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366万【徒然文】

 政治家は地味でいい、ただただ誠実であってほしいと思う。特に最近の政治家たちを見ていると思う。多くの人は、どうしてパフォーマンスに弱いのだろう。小泉劇場、安倍さんの「シャンパンタワー」「アベノミクス」などなどなり、小池さんの「都民ファースト」だったり。

 今回の都知事選。「積極的に小池さんに一票」というひとよりも、「他の候補者たちをみると見栄えがしない、なら現役に一票」という消極的支持のひとが多かったのではないだろうか(少なくても私の周辺の感触では)。ということなら、白紙投票という手もあったはず(私の知人で、今回は棄権したひとがいた)。
 小池さんが、前回の選挙で公約にかかげたことは実現できているだろうか。ご本人は多くは語らない。今回かかげたものも、実現できるかどうか疑問の公約ばかり。コロナ禍でも、対策らしきものが感じられない(難しい問題だけど、それができて優秀な政治家と言える)。横文字のキャッチフレーズは、コピーライター並みに上手だが。このやり方は、一国のリーダーと似ている。次々に掲げるが、総括はしない、反省しない、真摯に説明しない。
 選挙前に、私は候補者に点数をつけた。+10~―10点で。大幅なプラスの得点をつけたひとはいなかった。
 ―5:小池さん、+1点:宇都宮さん、0点:山本さん、あとは、点数はつけられなかった。小池さんの点数は、「現役ご苦労様ポイント」+3。パフォーマンスが派手なだけで、実現されていないからー3。タレントのヒロミが、「僕は“排除”発言は一生忘れませんので」と言ったらしいが、私も、あのときの冷たい目を忘れない(いまも)。なので、-5。宇都宮さんの+だが1点というのは、私が求めたい誠実さを感じるから。前回の選挙で、野党が鳥越俊太郎さんへの一本化を望んだ際に協力し、断念した。そこに彼の誠実さを感じる。山本さんの「0」は、訴える力はあるが、私の嫌いなパフォーマーである点でプラス・マイナス=ゼロ。
 今の政治家を見ていると、(嘘かどうか証明が難しいが)灰色の部分が多すぎるから。せめて嘘はつかないでほしい。失敗したら(誰にでもあるのだから)謝るくらいの誠実さがあれば、少なくても不信にはならない。
 朝日新聞(7月18日)の呉座勇一さんの書評では、
 「利用価値のない人間にとことん冷淡であるように映る彼女の人間性は、確かに恐ろしい。けれども真に恐ろしいのは、彼女の本質に気づかず、そのポピュリズムに幻惑されてきた日本社会ではないだろうか。」とまとめている。
 私も彼女の「目」に冷淡さを感じるし、少なくても私は、そのポピュリズムに踊らされるひとりにはなりたくない。

 以下、朝日新聞(7月18日)の呉座勇一さんの書評です。

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(書評)『女帝 小池百合子』 石井妙子〈著〉
 評・呉座勇一(国際日本文化研究センター助教・日本中世史)

 ■華麗な自分語りの「演出」に迫る
 先日の東京都知事選は大方の予想通り、現職の小池百合子知事の再選という結果に終わった。彼女は「政界渡り鳥」と揶揄(やゆ)され、幾度も屈辱と挫折を味わいながらも、権力の階段を一歩一歩上がっていった。しかし一方で、彼女が語る華麗なサクセスストーリーはいかにも作り話めいていて、しばしば疑惑が取り沙汰されてきた。
 本書は、女性初の総理候補と目される小池氏の素顔に迫ったノンフィクションである。マスコミやネット上では学歴詐称疑惑追及の箇所ばかりが注目を集めたが、本書は彼女の生い立ちまで遡(さかのぼ)って調べているところに大きな意義がある。関係資料の博捜と多数の関係者への徹底的な取材によって彼女の自分語りに潜む数々の嘘(うそ)を暴き、ひいては彼女のパーソナリティーを浮き彫りにしている。
 本書が描き出す小池氏は、異常に強い虚栄心と上昇志向を原動力に、コネとメディアを駆使してのし上がっていく人物だ。一見すると陽気で情熱的だが、決して他人に心を許さず、常に損得勘定で人間関係を築く。権力を持つ男性に寄り添う「名誉男性」でありながら、男社会と対決しているように装う。
 著者は彼女に批判的だが、彼女のなりふり構わぬ自己演出には凄(すご)みすら感じられる。かつて引き立ててくれた権力者を足蹴にするくだりなどは、ピカレスクロマン的な趣がある。
 他人の心情に無関心で、利用価値のない人間にとことん冷淡であるように映る彼女の人間性は、確かに恐ろしい。けれども真に恐ろしいのは、彼女の本質に気づかず、そのポピュリズムに幻惑されてきた日本社会ではないだろうか。
 職業倫理や専門性を持たないタレント学者や自称歴史家のもっともらしいヨタ話が社会的影響力を持つ様を、評者は何度も目にしてきた。私たちが対峙(たいじ)すべきなのは、表面的な面白さを追いかける風潮そのものなのである。

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