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雨上がり【エッセイ】八〇〇字(レシピ付き)

朝カルの通信教育の前期最終(6月)課題。お題は、「雨上がり」。東京・永福町駅近くにあったカフェ「445」の想い出について書きました。あなたなら、何を?

きょうのエッセイは、この曲が似合う。「岸辺のアルバム」主題歌。1977年のTBS連続TVドラマ。原作・脚本は山田太一。
(76年「グッドバイ・ママ」でも使われた)

                ※
 ジャニス・イアンの「ラブ・イズ・ブラインド」が似合うカフェが、東京・永福町駅の近くにあった。カウンターを含み、20席。40代中半のマスターが、一人で営んでいた。名は、横川さん。小6のとき、近所の級友と同じなのですぐに覚えた。
 いつもカウンターの奥に座る。文庫を開く。彼の物静かさが漂い、控えめなBGMが流れ、昼下がりの、至福の時を感じる空間だった。
 会社を整理する前、自宅が永福町だった頃。ゴルフの前日は落着かず、極力、予定を入れず、早めに会社を出て、3時には戻っていた。
 戻るとすぐ、店に向かう。2時から深夜1時までの通しで、ワインやカクテルを日中から呑めることも、馴染みになった理由わけ。注文は毎回、マスター・オリジナルの「鶏モモ肉の皮パリパリ焼き」と、白ワイン。ホテルのレストランで修行しただけあって、料理は確か。余計な話はせず、ワイングラスを磨いているようなひと。ただ一言二言だが、時々、常連と交すブラックジョークが、ウィットが利いていて心地よかった。そんな店でも、満席近くになるときがある。軽いフットワークよろしく彼は、こなす。このときばかりは、『ゲット・バック』という感じになる。
 カウンター席では喫煙できるので、それが目的で常連になっているひとが多い。夕食の支度で追い出され、タバコを吸いながらワインを飲む80代の、「お父さん」。企画会社を営む40代の「社長」。ブティックを経営する40代(と思われる)の女性、「マドンナ」。遅めの昼食をとる20代の女性、「美人さん」。その日は、雨宿りか、その常連さん全員が、そろっていた。
 「明日も、日中は雨予報ですよ」と、マスターが、ニヤリと嫌味を言う。「晴れ男なので大丈夫。せいぜい通り雨でしょうよ。ほら、神通力が効いてきた」と、お返しをしていると、春時雨が小降りに。その話を合図に、常連が、一人、またひとりと、仕事に戻って行った。私も折り畳み傘をしまい、店を出ると、もわっとしたかび臭い匂いを、感じていた。
 その時、大腸がんで2月まで閉じ、再開まもない日だった。これから巻き返すさ、と言っていたのだが・・・。その後、私は転居したので人づてだが、2年前、店が閉まっていると聞く。コロナ禍に耐えられずに、閉店を決断したようだ———。

(おまけ)
マスター直伝の料理、【鶏肉の皮パリパリ焼き】。この店でしか食べられない味。四谷近辺にもないので、自分でつくるしかない。
<レシピ>
鶏モモ肉:300g
白コショー:適宜
塩:適宜
ローズマリー
(タレ)
オリーブ油
白ワイン
レモン
醤油
ガロニ:イモ
〇キッチンタオルで包み、肉の水分をとっておく(焼くとき油がはねて大変 (-_-;))。
〇ガスオーブンの予熱250度でセット
〇肉の両面に塩コショウ
1) 一口大に切る(焼いてからでも良いが、焼く前の方が、皮がはがれにくい)
2) 皮面を下にし、フライパンで1分間、焼く(中火)※押し付けない
3) 皮面を上にして並べ、ローズマリーを乗せる(イモは、事前にフライパンで軽く炒め塩を振っておく)

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4) 250度で12分間、焼く。
5) 完成!!

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※フライパンでも可能のようだが、試したことはない。

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