文法メロメロなのに英語ペラペラのブラジル人に学んだこと
オーストラリア修行編(第10回)
3ヶ月頑張った自分へのご褒美でオーストラリアに行き、現地で語学学校に一週間の体験入学、そこで英語がペラペラのブラジル人アウグストに出会って衝撃を受け、その後彼の文法テストの結果の悪さにまた衝撃を受けた
文法があやふやなのにあんなにペラペラ話せるのか、一方で日本人は、文法テストの出来はいいのに話せない、これはなんでなのか、という話から
日本人が英語を習得する大変さの話につなげたのでした。
まぁこの話をしたくて、オーストラリアに行った話を始めたんですが、もう少しあの旅での気づきの話があるのでその続きを。
間違いを気にしない
もちろん母語であるポルトガル語と英語との「距離の近さ」もあっての、あの英語のペラペラ具合でしたが、
それよりも圧倒されたのは、間違いをまったく気にしないブラジル人たちのメンタリティーでした。でもこれはブラジル人に限った話ではありません。
以前カナダのバンクーバーに行った時に、通りで見かけた中国人のおばちゃんは、店先で何かを注文しようとする際に
自分の英語が伝わりづらいことに業を煮やし、
物凄い形相で自分を指さしながら I hungry! と店の人に大声で怒鳴っていました。
「腹減ってんのがわかんないのか」てなもんですよね。
見ていて思わず「すげえ!」と心の中で叫びましたよ。
文法が間違っていようと、発音がおかしかろうと堂々と言う。周りで人がどれほど見ていようがお構いなし。
自分を振り返ってみると、ああはいきませんでしたから。特に勉強を再開する前の、英語にコンプレックスがある頃は。
伝わらない英語
時々行く海外旅行でも、なるべく英語を使わないようにするんですが、それでもまぁどうしても使わなくちゃいけないっていうときがある、
そんなときはだいたい照れ笑いを浮かべて、
まぁこの照れ笑いにも、
「僕の英語下手だけど、そこんとこ汲んでやさしくしてね」という意味が込められているんですが、
もちろんそんな気持ちは伝わりません、単に不気味なだけで。
そしてなるべく自分の下手な英語を他人に聞かれたくないものですから、人に聞かれる被害を最小限にするために、相手にだけ聞こえるぐらいの声で
そうなると発音がよくない(バリバリのカタカナ発音)上に小声になるわけで、もっと聞き取りにくくなるんですよね。
で、言ったことが伝わらずに聞き返されたらちょっと傷つき、
二回も聞き返されようもんならもうパニックです。
英語が通じないということが恐怖で
「やっぱり発音が悪いのかな」とか「文法がおかしかったのかな」と自分の英語のしょぼさにへこんだりさえして
特に食べ物を頼むときにそれをやられると、そこで心が折れてしまい、本当はちょっと変わったものを頼もうとしていたのに、
それを諦めて発音のわかりやすいものに変えたり
挙げ句の果てに、頼んだはずのものとは違うものが持ってこられても、黙ってそれを受け入れる…
それで敗北感いっぱいで帰国し、「ああやっぱり日本が一番」とそっとつぶやく。じゃあ行くなって話ですけどね。
英語に弱気な日本人
これも、「ちゃんとした英語を話さないといけない」という強い思い込みがあり、それが自分にはできない、ということで最初から引け目を感じていたわけです。
そのことが恥ずかしいとも。
ここでの「ちゃんとした」とはネイティブスピーカーのような発音で、文法的に誤りのない英語を指します。
それができないことで、自分の英語の出来なさを責める方向に行ってしまう
I hungry! のおばちゃんとはえらい違いだとは思いませんか?
でもそれは僕だけではない、多くの日本人に理解される心情であるはず。
日本では最強とされる「大阪のおばちゃん」ですら、海外でしかも英語を使う、というシーンになると、子犬のように無力化されてしまう
この違いはどこから来るのでしょうか。もともとの国民性なのか、はたまた「間違ってはいけない」という教育の結果もたらされたものなのか。
「ちゃんとした英語を」にとらわれた私
このオーストラリアの旅では20代の頃に行った海外とは違って、シンクロ読み修行のおかげで発音にはちょっと自信がありましたし、
散々声を出す練習を積んできたので、以前のように小さい声でということもない(「大きな声で」というのは英語を相手にちゃんと伝えるための大切な要素です)
だからはたから見たら、小声でびくびくしながら英語を話していた以前の自分とは大違いだったと思うんですよ。
でも根本の部分は実はまったく変わっていなくて
ここまでやってきたことと言えば、「すでに知っている文法的に正しい英語」を、
頭の中で何度も練習をしてから口にすることで「なるべくいい発音で言う」ということだけでした。
これはやっぱり、「ちゃんとした英語を話さなきゃいけない」という気持ちが相変わらず強くあったためです。
下手な英語や間違った英語は口に出したくない。
いや、むしろTOEICで900をとったことで余計なプライドが生まれて、その気持ちがさらに強化されたぐらいで
だからポツポツとしか言葉を発することができない
「流暢さ」は言葉を出すことで養われていきますから、そのためにはどんどん英語を口にしなくちゃいけない
で、そこで当然間違いは生まれます。最初から完璧な英語が出てくるはずはないのですから。
なのに「ちゃんとした英語を」という思い込みに阻まれて、「自信があるときだけ言葉を発する」ことをしていれば、
当然発話の機会は限られ、ずっとたどたどしいままです。
こういうメンタリティーは多かれ少なかれ日本人なら誰もが共通して持っており、これが私達が流暢になるのを阻んでいる、と思うのですがどうでしょうか。
いろんな英語があっていい
アウグストに出会ったことで、それも一度見ただけでは、ただ「英語がペラペラな奴」と驚いて終わりだったでしょうが、
その後も行動を共にして、彼とその友達の英語でのコミュニケーションの取り方を近くで見ることで、
完璧じゃなくてもいいんだ、色んな英語があっていいんだと
「ちゃんとした英語を」という、それまでの強すぎる思い込みが少しずつ和らいでいきました。
自分のようにそういう思い込みが強すぎる人間は、むしろ「数撃ちゃ当たる」というあの精神をこそ見習わなくては。
こうして、学生時代からずっと凝り固まっていた価値観を、根底から覆すような体験を、
英語学習を再開したてのこの段階で持つことができたのは、本当に大きかったと思います。
まぁこんなに大切なことを学んだのに、帰国してまた一人で勉強をするうちに、また「ちゃんとした英語を」モードになっちゃうんですけどね。
それはまた別のお話。
「いい加減さ」のネガティブ面
ただ、「細かいことを気にしない」という彼らの大らかさは、裏を返すと「だらしなさ」というネガティブな面にもつながります。
例えば学校で文法のプリントなどが宿題として出されても、とにかくやってこない。特にパーティーがあった翌日はブラジル人は全滅。
そしてそのプリントが返されても大して見直しもしない。
片や日本人は噂にたがわずみな勤勉で、飲みがある日は、その飲みの前に済ますなどして、宿題はちゃんとやってくるのが当たり前。
採点されて返されたものをしっかり見直し、二度と同じ間違いをしないように、間違えたものをその場で覚えようとする
のような「勉強のお作法」もちゃんと身についてる。
日本人の中にはヤンキー上がりで、ほとんど学校では真面目にやってないという子もいましたが、それでもブラジル人よりは「一応はやってくる」だけマシ。
もうだらしなさの基準がケタ違いなのです。
こういう違いも、
英語はペラペラで文法スカスカのブラジル人
話せないけど文法はできる日本人
を作るのに一役買っているのでしょう。
まぁそんな勤勉なはずの日本人の中にも、だんだんブラジル人の大らかさに毒されて、宿題をやらなくなっていく奴が出てくるんですが。
海外では自分が日本代表
自分が見た少ない例だけで一般化はできないとは思いますが、少なくとも彼らには、「与えられた課題に対して真面目に取り組む」という意識が薄いように見えました。
「目の前の楽しいことに全力で楽しむ」が何にも優先される
だから一緒に遊んでいると、日本人からすると、おいおい、大丈夫かと思うことがしばしばありました。
後にリオでオリンピックがあったときに、そのオリンピックのスタジアムの建設の遅れぐあいを日本のマスコミが何度もリポートしていましたが、
あれなんて僕が体験したことと全く構図は同じ。
彼らは「予定から遅れようと、間に合えばいいだろう」っていうメンタリティー
期日より遅れていようが、時間が来たら帰っちゃう。残業してなんとかしよう、なんて考えもしない
でも日本人は「何事もちゃんとしなきゃいけない」っていう価値観でものを見るのでそれが受け入れられない。
だから何度も同じ工事現場を訪れて、「これで本当に間に合いますか?」とそこで働く人にインタビューして、向こうの人にウンザリされていましたが
あれを見ながら昔の語学学校で宿題を一切やってこなかったブラジル人軍団のことを思い出し、懐かしい気持ちになりました。
ただし今回お伝えしたブラジル人像は、あくまでも僕が知り合ったブラジル人の友達はそうだった、というだけ
でもこれは逆もまた真なりで、海外で外国人と出会ったら、あなたが日本人の代表として見られる、ということ。
その行動を元に、「日本人ってこうだよね」と言われる可能性がある、ということですから、気をつけないといけませんよね。
つづきます。
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