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「巣ごもり」の成果【エッセイ】

 「無職」歴、五年。「サンデー毎日」と、羨ましがられてはいるが、手帳にはスケジュールが、それなりに埋まっていた。なので、「今日、何曜日だっけ」なんて、「曜日感覚」マヒにおちいるということは、なかった。
 ところが、昨今の出来事。朝起きて、カレンダーをじっとみつめ、「そっか、今日は〇曜日か」と、つぶやく、そんな日々であった。
 が、日記帳がわりに手帳を使い、日々書き込むイベントを思いついた。天然酵母を使ったピザ作りである。マンハッタンに住む友が、酵母でパンを作るという話を聞いて。NYでもパンやピザを自宅で作る人が増え、イーストが品薄らしく。なら、酵母を飼ってしまえと、育てているようだ。林檎を食べた後に残る芯と皮を、水と混ぜて数日置くと、元気に増殖するという。ウィルス菌の災禍のときに、菌を飼育するという「前衛」的なお遊び。なかなか面白いと、まずは、酵母飼育を始める。
 酵母菌を繁殖させるのに一週間かかったが、毎日の成長の様を記録していった。が、元種作りに難航。最初はなかなか変化が見られない。レシピでは二倍に膨らむと書いてあるのだが、いっこうに膨らまない。作業時間三日のところを五日かけてようやく、それらしき雰囲気になってきた。ここまでくれば、こっちのもの。何回か修行した生地作りからは、スムーズに進み、晴れて、ライム付きコロナビールを飲みながら、ほおばることができた。
(名付けて、 The fruits of “STAY HOME”とした)
 こんなスローな行いが楽しめるのは、こんなにもゆったりとしたときの流れを受け入れて、過ごせているおかげかなと、思えてきた。
 「巣ごもり」が日常となり、気づく。「サンデー毎日」じゃなく、「サタデー毎日」じゃないかと。現役のとき、日曜の夕方になると、少しブルーだったが、土曜は、次の日も休みという、余裕をもたせてくれた。だから、「毎日が土曜日」が今にふさわしい、かなと。


 奥に控えしはあー、天然酵母バージョン(トマトとオリーブの実が乗っているほうです)、手前がイーストバージョンです。食べられました! ちなみに、バックダンサーもオリーブです。

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