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「カルシウム」が力を出せない栄養バランスは、アレルギー症状を引き起こす~状況説明編~

今、国民の2人に1人がアレルギーであることはご存知でしょうか。生まれつきの体質であったり、生活環境によって発症するとされています。
下に挙げる症状・疾患はすべてアレルギー反応によるものですが、患者の方が増え続けています。

  • 花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)

  • アレルギー性鼻炎(一年を通して症状が出る)

  • 気管支喘息

  • アトピー性皮膚炎

  • 食物アレルギー

以前私がドラッグストアで働いていたとき、登録販売者の先輩からあることを教わりました。内容としては
『カルシウムが足りないためにアレルギー症状を引き起こしやすくなっている。マグネシウムも一緒にとらないと吸収されづらいから、一緒にとれる薬を選んであげなさい。また、お菓子を減らさなければいけない』というものです。

当時は教えられたまま接客をしていましたが、今回記事を書くにあたり勉強をしなおしました。新たに判明したことは2つあり、カルシウムは「免疫」と関連があること。そして単独では力を発揮できず「支える栄養素があってうまく機能する」ということです。

世間では「カルシウムは骨の成長を促すので、積極的にとりなさい」と伝えています。しかし取り巻く栄養素のバランスが崩れると、うまく吸収されず、かえって体に悪影響を及ぼしてしまうのです。アレルギー症状はその1つです。カルシウムと関係のある栄養素は主に3つあります。

  • マグネシウム

  • ビタミンD

  • リン

本記事では皆さんに理解していただくにあたり、まずアレルギーがどのように起こっていくのかを解説します。その上でカルシウムを中心に、4つの栄養素に焦点を当てるようにしました。
各栄養素が「どのようにカルシウムと関連があるのか」「私たちの摂取状況はどうなっているのか」を知ることができます。

カルシウムがアレルギー症状を抑える助けになる。ですからアレルギー体質の方にとって大切な栄養素なので、支える栄養素と一緒にとりましょう」とお伝えするのがテーマです。長くなりますので今回の記事は状況説明とし、栄養素のとり方に関しては次回の記事とさせていただきます。


カルシウムは免疫が働くのを助ける=アレルギー症状を抑える

アレルギーは免疫の過剰反応

はじめに、アレルギーが起こる順序を追っていきましょう。発症には「免疫」が関係していることはご存知でしょうか。

  ① 免疫細胞→(攻撃)→ 異物 → 排除 =正常な免疫

例えば体にとって、鼻や口から入ってきたウイルスや花粉といったものは異物になります。侵入してきた異物を排除しようと、体の中の免疫細胞が攻撃することが「免疫」と呼ばれます。

     ② 免疫細胞→(攻撃しすぎ)→ 異物 → 排除+症状 =アレルギー

ところがある要因で免疫が過剰に働き、異物に対して必要以上に激しく攻撃をしてしまいます。結果として、私たちを苦しめる「アレルギー症状」となって体に現れるのです。

血液中のカルシウムが不足すると、免疫異常が起こる

カルシウムは骨を作るのに必要な栄養素として知られています。加えて、免疫とも密接な関わりがあります。

先ほど、免疫細胞が異物を攻撃する流れをお伝えしましたが、さらに前段階の動きにカルシウムが関わっています。それには血液中に存在するカルシウムの量が関係しています。

         (カルシウム不足の状態)
異物が侵入→ 余分なカルシウムが細胞内に送られる→ 免疫細胞が混乱→上の②の流れ→アレルギー

普段は血液中と細胞内にカルシウムが一定の割合で存在し、免疫のバランスを保っています。しかし血中濃度が不足すると、血液中から細胞内に送り込まれる現象が起きます(カルシウムパラドックス)。
するとバランスが崩れ免疫細胞が混乱してしまい、異物に対して過剰に攻撃をしてしまいます。結果、アレルギー反応を起こす一因となるのです。

カルシウムには支えが必要!「ビタミンD」と「マグネシウム」

アレルギーを起こさず免疫を正常に働かせるためには、カルシウムが必要であることをご説明しました。では、カルシウムさえとっていれば問題ないのでしょうか。実はカルシウムという栄養素は単独では働いてくれません。ほかの栄養素の支えにより、役割を果たしてくれます。

カルシウムの吸収率を上げるビタミンD

「ビタミンD」はカルシウムの吸収を助け、骨を作るよう促す役割があります。欠乏してしまうと、カルシウム吸収量が減少し、体内で利用できる量が少なくなります。ビタミンDの助けなしでは吸収しにくいので、カルシウムにとって必要な栄養素と言えます。

マグネシウムなしでは働けないカルシウム

「マグネシウム」はカルシウムにとってパートナーのような存在です。
カルシウムとマグネシウムは体の中に一定の割合で存在しており、セットで機能する栄養素となっています。

    カルシウム:マグネシウム=2:1

マグネシウムが不足すると、セットになれない余分なカルシウムは体の外に排出されてしまいます。排出しきれない分は骨から溶け出して、体に悪影響を及ぼしてしまいます。ですからマグネシウムをとらず、カルシウムばかりに偏った栄養摂取は危険であり、気をつけなければいけません。

不足する3つの栄養素

ご紹介した栄養素を、私たちは日々どれくらいとれているのでしょうか。
厚生労働省が発表したデータを用いて、各栄養素ごとにみていきましょう。

カルシウム不足は給食でなくなる高校生の時から始まっている

図①:厚生労働省:令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要
         栄養素等摂取量(1歳以上、男女計・年齢階級別)より編集・抜粋

カルシウムは、国が定める一日当りの食事摂取基準における推奨量に男女とも満たない栄養素です。
厚生労働省がまとめた日本人の食事摂取基準(2020年版)では、1日の推奨量を

18~29歳男性で800㎎
30~74歳男性で750㎎
75歳以上の男性で700㎎
18~74歳女性で650㎎
75歳以上の女性で600㎎

と定めています。上の図①を見ると、推奨する量に対し摂取量が届いていないことがわかります。特に必要量が多い若者世代は、明らかに摂取量が足りていません。
一因として考えられるのが、高校生以降に給食がなくなる影響です。
中学生までは給食で毎日飲んでいた牛乳を、高校生になりお弁当になった途端、飲まなくなってしまう傾向にあるからです。日本人はカルシウム摂取量の3割を乳製品に頼っていることから、かなりの量を牛乳に依存しています。

比較して、高齢世代は基準に近い量を摂取できています。健康志向が高まり、食事を見直す人が多いからだと考えられています。

ビタミンDの不足は紫外線を嫌う風潮からきている

             出典:日テレニュース

ビタミンDはどうでしょうか。一日当たり摂取目安量は、成人男性を基準とすると8.5μg(マイクログラム)とされています。図①の表では全体平均摂取量がと6.4μgとなっていますので、こちらも足りていません。
日テレの動画内でもふれていますが、ビタミンD不足の主な要因は以下となります。

  • 屋内勤務の増加

  • 紫外線を嫌う風潮

  • 食事が欧米化して肉食傾向になったため

まず大きな要因として、日光を浴びる時間の不足が挙げられます。
1つ目の理由としては屋内勤務の増加です。昔と比べ、産業構造の変化よりホワイトカラーに従事する人が増えました。近年では特に都市部においてオフィスワークやテレワークが主流となってきているため、必然的に日光を浴びる時間が足りなくなっています。

2つ目に、紫外線を浴びることが悪とされている風潮です。シミ・しわの原因となるなど主に美容上の観点から、私たちはなるべく日光浴そのものを避けるという傾向にあります。
風潮が高まったのは、地球温暖化によるオゾン層破壊の反響です。紫外線から肌への悪影響が盛んに報じられるようになり、考え方が広まりました。

ビタミンDが不足するもう1つの要因として、食事の欧米化が挙げられます。肉類を中心とした洋食は、和食と比べてビタミンDがあまり含まれていないためです。

マグネシウムは軽視されている

同じようにマグネシウムの状況をみていきます。
体に必要な量は、カルシウム:マグネシウム=2:1のバランスから計算すると、推奨量300mg~400mgになります。ここで図①を参照すると全世代における摂取量の平均は245mgで、不足となっています。
カルシウムの半分の量であれば、意識せずとも自然にとれそうなものです。なぜ不足してしまっているのでしょうか。以下の要因が挙げられます。

  • マグネシウムの存在自体が軽視される風潮

  • 昔は主食だった雑穀・玄米をほとんど食べなくなった

  • 天然塩から塩化ナトリウムへの置き換えが進んだ

  • ストレスによる排出

1つ目の問題として、マグネシウムの存在そのものが軽視されてしまっている現状です。摂取する意識が薄いために、摂取機会の減少につながっています。
2つ目は、やはり食生活の変化です。昔の日本で食べられていた、雑穀類や天然の塩はマグネシウムを多く含んでいました。しかし現代人は白米を食べ、食塩は人工生成された「塩化ナトリウム」を使うことで摂取量を減らしてしまいました。
3つ目は、ストレスの影響です。精神的・環境的ストレスは、カルシウムとともにマグネシウムを尿中に排出してしまうこととなります。

出典:オーソモレキュラー栄養医学研究所
上2図は、午前と午後各2時間30分を4℃の部屋で過ごした。 対照は同一の食事でストレス負荷なしの日の値。 下2図は、午前と午後3時間、大学生女子12名が小学3年生の計算ドリルを解いた(精神的ストレス)。

リンはとりすぎてしまう傾向にある

「リン」という栄養素をご存知でしょうか。カルシウムやマグネシウムと同じくミネラルに分類される栄養素です。骨や歯を形作る成分として体の中に存在しています。本来であれば大切な栄養素なのですが、現代人はとりすぎる傾向にあり悪影響を及ぼしています。
なぜかというと、摂りすぎによって体内にあるカルシウムを排出させてしまうからです。リンは加工食品に含まれる「食品添加物」として使用されています。

出典:MediPress

私たちがおいしく食べられる「でき上がった食べもの」には、ほとんどの場合リンが使われています。食材を長持ちさせるため、あるいは味を調節するために使われています。
では、「リンが含まれていないものを買えばいい」と思われるかもしれません。しかし、たとえばスーパーでハムを購入する場合、パッケージにある成分表示を見ても、把握することは難しいです。添加物は種類がたくさんあり、一括で表示される場合があります。そしてどれくらいの量含まれているか記載する義務が定められていないのです。

まとめ

現代社会で一般的な生活をしていると、体の中では下のような状況が起こっていることになります。

  • 免疫とつながっている「カルシウム」→不足

  • カルシウムを吸収しやすくする「ビタミンD」→不足

  • カルシウムと一緒に働く「マグネシウム」→不足

  • 骨や歯を構成する「リン」→とりすぎてカルシウムを排出

こうしてみると、「バランスが取れていない」のがおわかりかと思います。
栄養バランスがとれていないために「カルシウムが不足する=アレルギーが発症しやすい」となってしまいます。

では具体的に、どのように栄養摂取をすれば状況を改善できるでしょうか。次回の記事でお伝えいたします。


参考URL

独立行政法人 理化学研究所:アレルギー反応を制御する重要分子「STIM1」を発見 
https://www.ims.riken.jp/pdf/20071203_1.pdf

公益財団法人 骨粗鬆症財団
https://www.jpof.or.jp/
公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット
https://www.tyojyu.or.jp/net/

農林水産省みんなの食育https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/minna_navi/topics/topics1_05.html

牛乳・乳製品の摂取と骨粗鬆症・骨折リスクの関連について :j-milk
https://www.j-milk.jp/knowledge/nutrition/osteoporosis2022.html#hdg24

体内で必要とするビタミンD生成に要する日照時間の推定 :独立行政法人国立環境研究所 https://www.nies.go.jp/whatsnew/2013/20130830/20130830.html

リン管理のポイント:MediPress
https://dialysis.medipress.jp/hint-of-life/meal/66

オーソモレキュラー栄養医学研究所 栄養素の説明 - ミネラル
https://www.orthomolecular.jp/nutrition/magnesium/


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