど、コーポレートデザイナーと、現場のいちディレクターの私のふたりで「CIID Winter School っていう研修にデザイナーが参加できるようにしたい」という提案を体当たりでぶつけていった。

広報なのか、人事なのか、社長室なのか。
誰が決定権を持つか、どんなフローで進めたらいいかわからないので、関係ありそうな執行役員たち全員に持っていった。

「わかった。じゃあ、2名行けるようにしよう」
「もし希望者が多かったらまた考えよう」
というGOサインがでるまで、5週間。

同じ話をなんどもなんどもして、あきらめずに伝え続けたことで、私たちデザイナーの熱量が、ついにCIID Winter School の枠をこじあけることができた。

6.デザイナーに「熱量」の体現をお願いする募集をかけた
参加枠はできたものの「参加者をどうやって決めたらいいか」のボールは、私たちデザイナー側に委ねられた。

言い出しっぺの私と、コーポレートのデザイナーのふたりで、
「私たちが決めていいのかな」
と迷いながら、

「でも、誰かが決めなきゃいけない」
「とりあえずやってみよう」
ひねり出した募集のかけ方はこの通りだった。

対象者は限定しない
社歴や年齢、英語スキル、現在のロールは条件にしない。
社内のSlackで #デザイナー の全員に @here で呼びかける。

間口は広げた。
そのうえで、会社負担で行くのなら、事業と組織に還元する予算の活用をする必要がある。

「参加する人にこういう行動をしてほしい」というお願いの形で、学びの熱量を体現するような、コミットメントを求めた。

参加する人にしてほしいこと
・業務調整が可能であること
・社内の他職種を含めた共有会で話してほしい。
・レポートをnoteで、積極的に書いてほしい。
・LIVESENSE INFOで取材を受けてほしい。
・採用活動で候補者にCIIDのことを話してほしい

こんな厳しいことをお願いして大丈夫かな。誰も手をあげてくれなかったらどうしよう。そんな風に悩みながらも、えいや!で募集をかけた。

7.ポジティブなお見送りと増枠のお願い
立候補の期限に設定した日までに、2枠の募集に、
なんと4名のデザイナーから参加希望の意思表明があった。

4名とも「他に希望者がいなかったら」のような謙虚な前置き付きだった。
この状況に、私たちは、

・1名をポジティブなお見送りにしよう
・枠を2枠から3枠に増枠の打診しよう

という2つの判断をした。

ポジティブなお見送りとは、
「もし若手デザイナーから希望があれば、今回は出来るだけ若手にゆずって、自分は別のチャレンジをしたい」
という本人の意向を尊重しただけのお話。
この謙虚さとチャレンジ精神には感動した。

そして、2枠から3枠への増枠の希望とともに、本件の最終承認を得るために、全社の部門長会議に向けて、熱量を込めてドキュメントを作成した。

・CIID Winter Schoolとはどんなものか
・どのように候補者を決めたか
・それぞれに期待することはどんなことか
・その上でなぜデザイナー3人が行くべきか

なぜ行くべきか、の部分には、個人、事業、デザイナー組織の3つの観点のそれぞれの成長のためにそう判断してほしい、という思いを込めた。

諸々の調整をしていただいた2週間後、

「わかりました。3人、行けるようにしましょう」

という、結果を獲得することができた。

長かった。。。ようやく。。。かなった。。。


なぜ、かなえたかったのか

最初にお伝えした通り、私たちにはたくさんの壁があった。デザイナー全体をマネジメントするようなロールの人は、誰一人としていない。
もちろん、私もただの現場のディレクターだ。

私がリブセンスに入社したのはデザイナーがキラキラするようなプロダクトづくりにたずさわるためだった。

ただ「良いプロダクトを作るには、リブセンスのデザイナーたちが活躍する組織の土壌も必要なのではないか」という思いが、入社した直後から強くあった。

すごく遠回りかもしれないけれど「デザイナーはこういうことに興味がある」「デザイナーが活躍するために必要なことはこういうことだ」ということを理解して、実現できる組織である方が、より良いプロダクトを生み出せるのでは?という確信があったから。

最後に

実は3人のお見送り
こっそり裏話を伝えておくと「ポジティブなお見送り」は、実は1名ではなく、3名だった。私と、コーポレートデザイナーの2名も「誰も手が挙がらなかったら参加しよっか」と言ってた参加希望者だった。

思いのほか、希望者が集まったことは単純にうれしかった。

「今回は、現場のデザイナーが参加して、それぞれの事業でもっと活躍してくれた方がいいな」という気持ちでいた。私は、ほっといても勝手にプレゼンスだけはあげちゃうタイプだから、ということもある。

きっと、コーポレートのデザイナーも思いは同じだろうな、と。

来年のデザイナーの教育研修費用全体への影響
ここまでのことがきっかけだったのかわからないけど、以前よりも、デザイナーたちが「これやりたい」「これ学びたい」を口々にいいやすくできるようになった気がする。

予算を決める場はオープンに。有志のデザイナーたちでワァワァいいながら「来年のこれとこれとこれに行きたい!」と。

行きたいイベントや、プログラムが盛り盛りの希望ベースの予算を作った。

その結果、もちろん全ては叶わなかったけれど、来年度のデザイナーの教育研修費用は、今年度よりも大幅に引き上がった。

なんとCIID Winter Schoolとは別に。
これは予想外の収穫だった。

tobe continued
私たちリブセンスデザイナーの挑戦は、この先も続く。

今回のお話は、きっと、序章に過ぎなかったね、ってこの先言えるように、たくさんの挑戦をかなえていけますように。

ここまでお読みくださって、ありがとうございます!
スキやシェアは私だけでなく、リブセンスのデザイナーみんなの、大きな励みになります。

🍎

この記事は事業会社で働くデザイナーを中心としたコミュニティInHouseDesignersのアドベントカレンダーの2日め、12/2の記事です。

おしまいまで、読んでくださってありがとうございます✨ あなたの明日が、ちょっとステキになりますように。