見出し画像

インスリン、糖尿病、生活習慣病(2)ブドウ糖の代謝

僕はラーメンいっぱい食べただけで血糖値は300mg/dlを超える。普通の人は100mg/dl程度だ。その差の200mg/dl分のブドウ糖はどこに消えたのだろう?この話をすると、皆こまる。医師でも答えられない(笑)。

血糖値が100mg/dlということは1リットルの血液の中に1gのブドウ糖が入っっています。人の身体は70%が水です「水=体液(50リットル)=血液(5リットル)+間質液+細胞内部の水溶液(45リットル)」(70kgの体重)。

血液の中に5gが溶け込んでいます。間質液は「細胞」が体液に浮かんでいます。間質液の中のブドウ糖濃度は若干低いものです。そして細胞の中のブドウ糖の濃度は間質液より低いのではないかと考えられています。残念ながら、「間質液+細胞内部」の液量ははっきりとはわかっていませんのでブドウ糖の総量はわかりません。また、細胞に取り込まれた瞬間に異なった化合物に代謝され、別な物質に変わるのです。

細胞の中にはどのくらいのブドウ糖が有るかは、はっきりわかられわかられていません。細胞内に招き入れられたブドウ糖(C6H12O6)は即座に姿を変えます。多数の代謝(常温での化学反応)を経由して、ブドウ糖はミトコンドリアまでH(水素)を安全に運びます。

そして水素はミトコンドリアで(ADP+P->ATP)の代謝を行います。ATPはPを分離させる事で「ATPアーゼ」と呼ばれる分子レベルの「水車」を回します。光を受けて代謝された化学物質が運動エネルギーをここで生み出すのです。この物理反応は植物から始まり、全ての生命に共通の仕組みなのです。ブドウ糖が生命のエネルギーの通貨だと言われる所以です。細菌も、ウイルスも菌類も同じ通貨(プロトコル)のもとで共生しているのです。

ミトコンドリアで使われた「遊離水素(H)」と「遊離炭素(C)」は酸素(O2)と結びつき水(H2O)と二酸化炭素(CO2)に代謝されます。私達は呼吸と呼んでいます。そのタイミングで活性酸素が発生して、ミトコンドリアは順に崩壊していくのです。

スクリーンショット 2020-05-30 12.26.11

肝臓に100g筋肉に300gのブドウ糖が(グリコーゲン=安定したブドウ糖として)保存されています。筋肉中のグリコーゲンはその筋肉細胞の中でしか使われません。肝臓のグリコーゲンは「お財布」のようなものでいるときにつかわれて、食事をするとすぐに満タンにされます。

脂肪細胞でもブドウ糖は脂質に代謝されて貯蓄されます。しかし、それは使うまでに時間のかかる貯金のようなものです。肝臓ではブドウ糖は「中性脂肪」に代謝され間質液に放出されます。

中性脂肪は肝臓から体液内に放出されます。身体というコロニーにとって脂質は重要な要素です。無駄にはされません。

中性脂肪は脂肪細胞で固定されたり、腸肝循環(胆汁として肝臓ー>十二指腸〜小腸ー>肝臓)を経てコルステロールとして働いたりします。一つ一つの細胞もその内側には「脂肪滴」と言われる小さなお財布(小銭入れ)を持っています。

ブドウ糖はどのくらい使われるの?

インスリンの許可の必要ない細胞(筋肉と脂肪以外)は1時間で10g(脳が5g)程度を使います(と言われています)。細胞は常に「細胞膜の外にナトリュウムを外に汲み出して、内側にカリウムを取り込んでいます」(Na-k能動輸送=輸送にATP<->ADPが必要)。これこそが生命活動なのです。

1時間で10g使っていくとなると、10時間で肝臓の在庫(100g)はなくなります。筋肉内の在庫はその細胞以外では使えません。ケトン体(脂質からの代謝物)はありますが、代謝速度(ATP<->ADP回転速度)が遅く、脳では使えません(ケトン体は脳でも使われますがあくまで補助的な利用です)。何よりも、インスリン治療で年間4万人の低血糖患者が出ることが脳にとってブドウ糖が重要な事の証左です。

肝臓でタンパク質からブドウ糖はつくられる

インスリンという仕組みは脊椎動物に一般的です。鳥は血糖値が3000mg/dlが正常値だと言います。ライオンやトラといった肉食獣は一切炭水化物を食べていません。ブドウ糖をどこから得ているのでしょうか?おまけに、野菜を食べないのにあんなに元気です(笑)。

肉食獣は、脂質(ケトン体)をエネルギー源として、タンパク質を材料としてブドウ糖を作ります。肝臓には「糖新生」と言われる代謝系があります。実際にこの代謝系は、ヒトにも有ります。食事の炭水化物に依存しないでブドウ糖を作ります。

糖尿病になると筋肉が減ると言われますが、この表現は短絡的です。あらゆる哺乳類は常に筋肉を分解して体液に放出している(5〜20%)。そして肝臓で、そのタンパク質(糖原性アミノ酸)を材料にしてブドウ糖を作っている。食事のたびに、インスリンの許可により筋肉組織はブドウ糖を取り込んで筋肉組織を再構築するのです。

暁現象と呼ばれる明け方に血糖値が上昇する現象があります。僕も血糖値を測定すると4時〜7時位の間10-20mg/dl高くなります。インスリンも血糖値に見合った量が分泌されます。「筋肉・脂肪組織」が再構築されるためにアクセルとブレーキが同時に踏まれているようなものです。

しかし、I型の患者の場合はインスリンの分泌が0ですから、筋肉も脂肪も毎日溶け出していくだけなのです。そのために、痩せていきながらブドウ糖は血液内に溢れていきます。尿から糖が排出されます(尿から糖が出るのは当たり前の反応なのです、それが病気なのでは有りません)。

スクリーンショット 2020-05-30 13.11.31

血糖値はどこに消える

2015年、血糖値の測定器を買って、毎日測定を始めました。インスリンの治療はしないで食事で血糖値を落とせるか命がけでした(笑)。その時にまず知りたかったのが食事の炭水化物(=ブドウ糖)がどこに消えるのかでした。

ブドウ糖だけでなく、食事で身体というコロニーに入ってきた物質はその瞬間から様々な組織の中に取り込まれ、別な化学物質に変わります。

医師は「血糖値を下げる」と単純に言いますが、身体というコロニーは緻密で簡単な解読ができないものなのだと1990年代以降の生命科学の発見は言っています。

専門家(商売人)は「自分のビジネスモデル」から離れられません。権威として自分の仕入れた過去の知識を高く売るのが商売なのだから。レシピ本の監修やテレビ番組で白衣着ている「センセイ様」のお説を拝聴すると、この人の大学時代はこんなものだっのかと考古学的感銘を受けます。

自分の命を守るためには自分で学ばなければならない。それは孤独で辛い。もし僕が失明したら専門家(商売人)は大喜びするだろう。けどね、あんたたち専門家も通る道だ(統計的にですが)。

「高血糖が病気の原因だと信じ、血糖値を下げれ幸せになる」と言う思い込みが『幾種類もの薬を処方され、同じような手術を繰り返し、「輸液・経管・胃瘻」の辛い老後と施設や病院での孤独な人生の終わり』を提供しているのです。僕はそんな人生の終わりはまっぴらだ。

だから勉強するし、毎日、素材から食事を作る。



ちょっとコメント:代謝学の楽しみ

代謝とは常温におけるエネルギーの生産です。よく「燃焼」と呼ぶ方々が居ますが明らかミスリードです。燃焼とは、酸素のある所で、炭素と水素の化合物を高温にすると、崩壊熱を伴う酸化(OがHとCに結びつき、化合物は灰になる=H2OとCO2の発生)が起こり、その崩壊熱で連続的に酸化が続く現象です。

身体の中では燃焼は起こりません。脂肪は燃えません。体温の発生と呼吸(O2->CO2)を類比させた18世紀の科学者には尊敬の念を感じますが、今でも同じように考えている学者には呆れ果てます。

代謝とは、太陽光線を利用して炭素と水素を結びつける反応から始まり、ミトコンドリアでADP+P=>ATPのサイクルまでの長い道のりなのです。食物連鎖・輪廻と言っても良いのかもしれません。お日さまの力はこの地球の表面に薄っすらと生えるカビのように生命を育てます。


ATPに関しては高校の教科書にも載るくらいですが、全身で300g程度しかないことは知っている人は少ない

どんなに食事をしてもATPの総量は増えません。自動車がガソリンと燃料に使うのとは全く違うのです。

一日に体重くらいの重さのATPは使われます。使われるというのはADP+Pに分解されます。そして即座にADP+PはATPに戻されます。300回以上リサイクルされているのです。僕は分子的な弓と矢とイメージします。ADPという弓がPと言う矢をつがえるのがミトコンドリアで、Pを放って分子レベルの水車(ATPアーゼ)が回っているのです。

代謝を燃焼にも模すのは固く戒めるべきなのです。


画像4

ATP<=>ADP+Pはすでに語り尽くされているかに見えます。しかしながら田川邦夫先生の一連の著作は新たな発見を与えてくれます。そして、栄養学と代謝学の橋渡しをしてくれるのです。



代謝に関しての一番のおすすめは「代謝ガイドブック」です。この本を読むまで代謝というものが何なのかわかりませんでした。常温での化学反応の連鎖であり、それを実現するための精密な仕組みです。それを実感できます。


ATPの解説書は多くありますが、これが一番、分かりやすいのでここから先の本でわからないことはここに戻ってもう一度読みます。さすがブルーバックス!


この本は代謝(常温での化学反応)がいかにたくさんのステップで進むかをひと目でわからせてくれます。決して分かりやすいものでは有りません。私たちの「身体というコロニーに共生している細胞(=生命)」この一連の流れを持っています。僕は時折この本を眺め、よくぞまあ解明したものだと先達の努力と好奇心に思いを馳せます。

代謝学



厨房研究に使います。世界の人々の食事の価値を変えたいのです。