プロローグ 04
しばらくして、金属が擦れ合う音がした後、広がる橙の空を背景にして、木製の銃床に黒い染みがべっとりついているライフルが、フレームに入ってきた。そして橙の空に向かって、引き金が絞られた。銃身が小刻みに揺れながら、乾いた破裂音を撒き散らした。あっという間に、全弾が撃ちつくされ、ライフルを支えていた右腕がだらっと力を失ってフレームから消えた。
ヒョウゴさんに駆け寄ってくる者はいない。不規則で浅い呼吸音をマイクが拾っている。銃声は鳴り止まない。断末魔的に、カメラが二、三度揺れた。カメラの角度が変わってから、数十秒なのか数十分なのか僕にはまったく分らなかったけど、やがて、不規則で浅い呼吸音は止んだ。
もうどれだけ耳を澄ましても、ヒョウゴさんの歌声は聞こえてはこなかった。しかし、カメラは息を呑むような美しく巨大な空を映し続け、その時間は、僕には永遠のように思えた。僕は映し出された空から視線を外さずに、そのフレーズを唱えた。
もし僕が世界を、思いどおりのフェアリーテールに変えられるのなら……
僕はどんな世界を望むのだろう。
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