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#76 響き合う理論物理学者と指揮者の心

1.NHK Eテレ  スイッチインタビュー 達人達(佐治晴夫X西本智実)

 ”あなたの「これから」が、あなたの「これまで」を決めるのです。
本の表紙の一文に興味を惹かれ、理論物理学者である佐治晴夫さんの「14歳のための時間論」を読みました。その後「宇宙が教える人生の方程式」「永遠という『今』を生きよう!」「科学者の目で<まど・みちお>を読む(”まど・みちおのこころ”所収)」と立て続けに佐治さんの本を読みました。

 ”宇宙の摂理は人間の生き方にも応用できる”とする佐治さんの語り口は、優しくて柔らかく、壮大で難しいはずのテーマを、とても興味深く、共感しながら読みました。

 昨年6-7月にNHKのEテレ「スイッチインタビュー 達人達」で、佐治さんと指揮者の西本智実さんの対談が放映されています。再放送等は終了していましたが、たまたま、YouTubeで公開しているものがあり、視聴しました。
 番組は前編/後編に分かれ、30分X2回、北海道美瑛町に住む佐治さんを西本さんが訪れる形で収録されたものです。

佐治さんは、大きく白色でπとプリントされた黒いTシャツ(らしきもの)を着ていますが、良く見ると、その下にはRamanujanと書かれています。調べてみると、円周率公式を発見した、シュリニヴァーサ・ラマルジャン であることがわかりました。円周率=π です。

佐治さんのTシャツ

円周率π 3.14159265359・・・・・・・・・・・・・
πはデタラメだからこそ出現した数字の宝庫(この世に存在する数字の列は、πのどこかに必ず潜んでいる。あなたがこの宇宙の一部であるように)

佐治晴夫「宇宙が教える人生の方程式」(P48-49 )
 
”円周率のπは3.14(少数点第2位まで)”や、3なんていう覚え方をしないでも、こんな風に、円周率のπを学んでおくと、もっと数学が楽しく、夢のあるものになるのではないかと思いました。

2.響き合う理論物理学者と指揮者の心
 

「(佐治先生は)”人間は創発できるものであること”を教えて下さる方と想像しています」(西本さん)
「僕は音楽はずぶの素人ですが、限りなく音楽を愛する人間ですから、プロの立場から音楽とか宇宙とか、そういう話ができたら、これは長生きして良かったということになるんじゃないかなと思います」(佐治さん)
 お二人の冒頭の発言には、お互いをリスペクトする気持ちが感じられ、終始、番組を通じて、好奇心や驚き、感動する心があふれていました。
【スイッチインタビュー「心に残ったあの言葉」より】
佐治晴夫「僕らの命の材料は、みんな星の中で作られた」
西本智実「常にもう一度自分をまっさらにしたいという気持ち」

2-1 佐治さんの気づき

「宇宙」との出会いについて、佐治さんは語ります。
戦争の真っ只中だった小学校2年生の時(1943年)、担任の先生が児童を集めて有楽町にあった「東日天文館」に連れて行ってくれたこと、そこで日本に2台しかないプラネタリウムの1台で星を見たこと ーシューマンの『トロイメライ』が静かに流れる中で、徐々に日が暮れ、満天の星空ー「その神秘的な光景に引きこまれていったことを今でもよく覚えています。」 

トロイメライの音階”ドファ”は天上に続く跳躍、ハシゴをイメージさせる。より高い世界や憧れの気持ちを喚起したのでは?(西本さん)

西本さんの言葉に、佐治さんは深く頷きながら「今まで気づかなかった」とおっしゃいました。

2-2 西本さんの気づき

番組の後編では、佐治さんが「是非お連れしたかった場所」として丘のまち郷土学館「美宙を案内し、天体望遠鏡で「真昼の星」を見るシーンが流れます。 天体望遠鏡で西本さんは、9光年離れたシリウスを見ます。

ダイヤモンドが弾けているような光。9年かけていま届いた光。シリウスの光を受けながら互いに見つめ合っているということでしょう。星は過去そのものであり、未来から過去を見ているということ。星を見ることのすごさです。昼間の星を見てもらえて僕はすごく嬉しいです。(佐治さん)

「9年かけて届いた光」・・時空を超えた存在に西本さんは気づいた

3.あなたの「これから」があなたの「これまで」を決める(佐治晴夫)

この言葉は、衝撃的でした。
一昨年の10月のnote#21に「過去は変えられる?」というテーマで書きました。過去の「事実」は変えられないが、「解釈」は変えられるとの趣旨で書いたものです。

しかし、佐治晴夫さんのこの言葉は、違います。
「これから」の行動、生き方が、「これまで」(過去)を変える・・・・「解釈」に留まらず、「行動」することの大切さ。
今回のスイッチインタビューを観て、改めて佐治さんの「人生の法則」に私も学び、やってみようと思います。

◆あなたの「これから」があなたの「これまで」を決める
 私たちは過ぎ去った過去を生きることはできません。いまだやってこない未来を生きることもできません。自由に使えるのは自分に与えられた「いま、この瞬間の時間」だけです。「いま、この瞬間」の中には過去も未来もすべてが含まれています。
 過去の集積が「いま」をつくっているとしたら、遠い未来を見据えて「いまから」をどうデザインするかによって、未来も過去も変えることができるはずです。人生とは自分自身の時間を生みだす営みであり、一人ひとりが人生のデザイナーなのです。
 いろいろな失敗を経験して来た成功者が、「あの失敗のおかげでいまの自分がいる」と語るのは、まさに「いま」をどう生きるかによって、惨めな過去をも180度転換し、よき未来に結びつけることができることを物語っています。
「あなたの『これから』があなたの『これまで』を決める」
 これは私が理論物理学の研究を通じて知ることができた人生の一つの法則です。

佐治晴夫「致知」2021年10月号



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