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矛盾【エッセイ】一〇〇〇字

 『地球に住めなくなる日』(NHK出版)を読み終えた夜、夢を見た。

 ある惑星の、2019年9月23日。国連で、スゲェーデンの16歳の活動家スグレタさんは、鬼気迫る表情でこう訴える。
 「生態系が全て破壊されています。大量絶滅の始まりにいます。人類も最終章に入っているのです。なのに、経済発展がいつまでも続くという話ばかり。”How dare you(よくも そんな ことを!)” 」と。
 なんと、その10日後。ハナフダ・メリケン国大統領は、パーリ条約からの離脱を正式に通告した。ハナフダ氏は、言う。「メリケン・ファーストだ。温暖化の影響なんて、フェイクだ。自動車や自家用ジェットも乗るなというのか。なによりも、好物の牛ステーキやハンバーガーを喰うなというのか。できん!」と。
 彼は、支持基盤の自動車や畜産、石炭等の産業を保護し、大統領を1期務めた(幸い、1期で終わったが、2年後も狙っているようだ)。温暖化対策は無視され続け、急激に悪化した。
 活動家が警告した通りのことが、続いた。超大型台風や、100年に一度の大雨。海面上昇による、水害・沿岸洪水・地滑りが頻発。異常気象によるインフラ機能停止。熱波による死亡や疾病、干ばつ、水・食料不足。そして、新型ウィルスによるパンデミック・・・。
 「ハナフダのせいだ!」と叫んだところで、目が覚めた。

 ふと思う。
 私の生き方は、ハナフダ氏と変わらん。彼の悪口を言えたもんじゃない。飛行機はそもそも苦手だから、決死の覚悟をしないかぎり乗らないし、普通のハンバーガーは食べない(モスのきんぴらライスバーガーが好きだったが、今はない)。しかし、ステーキや焼肉は好きだ。鮨も好きだ。鰻も好きだ。車を運転するのも好きだ。ハイブリット車だが、ついつい、アクセルを強く踏んでしまう・・・。
 最近、台風の風や雨が半端じゃない。これまでになく体感できることが多くなった。このままでは、「終末時計」は、どんどん速まってしまう。
 だからまずは、車をEVに替えようか(ん? なら免許証返納だろうって?)。週2くらいは、肉、魚抜きの食事に切り替えることから始めようか。冷奴にお新香で日本酒もおつなものだ(そうそう、休肝日も)。でないと、スグレタさんに言われてしまう。”How dare you!”と。
 冒頭の著書の最終部で、こう書いている。「有意義な変化を起こす力があるのは、いま温暖化から最も守られていて、活動しないことで恩恵を得ている者たちだ」と。そう、ワタクシたち。


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