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夕凪【エッセイ】六〇〇字

 早大のオープンカレッジの「文章教室」が、4月10日に再開。その6回目のお題、「夕凪」(旅を絡めて)でした。正直、悩みました。もんどり打った。伏せた。夢にも出てきた。これぞ、エムの快感。で、浮かんだのが、以下、です。

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 一昨年、広島に出かけ、昨年は長崎に行こうと決めていた。しかし、このコロナ禍、やむなく延期。自粛の日々の中、宮本輝の『灯台からの響き』を手にする。主人公と一緒に灯台を巡りながら旅気分を、味わおう、と。
 主人公・牧野康平は、妻・蘭子が急逝したことを機に、2人で営んできた中華そば屋を閉める。その後、たまたま目にしたカレンダーの写真に動かされ、灯台巡りを、始めた。
 その間。30年前蘭子に届いた謎の葉書を見つけたことから、物語が進展する。康平は、謎解きの最終地、出雲へと、蘭子に誘われるように、灯台巡りの旅を、続けるのだった。
 康平を、ストリートビューで、追った。房総の犬吠埼灯台を皮切りに、伊勢・青森、出雲日御碕灯台と、計9基の灯台を、訪ねる。
 旅を終え、思った。すぐには無理だが、ワクチン効果で、「大波」が静まり「さざ波」になってくれれば、来年こそは、長崎へ行こう。日が沈む聖地・出雲を、経由して、と。
 毎年8月7日に、日御碕神社で夕日を背景に「神幸神事」が執り行われるらしい。長崎は、「前日」の8日に入ることにして、当日の夕刻までに出雲に、着こう。夏の、日本海の穏やかな波を真直ぐ照らす夕日と、白亜の灯台の灯りとの、コラボを鑑賞にするために。
 〆は、土地の挨拶「ばんじまして」と、蕎麦屋に入り、感動を肴に一杯と、洒落ようか。

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