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勝たせられるリーダーになれ

これからのマネジャーに求められる力は何か

「マネジャーを育成する研修」の受講者に選ばれた年度に、僕は役員と面談する機会があり、「これからのマネジャーに求められる力」は何か聞いてみたところ、役員は次の3点を挙げました。

1、働きやすい環境を作り、エンゲージメントを高め、良いチームを作る力
2、部門の営業利益を増加し、部門目標を達成できるリーダーシップを発揮する力
3、この1、2の両方を兼ね備えた力

1と2に挙げた力のどちらか片方を持っているマネジャーが全部門の80%以上を占めており、3の両方を兼ね備えた人材が乏しいとのことでした。1だけだと退職率は低下し、部門は安定するけど利益をあげられていません。

2だけだと、部門目標は達成し、利益を上げられているけど人材が定着しません。そのように説明を受けました。

当時の僕は、「なるほど。両方大切ですよね」と理解したつもりでしたが、実際マネジャーになってみて、全くわかっていなかったことを痛感しました。

チームを導く上で信念はあるか

僕がマネジャーになる前に、専門学校現場の担任として生徒たちのクラスマネジメントをしていたとき、あるいは主任としてプレイングマネジャーとして職場のメンバーに影響力を発揮していた頃に磨かれていた力は、今思い返せば1の「働きやすい環境を作る力」に偏っていました。

「チームの方針を示すビジョン」「どんな些細な約束も徹底して遵守する風土形成」「納得感を生む判断力・伝え方」「職場のストレスを取り除く捉え方の風土形成」「他者の計画力すらコントロールできる計画力の醸成」は2の達成にも影響がないとも言い切れませんが、どちらかというと、1に作用する力が大半です。

客観的に見て当時の僕には、2に作用するような信念を持ち合わせていなかったと、今でこそ振り返ることができますが、当時の僕はプレイヤーとしては営業利益の増加に貢献したという自信があり、また人材育成だけでなく、広報にも担当者として長年携わってきたという自負があったため、2の力が不足しているとは自覚できていませんでした。

過程を重視するのか、結果を重視するのか

マネジャーになって3年目に、たまたま外的要因が重なって部門目標を達成することができましたが、翌年度は目標に届きませんでした。その頃には役員からは「あと一歩の男」という不名誉なあだ名でいじられていました。

結果を出せなくなると、僕は「そんなに結果が大事か。この事業部がどんな状態でスタートしてここまで再生してきたと思っているんだ。しっかり過程も見てほしい」と心の中で吠えるようになります。

また、入学者を増やすことで学納金の納付金額が増えた結果の「粗利」の増加ではなく、「退学者の低減」に伴う損失の減少による営業利益の増加という見方もできるのではないかと、入学者数に偏った評価基準そのものにも疑問を抱くようになりました。ここまでくると、もはや負け犬の言い訳に過ぎません。

そんな悶々とした思いを僕が抱く中、転機となる言葉に出会います。毎年年始には全国のマネジャーが集まって、創業者である代表の話を聞く機会があったのですが、その場で代表は
「私は結果を見ない」
そう言いました。

不甲斐なさから伏し目がちだった当時の僕は「我が意を得たり」と勇気づけられ、顔を上げたことを覚えています。ただし、その言葉には続きがありました。

私は結果を見ない。なぜなら、過程の中には『外してはいけないツボ』があり、そのツボさえおさえておけば自ずと結果が出るから。だから私は結果を見ない」

その言葉を聞いたとき、「外してはいけないツボ」を僕はおさえているのか、と自問しました。評価基準に異を唱える前に「まだまだやっていないことがある」と心あたりのある取り組みや、やりきっていない対策に目を向けることができました。 

代表の言葉で初めて、本気で「外してはいけないツボ」をおさえていってみようと決心しました。

勝たせているリーダーのマネジメントを学ぶ

代表の言葉で決心した僕は、法人内で一番結果を出している同期のマネジメントのあり方とやり方を学ぶことにしました。先輩よりも同期のほうが結果を出していたのです。切磋琢磨していた仲であり、同時期にマネジャーに昇格した人間に教えを乞うのは、前述の通りマネジメントに自信を持っていた僕にとって簡単なことではありません。

しかし「本気で結果を出したい」と思って初めて、素直に聞くことができました。そこで学んだことは次の五点です。

一、戦略を練るチームは小さい単位で構成する
二、競合調査とポジショニングはマネジャー自身が実施する
三、二の結果を踏まえて、商品の魅力を反映したセールストークは3点に絞り、部署内で統一する
四、事業部内のメンバー全員が商品に自信を持てるように、魅力の洗い出しを定期的におこなう
五、顧客への後追いは、全員でおこなえるように仕組み化する

順番に補足します。

一、戦略を練るチームは小さい単位で構成する

20人ほどのチームに働き掛ける上では発信者が多いほうが主担当者の負担を減らせると考え、戦略を練るチームを僕は4人~6人で構成していました。しかし、このチームだと打ち合わせの日程調整すら労力が発生します。

しかもそれまでは、主体性を重視するという言い訳のもとマネジャーである僕は同席していませんでした。その反省を生かして戦略を練るチームは3人にしました。内訳は僕と主担当者と事業部外コンサルです。

この編成にしたことで、打ち合わせは形骸化せずに定例で開催でき、なおかつマネジャーと主担当が同じ方向を向いているので、メンバーに協力を仰ぎやすくなりました。


二、競合調査とポジショニングはマネジャー自身が実施する

競合調査はそれまで各社の調査担当を決めて発表をし合うことで、各自が調べてきた知見を共有し合うというスタイルを取っていました。

しかし、マネジャー自身が主な競合各社全てを調査し、資料にまとめる作業を通じて自社の強みをよりはっきりと認識していくことができます。

マネジャーは相手の立場を加味した判断をするなど、常日頃想像力を磨いているため、顧客が何を望み、どんな強みを打ち出されたら自社の商品に魅力を感じるのか競合を知ることで具体的に絞っていくことが可能になりました。

三、二の結果を踏まえて、商品の魅力を反映したセールストークは3点に絞り、部署内で統一する

それまで個々のセールストークの力に頼って属人的だったクロージングについては、必ず触れるセールストークを部署内で統一することでチーム全体でのクロージングスキルが向上しました。

四、事業部内のメンバー全員が商品に自信を持てるように、魅力の洗い出しを定期的におこなう

二や三の作業でいくら理屈を整えても、商品に自信を持っていなければメンバーは強く推すことができません。僕はかつて、特にこの点をおさえられていませんでした。

五、顧客への後追いは、全員でおこなえるように仕組み化する

個人の成果にこだわりすぎると顧客への後追いは義務感に変わる懸念がありますが、後追いする時間を定期的に設け、チームとして後追いする機会を設けると、チームとしての成果を共有し合うことが可能になります。僕たちは会議の時間に組み込むようにしました。

他にも細かい改善点はありますが、大きな枠組みを変えていくことで事業部の結果はみるみるうちに変わっていきました。部門の目標を大きく上回り、粗利としても前年対比+231%を達成し、しかも、安定的に結果を出せるような強いチームになっていきます。

この記事のまとめとして、まずはあなたが「働きやすい環境を作る力」か「メンバーを勝たせられる力」のどちらかに偏っているのか、それとも両方とも知見を有し、結果を出すために取り組む明確な信念を持っているのか、振り返ってみてください。

最後までお読みくださり感謝。続きはまた違う記事で。

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リーダ―育成・事業再生コンサルタント

本間 正道
Email: playbook.consultant@gmail.com
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