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「100分de名著」で学ぶ福沢諭吉「学問のすゝめ 」4回目その3

出演者:
司会 --- 堀尾正明さん
アシスタント --- 瀧口友理奈さん
講師 --- 齋藤孝さん
ゲスト --- 藤原正彦さん(御茶ノ水女子大学名誉教授)

1.前回のおさらい

日頃から学問することで、緊急時に判断できるようになり、究極的には命を守ることもできたり、風評被害や政治の混迷についても、惑わされないようになり、また自分の視野を広げ、可能性を大きくすることができるということを学びました。

2.「学問のすゝめ」から学ぶべきこと

2.1.識見と行動力のバランス

司会者:
不安な社会を生きていくために、私たちはどうすればいいのか、「学問のすゝめ」の言葉とともに考えていきます。

講師:
「学問のすゝめ」では2つの力が欲しいと言っています。
それは、物事を考える識見と実行する行動力です。
座標軸を使って見ていきます。

講師:
福沢が目指したのは、「識見と行動力を兼ね備えること」で、福沢の言葉を借りると「福沢的品格のある人」と言っています。

アシスタント:
福沢のいう識見もあり行動力もあるというのは、バランスが難しいと思います。

講師:
福沢の生きた時代は行動するしかありませんでした。
そして行動するためには学ばないと、どう足を踏み出せばいいのか分からなくなるというような危機のある時代でした。
今の日本も危機がないかといえば、あるのではないかと思います。
どう動くかは、物事を見通す力、つまり識見とセットだと思います。

2.2.日本の文化に誇りを持つ

司会者:
「学問のすゝめ」から伺える新しい生き方というのは、どのようなものだと言えそうですか?

ゲスト:
前回でお話した通り、福沢は他国の物に簡単になびいてはいけないということを言っていました。
幕末から明治にかけて、ペリーが来て、日本は未分不相応に独立自尊を通そうと固く決意しました。
決意したからには、その後列強との激突という路線に入ってしまったんです。
富国強兵しない限り、日本は確実に植民地になっていましたから、このことは大正解でした。
帝国主義は全世界で行われていました。
ところが、そこで、日本が立ち上がって、アメリカ、イギリス、フランス、ロシアなどの帝国主義のチャンピオンに、帝国主義とは弱い者いじめではないか、武士道精神に反する最も卑劣なことで許せないことだという態度で、お説教すべきだったのですが、なびいてしまったんです。

どうしてこのようなことになってしまうかと言えば、日本人は自分たちが生んできた文明や文化、歴史に自信が持てないでいるからなんです。

福沢諭吉自身、日本人が培ってきた文明、文化、歴史に自信と誇りを持つということを実践してきた人で、その精神を福沢から学ぶべきことだと思います。

アシスタント:
日本の映画などが海外で評価されて、初めて国内でも注目されるということがありますが、少し寂しい風潮だと思います。

福沢が「学問のすゝめ」で言っていた、海外のことも知り、国内の良さも認めるという教えは、私たちも学びたいと感じました。

ゲスト:
日本は明治から、自国の文化に批判的で、誇ったり、自信を持つことは野鄙なことだというムードが漂っています。

震災が起きる前の日本を含めて、福沢が目指していた日本とは、様子がだいぶ変わってきましたね。

そういう意味で、福沢の「学問のすゝめ」は、未だに新しい教えで、今まさに読むべき本だと言えますね。

3.もし福沢がいま生きていたとしたら

アシスタント:
前回の教えで国と渡り合える人物となるという大きな目的で勉学に励むという気風はあまり感じられないのですが、福沢が生きていたとしたら、どんなことを言うと思いますか。

講師:
おそらく週5冊本を読めというのではないかと思います。
私は学生たちに週5冊本を読むように言っていて、ほかの学生にも読んだ本を紹介させています。
これから国を背負っていくのは君たちで、その意識を持つのであれば、週5冊以上は読まないとダメだと言ったら読むようになったんです。
そのくらいの不退転の決意で大人が子供に向かうことが大事ですね。
やはりこの国の資源は、学ぶ意欲と独立心なんですよね。

ゲスト:
「学問のすゝめ」の特徴は、上から下へ怒鳴りつけている叱咤激励で、今の日本に必要なことです。
福沢諭吉みたいな人が今いたら、国民全体を叱って欲しいと思います。
黙って一生懸命本を読んで、言葉をきちんと身につけて、奮い立て、一気に震災のことや日本が抱えている種々の困難を明治の人がやったように、怒涛のごとくに発進をしろと発破をかけてくれるんじゃないかと思います。

4.番組の感想

明治維新後、国内統治の形式や実権が変わり、欧米諸国に半植民地化されたりするような混乱の時代に、福沢諭吉は、国を守るために、国民一人ひとりに自分の頭で考え、判断できる独立自尊の精神の重要性を説いていきました。

欧米諸国の進んだ文明を見ても、ひるまなかった福沢の態度は、驚くべきことで、自ら学んできたことへの自信の表れだと思いました。

福沢の教えを学ぶことにより、本質的な学びについて考えさせられました。

何を勉強させるかということより、どう学んでいくかということを、もっと学生たちに考えさせる機会を与えた方がいい教育ができるのではないかと思いました。

国民一人ひとりの独立心が育てば、国全体も良くなるという考え方は、今にも通じる教えであると思います。
さらに、これからの社会ではグローバル化が進んでいく時代ですので、個人一人ひとりの品格が一層問われるようになると思いました。
福沢の教えを学び、国外に出ても恥ずかしくない日本人でありたいものだと考えさせられました。

※NHKオンデマンド、U-NEXTなどの動画サイトで、ご覧いただけるNHK番組「100分de名著」を元に、学んだり、感じたりしたポイントをお伝えしています。

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