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イソップじゃなくイップスの話【エッセイ】

※アプローチ・イップス:グリーン近くからボールを打つ時に金縛りのように固くなって、きちんとボールを打てなくなる、ある種の精神的な病気

 自粛期間中、趣味のゴルフを3か月中断していたのだけど、解除後3回目のラウンドの前日夜、「不要不急の都外への訪問、自粛要請」がでたらしい。だけど、次の日のために早々に就寝中。それに3日前からテレビが故障中でニュースも見ずに、山梨県上野原のマイコースに勇んで出かけたのだった。
 午前中、いつもプレーしているゴルフ仲間のNさん、Hさんと、ワイワイとラウンド。スコアは良くはなかったけども、やはり楽しい。
 午後になっても、順調に(でもないけど、楽しく)回っていたのだけど、あるホールで、強くダフって(ボールの手前の地面を叩くこと)しまった。かなりの衝撃があり、まともにクラブを振れなくなり、口数もパッタリと少なくなっていった。Nさんも、Hさんも気遣ってくれるも、どうしようもない。「病院に行った方がいいですよ」と言ってくれるも、だけど怖い。定期健診を受けていたK大学病院も、電話診断で処方箋を送ってもらい、院内に行かずにすましている。
 帰路の車の中、肘の内側左部分が腫れてきているのに気づく。痛みが増してくる。自宅に着くなり、近くの整形外科を検索すると、徒歩3分のところにあった。だけど、怖い。しかし、痛い。腫れがさらに大きくなっているようにも感じる。「これはダメかも・・・」と、意を決して行くことに。
 病院に着くと、待合室には誰もいない。少しほっとする。ほどなく診察室から呼ばれる。先生は、40代くらいの愛想が良さそうな男性医師。
「今日、プレー中に強くダフってしまって、痛めたようなのです。腫れています。下手っぴですが、こんなことは初めてです」
腕を曲げたり、腫れている部位を触ったりして、
「筋肉の部分断絶で血管が切れていて腫れているようですね。ある種、肉離れのような感じです。湿布を貼り自然治癒を待つという感じでしょう」と、おっしゃる。全治3、4週らしい。
 ゴルフが好きなようで、
 「アプローチぐらいは練習できますよ」
 「私、アプローチ・イップスなんです」
 「ああ、なおさら都合が良いじゃないですか。力が入らないから治るかも」と笑った。

 「不要不急の都外への訪問、自粛要請」のバツだったのか・・・

(後編集)2023年1月19日撮影


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