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第六章 自分の言葉は、まず自分に届いているか

前章では「事業部のあり方」に対して、事業部をこうしたいというあなたの「信念」を発していく必要性について触れました。しかし、発信することが目的ではなく、部下にその真意が伝わって、言動が変わっていくことがゴールです。そのゴールに到達するには何があれば良いのでしょうか。

私が専門学校現場で担任をしていた頃に、担任としてクラスにどうあって欲しいかを語るには、まず生徒たちにとって私は「どんな担任であるべきか」が問われることに気づきました。自分自身の担任像が確立される前に経験した、失敗と改善の事例をご紹介します。

一、指導の仕方

担任としての覚悟がなかった一年目の時に、「校舎内では帽子を脱ぐ」というルールを守らずに登校してくる男子生徒に対して、「帽子を取ろうか」という声掛けをしていました。

渋々外す生徒に対して、自分自身は「何でLet’s系の表現を使って指導しているのだ」と歯がゆい思いをしていました。一方、先輩方は「帽子を取りなさい」と毅然とした態度です。

先輩方と自分で何が違うのか自己分析した際に、先輩方が指導する際の心根は「将来彼らが困らないようにするため」であったのに対し、私は「自分が嫌われたくないがため」という真因に気づき、とても恥ずかしい気持ちになりました。

それからは、「言いづらいことも、生徒のために毅然と指導できる教員」という信念が生まれ、言動を変えられたのです。

二、自己開示の仕方

人材育成において、一般的に失敗談を共有することは大切だと説かれます。私も異論はありませんが、若手時代には「ただ生徒を笑わせたいだけの自虐」と、「生徒にとって学びになる自己の失敗談」の区別がついておりませんでした。

特に生徒を笑わせたいという試みは、一見生徒を楽しませるためと自分で思いがちですが、実は笑わせることができた自分が気持ちよくなるためのエゴからつながった行動だと気づいたときに、そんな担任は嫌だと自覚することで、変えていくことができました。

これまでに挙げた二つの例から、事業部にこうあって欲しいという信念を浸透するには、あなた自身が「上司としてどうありたいか」を確立しておく必要があります。

いざ、「上司としてどうありたいか」と問われたときに、あまり考えこまずに頭に浮かんだこと、それはきっと部下にも姿勢として伝わっている事柄です。

もし、ぱっと浮かんだ事柄が、今の事業部が抱える課題とミスマッチなのであれば、ここで改めて言語化しておく必要があります。例えば次のような例です。

□部下との約束は必ず守る

報連相は、部下から上司に行うだけでなく、特に上司から部下に徹底することで、信頼関係を築いていくことができます。「来週返答するね」と回答した内容は、来週を迎える前に必ず返答するだけでも印象が異なります。

□自分の基準を押し付けない
 
自己成長に必要な観点として、「比較するのは他人ではなく、昨日の自分」と言われることがありますが、こちらは部下を育成する観点としても重要です。自分の基準に達しているか達していないかではなく、部下が昨日の自分を超えようとしているか、こういった観点で部下を観る視点として徹底していきます。

□目標があるか

若手の頃の挑戦だけで部下に語る上司だと、結局はどんな失敗も乗り越えているので、失敗した事実は語れても、その時に抱えた不安や、焦燥、恐れなどの感情についてはリアルなものとして共感を与えられません。上司が今でも難しいことに挑戦しているか、これは部下にとって「憧れ」の有無を左右する大事な指標です。

これらの例をご覧いただいて、いかがでしょうか。ぱっと思い浮かんだ信念はありましたか。こちらは常に自問自答なさることをお勧めします。

さて、この章のまとめです。「上司としてありたい姿」を信念として言語化し、体現していくことで部下からの信頼を獲得し、事業部にこうあって欲しいと発信することは、事業部の風土を変え、一人の上司の影響力でもって、事業部の雰囲気が好転する結果を部下に示すことにつながります。

そうすると役職者に憧れを抱く部下が必ず現れ始めます。部下を変えるには、まずは自分が変わる、ここからスタートしていきましょう。

次の章では、「上司としてありたい姿」の中で、「部下に多大な影響力を及ぼせる姿勢」について触れていきます。

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リーダ―育成・事業部再生コンサルタント

本間 正道
twitterID:@masamichihon

Email:playbook.consultant@gmail.com

著書『リーダーになりたがる部下が増える13の方法』

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