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[ネタバレあり ライブレポ]2022年26本目 ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2022「プラネットフォークス」@カナモトホール 2022.10.15(土)


 こんにちは。シリアスファイターです。


 今回はアジカンことASIAN KUNG-FU GENERATIONのホールツアー、札幌公演のライブレポです。


 3月に出たアルバムについては、その時に愛をまとめさせていただきましたが、半年近く聞き込み続け、そろそろ生の音でアジカンを浴びたい気持ちが天井を突き破るくらいに待ち焦がれていたこの日が、とうとうやって参りました。


 約一年振りのアジカンであり、カナモトホールで見るのは個人的に初めてとなったこの日。


 会場の座席は1グループ毎に席が離れており、私の隣は空席。


 徐々にフルキャパのライブ会場も増えつつありますが、久しぶりにコロナ禍を感じさせる座席配置に、まだまだコロナで苦しい思いをする日々が終わったわけじゃないと改めて実感していると、ステージ上にはサポートメンバーのグルコネクトさんが登場。


 間もなくして、ほぼ定刻通り会場は暗転。


 打ち込みのトラックとともに、怪しいディスコのような薄暗い照明が明滅するステージ上に、メンバー4人とサポートのachicoさんが姿を現します。


 そのまま一曲目の「De Arriba」。


 前奏で全員の音が重なった瞬間、はっきりと姿が見えなかったメンバーがくっきりと現れ、会場から「待ってました!」と言わんばかりの拍手が起こります。


 今回のツアーのステージセットは、同曲のMVにあるように、メンバー全員がそれぞれのキューブに包まれている状態で、前述の座席間隔の話も相まって、ここ数年感じたような閉塞感や人との距離を否応にも意識してしまいます。


 ツアーも終盤戦であり、すっかり演奏やグルーヴも重厚感のあるものに仕上がっているのは、ツアー初見の私でもよく分かったため、そんな感覚を表現する説得力も抜群です…!


 でもそんな悲しさとか、寂しさとか、後ろめたさとか、マイナスな気持ちを抱えながらも確実に一歩ずつ進んでいくように、ゆっくりと勢いを増すバンドサウンドに、思わず心が熱くなります…!

 そこからとぐろを巻くような「センスレス」のセッションへと繋がるもんですから、それでも思いを繋がないわけにはいきません!


 最後の眩しいくらい後光が刺す照明演出でで、またここから始まっていく、転がり続けていくという決意表明は完璧でした。


 まだまだロックバンドのセッションとグルーヴをこれでもかとお見舞いしてやる!と言わんばかりに続く「Re:Re:」では、イントロから喜多さんは自分のキューブを飛び出し、客席を見ながらギターを弾きまくる我らのギターヒーローです!


 少しずつテンポが上がっていくような選曲に、私も自然と拳が上がります…!



 続けざまに伊地知さんのハイハットカウントから始まったのはま・さ・か・の!「電波塔」…!


 私の記憶では2013年の横浜スタジアム以来生で聞いていなかったので、序盤からまさかのサプライズ選曲に歓喜!


 このパワーポップ感たまんねええええ!と、両腕のアンテナ伸ばして放っちゃいました。


 演奏が深みを増して年々上手くなるアジカン、ホームタウンでがっつりパワーポップ期を経たこともあってか、この日の「電波塔」は、原曲にある無邪気さとともに、より説得力を持って強固なアンテナが伸びていました…!


 後藤さんによる、自分らしく自由に楽しんでという趣旨の挨拶を挟み、ここから再び新アルバムモードへ。



 「You To You」では、目下前4曲で好調ぶりが窺えた後藤さんのボーカルに加え、Cメロでの喜多さんのソロパート、achicoさんの瑞々しいコーラスと、清涼感抜群の声が重なり合い、心地良い風が吹き抜けます…!

 その風に乗ってさらに先へ進む「エンパシー」は、昨年11月に札幌で聞いた時よりもずっしりと響き、この1年での楽曲の進化を感じさせる名演に、序盤から早くも目頭が熱くなります。


 余韻を静かに引き継ぎながら、ここで再び少しテンポを落として「UCLA」へ。


 何かをすり減らすような日々に焦点を当てつつ、焦らずに耳だけすまして時を待ち続けたむ昔の、そして今の自分に想いを馳せます。

 サビ前半〜サビ後半にかけて、明るく照らし出される照明演出は、希望に似た何かを感じさせる素敵なものでした。


 そのままずっしりとした伊地知さんのドラムのビートから「ダイアローグ」へ。


 待ち続けるだけでなく、難しくても自分の声を届けていこうという選曲は、自分の弱い部分と正面から向き合う覚悟も求められますが、この速度と力強さと優しさを兼ね備えたような曲となら、何だか一歩踏み出せそうな気がしてしまうのです…!


 そんな気持ちそのままに、久々すぎて一瞬何の曲か分からなかった「スローダウン」は、この曲の流れにバチっとハマっていました。

 決してテンポは速くなくても、頼もしすぎるほど重厚な演奏で確かなロックサウンドを聞かせる、不思議と今のアジカンのモードを象徴するような一曲は、前半のハイライトでした。


 ここまで駆け抜けたところでようやくMCタイム。


 グルコネクトさんは本ツアー初のサポートということで、チームGの編成というこの日。


 話題は8月のライジングサンでの藤井風さんのライブのことになり、


・後藤さん
「ライジング、今年はできてよかったね。
 藤井風くん、出なかった人の曲全部やったんでしょ?すごいよね。
 …だって、このひねくれ眼鏡おじさんがピアノは無理でしょ?
 こっち(アジカン)はこだわり居酒屋のメニューみたいなセットリストでやっちゃって…
 改名しようかな、後藤風みたいな…、後藤波とかどう?
 芸名頂戴よ山ちゃん、漢字一文字で。」

・山田さん
「…山でしょ!」


・後藤さん
「山ね!(爆笑)
 でもダブル山になっちゃうでしょ、山が渋滞しちゃう。
 次は山ちゃんの、山は2人もいらないって曲です笑」


 シリアスだけど暖かい余韻を残した前半から、爆笑の改名騒動を経て中盤戦は山田さんが作曲に絡む「雨音」からスタート笑


 雨を思わせる、青を基調とした照明演出と、少し昭和を思わせるようなロマンチックなメロディに酔いしれます。


 続く「触れたい 確かめたい」。


 原曲で羊文学の塩塚さんが担当しているパートは、achicoさんによる文字通り胸がキュッとなるような切実なコーラスで切なくなりつつ、ライブで聞くとこんなにダイナミックで勢いがある曲だったんだと驚かされます…!


 人との距離をグッと確かめたところで、伊地知さんの跳ねるような力強いドラムさばきが炸裂した「ラストダンスは悲しみを乗せて」。


 前曲からの流れで聞くと、悲しみがより膨れ上がって、半ばヤケクソのような心情で夜明けまで燃えるように踊ってしまう自分がいました。


 物憂げな後藤さんのアルペジオから続く「Gimme Hope」では、さらに辛い現実を突き付けてきます。


 光と影がゆらゆら揺れ動くような照明を見ながら、それでも希望は絶対に捨てないという、確かな意思を丁寧に繋いでいくような演奏と歌唱に、耳と心を傾けます。


 と、ここから続くのは個人的にまさかの選曲で驚いたけど、前曲からの曲の繋がりがバッチリだった「ソラニン」


 前奏の後藤さんのギターが初まった瞬間、喜多さんは「待ってただろ!」と言わんばかりに両手を高々掲げます!


 思わず拍手してしまいました…!


 ここから一気に終盤戦。打ち込みのフレーズからどんどんと熱を帯びるグルーヴはお馴染みの「新世紀のラブソング」…!


 まだ不確かながら、また確かに希望のような、光のようなものが会場に渦巻き、確かな熱が身体中に充満していくような気がしてきます。

 イントロから拍手が巻き起こった「無限グライダー」


 もう20年近く前の曲というのは驚きですが、理想と現実の狭間で、それでも浮かんだ面影を糧に飛び出していく様は、限りある人生へのラブソングそのものだし、アジカンが歌い紡いできたことがブレない証を、ガッチリと刻みつける演奏でした。

 …ゆったりとしたアルペジオが響き渡ります。


 この「マーチングバンド」が、個人的なこの日のライブの1番のハイライトでした。


 特にCメロは、ここまでこのライブを見てきた私に沸々と湧いて出てきた心情を全て総括しているかのように聞こえました。

それでも僕らは息をしよう
マーチングバンド

 完全に解放されました…!


 後は、想いを、言葉を、魂を伝え続けるだけ…!


 力強いビートに乗って、また一歩踏み出すための力を受けとりました。


 本当に、ライブの度に好きになっていくな…この曲…!



「ほんとにありがとう。
 この2〜3年は、悔しい思いをして音楽をやっていたバンドが沢山いたと思うけど、少しずつ戻ってきている。
 ライブのチケットの値段が上がったりしてるけど、色々なチームの事情とかで下げられなかったりする。
 昔は1月4日の渋谷のライブハウスで、友達4人しかお客さんがいない時もあった。
 それが1人増え2人増えという光景は、飛び上がるほど嬉しかった。
 コロナ禍を経て、それを思い出した。
 あの時のことを思えば、どんなことがあってもやっていける。
 今日ここで集えてるのは少し、くさいこと言うけど、奇跡みたいなものだと思います。」


 改めて、今日ここにいること、音楽を鳴らせることへの感謝と想いをゆっくりと優しく語った後藤さん。


 その目には、確かに今日のライブへの手応えを、これからも音楽を続けていくことの決意を感じさせるような暖かさがありました。


 新しい曲をやります、と言って始まった「出町柳パラレルユニバース」。


 会場の空気が一気に解放された感覚が確かにありました!


 かつて、アルバム「ワールドワールドワールド」→「サーフブンガクカマクラ」に辿り着いた時のような、解放感と力強さが会場を縦横無尽に飛び回ります!


 楽しいいいいい!!!


 そのままラルラルラーの旅を続けようと言わんばかりの「荒野を歩け」で、喜多さんは自分のキューブをひょいと跨ぎ、後藤さんのキューブへ急襲をしかけます!


 そんな喜多さんのギターソロは今日も破壊力抜群!


 行く道はたとえ荒野でも、4人+この空間にいる全ての人を巻き込んで、たとえ出鱈目でも、とんでもないエネルギーに変えて前進していくようなロックンロールが鳴り響いていました…!


 そのまま全てが解放される「解放区」で本編はフィニッシュ。


 眩しすぎるくらいの灯りが心に灯ったところで曲終わりに、メンバー4人を包み込んでいたキューブが上に迫り上がり、文字通り解放を迎えます。


 もちろんまだ終わりませんよね…!?と言わんばかりに手を叩く私。


(以下、アンコールは写真撮影およびSNS投稿OKとのことでしたので、一部載せています。)


 アンコールでは、後藤さん自身が借金を生み出して制作に当てたインスト音源のCDの宣伝を挟みつつ、対照的に上手くいっている伊地知さんのカレーをいじる後藤さん笑


 今住んでいる家はカレー御殿だ、と言われつつ笑、それは喜多さんにも飛び火し、喜多さんの家はリライト御殿といじられます笑
(当の本人は、「リライト御殿、よろしくお願いします!」とノリノリ笑)


 そんな流れから、それでは、なぜライジングでやらなかった?というその曲を笑というMCから実に微笑ましく始まった「リライト」


 微笑ましさと対照的に、ソリッドで切れ味抜群の演奏と、美味しいところを全て持っていくサビの強靭なメロディで、瞬く間に会場は再沸騰!


 続く「Easter/復活祭」でもヘヴィなバンドサウンドを存分に堪能できました。


 この2曲だけは、この日唯一4人だけで演奏されたのですが、ギター、ベース、ドラム、ボーカルのみの、剥き出しのロックバンドとしての魅力が存分に味わえた時間でした…!


 衰えるどころか、時を経て成熟しまくったグルーヴで、この時間だけはさながらライブハウスのような熱気に包まれていましたね…!


 とここで再びサポートの2人を呼び込み、後藤さんのMCへ。


「キューブは何かに囚われてたりすることのメタファーだったんだけど、それをツアー初日から理解していない健さんは、俺のキューブにも入ってくる笑。
 でもそれで、自分のキューブから出るな!って言って、演奏メチャクチャになってもダメじゃん笑
 そういうやつがいてもいい、そういうズレてたりする部分を認めていけるようなバンドでありたい。」


 そんな趣旨のMCだったと思いますが、今のバンドの結束と仲睦まじさがよく分かる、素敵な一幕だったと思います!笑


 そこから一気にラスト2曲。


 「フラワーズ」→「Be Alright」では、後藤さんはハンドマイクで左右に動きながら、身振り手振りを交え情感たっぷりに歌います。

おそらく、「フラワーズ」の時です。


 優しく、確かな灯りを1つ1つ大切に灯していくような暖かい時間でした…!

 ライブが始まった瞬間から1人になって、悲しかったり、自分のダメな部分に直面するけど、自然と心が熱くなって、フッと軽くなって、大丈夫ってまた歩き出せる。


 私が小学生の時からから聞いているロックヒーロー達は、この日も健在でした…!


 現在はアルバム、サーフブンガクカマクラの完全版を制作中、来年はライブハウスでツアー予定とのことですので、この日のズッシリした雰囲気のライブと違う、垢抜けた無邪気なライブが見られるかも…!と思うと、早くもワクワクが止まりませんね…!

セットリスト
1.De Arriba
2.センスレス
3.Re:Re:
4.電波塔
5.You To You
6.エンパシー
7.ダイアローグ
8.UCLA
9.スローダウン
10.雨音
11.触れたい 確かめたい
12.ラストダンスは悲しみを乗せて
13.Gimme Hope
14.ソラニン
15.新世紀のラブソング
16.無限グライダー
17.マーチングバンド
18.出町柳パラレルユニバース
19.荒野を歩け
20.解放区

アンコール
1.リライト
2.Easter/復活祭
3.フラワーズ
4.   Be Alright

 今回は以上です。

 最後まで読んでいただいたそこのあなた、本当にありがとうございました。

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