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マンホールからベンガルトラまで その7

おじさん達のビューティフルタイム


午後からは最後のアクティビティーとなる、湖へのサイクリングだ。
これが想像以上に大変なものだった。

自転車は好きだし、日本ではよく乗っている。だから舐めていた。

日本の道路って本当に走りやすいように出来てるんだね。アスファルト万歳!
ネパールの道路は道がめっちゃ悪かった。

デコボコのコンクリート道路を一時間半。
土と石と水が溜まった道を一時間。
ママチャリで走る。

ペースは速くないが気を抜くとコンクリートに空いた穴や石ころに引っかかって車輪を持っていかれる。
せめて変速ギアが欲しかったな。
 
でも車では感じることができない人々の生活を自転車だと感じながら走ることが出来た。

家の前で子供達が遊ぶ姿や大きな橋の下で沢山の牛が散歩してたり、路上で犬同士が喧嘩したりしてるのを見るのも面白かった。

どうだ犬パンチ!なんのスウェーで避ける!

 
今回のガイド役はザハという男性でおじさんだと思ったらまだ三十歳だった。話してみると子供が三人いるという。その所帯っぷりが顔に出ておじさんくさいのか。
しかし、ガールフレンドが他に2人もいるという自慢も挟んでくる。
おじさんくさいのにガールフレンドがいるのか、なんだか悔しいぜ。
 
ザハにネパール語を教えてもらいながら自転車を漕いでいった。

1、2、3、4がエック、ドゥイ、ティン、ツァール。

うー、全然覚えられん。帰るまでに買い物くらいはネパール語で出来るようになりたいのだが。
 
道がコンクリートから土の道に変わると周りは木で覆われてグリーン一色になった。たまにガタガタの小石の道になってるところでは自転車を降りて押す。

道全部が水溜りになってるところでは止まらないようにジャバジャバいわせながらゆっくり立ち漕ぎする。

つまり通る道はあまり舗装されていない道ばかり。
もうちょっと頑張ろうよネパールの道。全体的に。
 
途中で熊が住んでいたという穴や一メートル半程もあるアリの巣や木の間を飛び回るタカやサルを見ることが出来た。
 
ついに到着した湖は確かに美しい所だった。
風が入りにくい場所のようで波が立たないから鏡のように向こうのグリーンの森や白い雲が浮かぶ青い空を写し出している。
水面には水草が繁り、その水草が浮き島のようになってゆっくりと動いているものもあった。
 
ザハは「キレイでしょ?」と言った後、自分は見飽きているといったふうで早速おやつのリンゴを出して食べるつもりらしい。
リンゴは一個なのだが、私にもくれるつもりなのか素手で割ろうとしている。ナイフを忘れたようだ。

いや、素手でリンゴは無理でしょ、ムリムリ。

と思っていたらプルプル、ウガァーっという感じでついに割ってしまった。

思いがけずパワフルな奴だ。意地を通しやがった。
こういうワイルドなところに女性は惚れるのだろうか。

半分こした歪な形のリンゴを二人で美しい岸辺に腰掛けて食べた。

「おいしいね。」

「うん、思ったよりも甘い。」

「空がきれいだ。」

こんな会話をしている。
綺麗な湖畔を眺めながらこの会話、まるで恋人同士みたいじゃないか。

今日知り合った三十過ぎのおじさん二人の間にはリンゴを半分こするくらい仲良しな、不思議恋人時間が流れた。
 
帰りは二人とも無言で二時間を駆け抜けた。
途中で一度だけ「疲れたな。」「漕ぎすぎてケツが痛いな。」と頷きあった。

美しい湖畔におじさん2人


子供達とソウルフード


ブラブラとメインストリートを歩く。
さっきのサイクリングで予定していたアクティビティーは全て終了してしまった。

とりあえず散歩でもしようかとブラブラしてるのだ。

まだこの地域の雰囲気を肌で感じられていない気がしていた。

「その土地のことを知るには散歩が一番!」というのが私のモットーだ。

とにかく歩く。
そして写真を撮る。
その時受けた感情や体験がその土地のイメージになっていく。
それをもっと感じたい!
 
メイン通りなのにあんまりお店がなく、そんなにごちゃごちゃしてなくて緑が溢れている。

人もそんなに通っていない。牛とかヤギとか、動物の方が多いくらいだ。あとは子供達。

仕事の時間だからか、大人にはあまり会わないが、外で遊ぶ子供達はよく見かけた。
 
この村の印象は「とにかく子供達がカワイイ」だ。

みんな無邪気でこちらに興味津々。写真に撮られることが嬉しいみたい。
カメラを向けると「にひーっ」と笑う。なんかネパールの子供はみんな目がクリクリしてる印象。
大人になると男性はヒゲツラになってムサくなっちゃうんだけどね。子供の頃はめちゃ可愛い。
 
数人の小学校入る前くらいの子供達が遊んでいる。馬の付いてない馬車に乗ったりして幌の隙間からこっちに笑いかけてくれる。
まだ小さい男の子とかはフルチンで遊んでるくらい緩やかな地域みたいだった。
でもパンツくらいは履いとけよ。
なんで上は着てるのに下は履いてないんだ?

馬車の幌で遊ぶ子供たち
牛は機械化されてない農業にはなくてはならない


 
作物を頭に乗せて運んでる人の後をついて行って脇道に外れると田んぼが広がっていた。
田んぼ道をそのまま進むと窓が大きなハイカラな家が現れた。
外には鶏が放し飼いされている。ちょうど子供が生まれる季節なのかひよこたちがお母さん鶏の後をピイピイと追っていく姿がカワイイ。
野犬とか多いみたいだけどこんな無防備で大丈夫なのかな。と思ったら、片足だけの鶏とかもいて、やっぱり襲われる事はあるみたいだ。
そこらへんの考え方も大らかなのかもな。
 
気がつくと、7歳くらいの女の子が二人、窓からじっと私が鶏の写真を撮っているところを見ていた。
変なおじさんではありませんよーという気持ちを込めて「ハロー」と戯けた顔で手を振ると、はにかむように二人とも小さく手を振ってくれた。
よしよし、変なおじさんとは思われなかったみたいだ。
 
その帰り道のメインストリートで、私はついに待望のものを見つけてしまった。

ニホンショク。

日本食である。

何度も通っていたメインストリートだったが、建物の二階部分にあったので気づかなかった。
 
あの、突然ですが告白することがあります。
今更ですけど実は私、ネパール料理が苦手みたいなのです。
インドに行った時もそうだったんだけど、匂いがダメでおじさんを食べてるような気持ちになっちゃうんだよね。
きっと意味わからないと思うけどいつも食べてる香辛料の匂いがおじさん達についてて、その匂いのするものを食べるとおじさんを食べてるような気になって気持ち悪くなるという。自分でも言ってて意味わからないんだけど、ともかくインド料理とネパール料理の味が苦手なのです。

ホテルの食堂は洋食中心なので食べやすかったが、今泊まっているところが朝昼晩ほとんど同じメニューなので味は悪くないんだが飽きてきていたのだ。
そこにきて懐かしの日本食が食べれるレストランをようやく見つけることが出来たと言うことだった。
 
窓に書いてあるレストランの名前は「桃太郎」

な、なんとも古風だ!
そしてわかりやすい。
日本で見たならレストランに変わった名前つけちゃったなと思うだろうけど、海外で桃太郎という日本を象徴したような名前のレストランを目の当たりにすると、なんと嬉しく心強いことか。

ちょっと早いけど、夕食を頂こう。もう我慢できん。
 
入ってみるとそこは日本の定食屋さん!という感じではなかったが、日本テイストが混じったネパールではないどこかだった。

店員さんは普通のネパール人のおばちゃん。
「いらさいませー」っと頑張ってる日本語に好感が持てる。

手渡されたメニューを開くと、うどんやらカツ丼やら牛丼やら。
こんなものがネパールで食べれるとは思わなかった。
なんか見たことない食べ物もメニューにあるみたいだけど。

ちゃんぽんを注文したら麺の入ったごった煮のようなものが出てきた。
おや?と思ったが、食べたら美味しかった。
ちょっと知ってるチャンポンと違うけど、和食だ!出汁の味だ!

この店があればまだしばらくはここで生きていけそうだ。そう思えた。


鶏の家族 子供は動物も人間もかわいいな
絵になる家と子供たち 壁の色が素朴なのにおしゃれ


人を乗せる練習中の子象

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