見出し画像

霜柱【エッセイ】二〇〇〇字

 朝日カルチャー「エッセイ講座」後期の最終課題が、「霜柱」(800字)。その草稿として書いたのが、これ。はたして800字に詰められるか・・・、それが問題だ。(汗)

                 ※
 「キミらの投票用紙、オレにくれよ」と言ってやった。
 2014年の都知事選の最中。会社の社員、30代の4人と酒を飲みながら、選挙について話をしているときだった。私がだれに投票するか、そしてその理由を語っていた。みんな黙って聞いているだけで、反応が鈍い。なにか新興宗教の勧誘を受けているかのような雰囲気。こちらも、話すのがばからしくなってきて、聞いてみた。「関心ないの? 投票には行くよね?」。すると、彼らは、「関心ないです。投票はたぶん行きません」と。(トホホ・・・キミたちもかよ・・・)呆れてしまった私は、「じゃあ、キミらの投票用紙、オレにくれないかなあ。オレが支持するひとに5票入れる」と、言ってやった。その「三猿」のような者たちが、私の仕事を長く手伝ってくれていた。おとなしいけども仕事はできるヤツらで、取引先の評価も高く、会社としては、何も文句はないのだけど(ホンマよ・・・)。その年は、12月には衆院選も行われた。都知事選の投票率は、43.40%(舛添要一氏が都知事に)。衆院選の投票率は52.66%と、ともに最低を記録した年。
 最近の国政選挙の投票率は、50%強。20、30代になると20ポイント近く、低い。環境活動家トゥンベリさんを生んだスウェーデンでは、世代に関係なく80%台という。日本では極めて低いので、「投票しようよ」と呼び掛け・広報しなければならないのが、現実。しかも、「せめて」というカッコ書きが入る。投票が、「目的」になってしまっている。
 政治の先進国、欧州、北欧、とりわけスウェーデンでは、政治家を絶えずチェックする意識が高い。いま日本では、1か月間に3人の大臣が交代するという事態にも関わらず、政権与党の支持率は低下しない。

 『閣僚の辞任ドミノ』交代は5人までらしいよ ― にわかサッカーファン
<朝日新聞朝刊(11月26日)の「かたえくぼ」>

 不正に厳しいスウェーデンなら、完全にアウト。政権が交代してもおかしくない。どこが違うのか。スウェーデンでは、「政治」を教育に組み入れ、議論もする。確かに、学校教育で「政治」を教えているかどうかということが大きな違いかもしれない。しかし、平成2年(1990年)までは20代でも60%以上だった。我々が学校教育で「政治」「選挙」について教わった経験は、ない。投票率が50%を切って落ち続けるのは、平成5年(1993年)から。バブルがはじけた時期と符合する。

(投票率推移)
https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/sonota/nendaibetu/

 よく失われた30年、と言われる。経済が低迷のまま。給料も上がらない。お金がなくても充実した生活も可能だろう。精神的にも満たされていれば良いのだが、そうとも思えない。国民の充実度合を示す、「幸福度」。2022年の日本の順位は54位である。先進国と比較すると、その順位はかなり低い。
その評価項目は、
・1人当たり国内総生産(GDP)
・社会的支援の充実(社会保障制度など)
・健康寿命
・人生の選択における自由度
・他者への寛容さ(寄付活動など)
・国への信頼度
と言われる。
 ここで日本が誇れるのは、(医療保険制度の充実が反映されているのか)「健康寿命」くらいではないだろうか。国内総生産(GDP)は世界第3位だが、1人当たりにすると、世界第30位(2020年)である。先進国では低い。残りの項目でも、上位の項目はない。確固とした数値はないが、私は、「国への信頼度」がかなり劣るのではないかと感じている(マイナンバーカードへの信頼感、然り)。最近の政権与党を直視すれば、高くなる筈がない。「諦め」に近い状態にあるのではないか、と思う。
 その最大の原因は、現政権の「一強」体制だと思っている。そのときの政権が誠実さに欠けることをすれば、いつでも変えられる緊張感のある体制にすることが必要(米国や他の国のように)。それを実現できるのは、国民しかいない。そう、与党の議席を減らし、野党の議席を増やし(国民が育てるんだよ)、接近させないと、やりたい放題ではないか。


(台北孔廟から)

 かの有名な日光東照宮の「三猿」。諸説あるようだけど、一般的には、「礼節に欠けるようなことを」、視るな、聴くな、言うなという『論語』の一節からきていると言われている。また、政治に無関心な姿勢を指摘する場合にも引用される。政治的な問題について、「見ようとしない」「聞こうとしない」「話そうとしない」、思考停止状態のことに。埼玉県にある秩父神社にも「三猿」があって、その像は、目や耳や口を手で塞いでいない。「お元気三猿」といわれているようで、「何でも見よう」「聞こう」「言おう」と、積極的な姿勢を奨励する意味があるらしい。余談だが他の説として、こんなものもある。「礼節に欠けるようなことを」ではなく、「卑猥なことを」見るな、聞くな、話すなと諭す意味もあるらしい。「四猿」目もあって、股間を手で隠しているらしい(何だろうね?)。
 というようなことを説明しながら、彼らに言った。
 「キミたちさあ・・・思考停止の『三猿』になっていない? 『お元気三猿』でいこうや。一人ひとり、一票一票は力が弱くても、数が多くなれば想像を絶する力を発揮するよ。「霜柱」のようにね。田舎の北海道では、線路を持ち上げたり、コンクリ―トを破壊したりすることもあるんだよ」と。


(秩父神社サイト)

【つぶやき1】
 公約で約束した成果を達成できないだけじゃなく、不正なことをやっていて、なぜ選挙に勝つ? 野党がだらしない??? せいぜいドングリの背比べでしょ。誠実さでは野党の方が勝っているのじゃないの。「日本は失敗を許さない文化」があるんだよね。今回のPK戦敗北も、それがプレッシャーになっている、と思っている。

【つぶやき2】
(昨今の国際情勢に影響され、防衛費増額賛成派が過半数を超えている。しかし)
 「防衛費を増やすのは賛成だ。でも、増税は、困る」と、テレビのインタビューに答えるひとがいた。言いたい。その程度の危機感なの? と。だったら、やめましょうよぉ~


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?