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「膝枕」は熱いうちに

先週土曜の夜中、Clubhouseで「迷ナレーター達が紡ぐ朗読の世界」を聴いていたら膝がムズムズ。noteの下書きに放り込んでいた短編小説「膝枕」を書き上げ、日付が変わった頃に公開した。

noteにリンクを貼ったツイートに「いいね」はついても、Clubhouseで読みたいという人は、すぐには現れなかった。

それが、このnoteを書いている6月5日土曜日で、すでに16人、明日の日曜日にはあと4人、合わせて20人がClubhouseで朗読してくれることになっている。

突然始まって、つながった「膝枕リレー」。そのタスキは「鉄は熱いうちに打て」の精神。


第1走者「藤本幸利」さんはリクエスト曲を流すノリで

5月31日、月曜日の午後、Clubhouseでつながって親しくしている藤本幸利さんが朗読を練習する「声の噴水」ルームに立ち寄った。

感想タイムになったときに「『膝枕』という作品を書いたんですけど、気が向いたときに読んでください」と伝えたところ、

「今から読みましょか」

ハッピーエフエムいたみ79.4MHzで番組を持っている藤本さんは、リクエスト曲を流すノリで、朗読リクエストに応じてくれた。初見でもつっかえない。さすが。「箱入り娘は今頃濡れそぼっているだろう」のくだりで「濡れそぼって……?」と戸惑う一瞬の間があった。原形は「濡れそぼつ」。びしょ濡れになること。

読み通すと、22分もあった。初見でいきなり読んでもらうには図々しい長さだった。

「鉄は熱いうちに打て」で徳田祐介さん→下間都代子さん

同じルームに居合わせたナレーターの徳田祐介さんが「僕もやろうかな」と興味を示してくれた。徳田さんともClubhouseでつながり、イケボと表現力に酔わせてもらっている。漁師のリカコさんの脚本塾では、リカコさんの三男のダンサー裕次郎を演じてもらった。徳田さん、ぜひぜひ。いつ読んでもらえますかと聞いたら、

「今日の夕方どこかで」

そんなすぐやってくれるんですかと驚いたら、

「鉄は熱いうちに打て、ですから」

一方、同じくClubhouseでつながったナレーターの下間都代子さんと別件でやりとりしていたら「あ、膝枕読んでいいですか?」と言っていただき、「実は先ほど藤本さんが読んでくれ、夕方からは徳田さんも」と伝えたところ、「じゃあ今夜読みます」と都代子さん。

「鉄は熱いうちに打て、ですから」

それ徳田さんも同じこと言ってましたよ。声のプロ勢のかけ言葉なんでしょうか。見習おうテツアツ精神。

思い立ったらすぐにルームを開いて読み手と聴き手がつながれるClubhouseのスピード感も後押しして、藤本幸利さん、徳田祐介さん、下間都代子さんと一日に3つの膝枕を味わえることになった。

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初見と言いながら安定感バツグンの徳田さんの「膝枕」は艶っぽく、女役がこれまた色っぽかった。膝枕にときめき、溺れていく男の危うさもさすがだった。

都代子さんの「膝枕」は読み時間20分。テンポが上がり、メリハリがついた。飛ばしたほうがいい描写はポンと飛ばしてくれ、なるほど、そこはいらないなと確認できた。

朗読を聴くと、文章がもたついてるところ、こなれてないところがよくわかる。一人聴くたびに、ちょこちょこ加筆。

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テツアツの膝蹴りで16人

読み終えた都代子さん、さらなるテツアツを発動。

「数珠つなぎで『膝枕』をつなぐよ!」

オーディエンスで聴いていた「声のプロ勢」を次々スピーカーに上げると、

「今井さんに今、許可取らないと読めないよ」(そんなことはない)
「いつ読む? 5日以内だよ」(そんなことも言ってない)
「誰かと組む? じゃ、こことこ、組んだら?」
「初ルーム? 二人で開けば何とかなる!」

ためらう背中をドンと押す。さらには蹴りを入れる(のちに「膝蹴り」と命名される)。一歩踏み出すきっかけの旗をドーンと立て、メガホンで呼びかけてくれる都代子さん。それもあの説得力のある声で(阪急電車の車内アナウンスなど)。

「よし、16人。あと4人いたらキリいいけど、今日はこんなもんで」

惚れ惚れ、お見事。高級布団売りつけられたら買ってしまいます。

2日目に5人が数珠つなぎ

6月1日火曜日の16:00からはMayflower理恵さん(4人目)と広瀬未来さん(5人目)。2本立てだと聴き比べる楽しみが。

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終盤、夢かうつつか聞こえる箱入り娘のセリフが対照的。理恵さんは一途にプログラミングされたロボットが生身の女になり、復讐の念が芽生えたように聞こえた。未来さんは箱入り娘が死に向かっているように聞こえ、「あの不具合は自殺行為、いや、心中なのか」と想像が膨らんだ。

22:00からは菱田盛之さん(6人目)と三原徹司さん(7人目)。

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夕方の理恵さんと未来さんは読み時間23分、菱田さんは17分。テンポでこんなに時間差が。ポンポン進む「膝枕」はライトノベルの味。三原さんは「箱入り娘との出会いで自信がついていく男の変化」を見せる演出。演じ手さんの意図をその場で聞けるとは、ありがたき幸せ。

24:20からは櫻隼人さん(8人目)。囁くような低音の「膝枕」は翻訳もののハードボイルドの味わい。畳が消え、男は細身のジーンズ。生身の膝を味わい尽くしてモノに手を出したのかも……とこれまた妄想をかきたてられた。

アイコンとオープニングも誕生

この日、未来さんが描いた膝枕の絵に理恵さんがレースと文字をあしらったアイコンが誕生。膝枕アイコンに着替えて聴いてくれる人が続々。

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第一走者の藤本さんは1分45秒のオープニングテーマを用意して理恵さんと未来さんを応援。

膝でつながるオトナの文化祭。今日は楽しい膝祭り。

妄想「膝枕」開発会議が始まる3日目

6月2日水曜日13:30からは「全人類を惑わす吐息」でおなじみのmiho.Fさん(9人目)。

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落ち着いた朗読に色気がまざり、声で近づく川端康成、江戸川乱歩の妖しい世界。つい漏れてしまう吐息も楽しませてもらった。

二次会ルーム、さらには自主練ルームが開かれ、藤本さんが関西弁バージョンを披露したとか(気づいたときには感想会)。

アレンジでカタログの枕をふやすのありですかと徳田さんに聞いていただき、「もちろん。ちなみにどんな枕を」と聞くと、「不倫の背徳感を味わえる人妻膝枕」。良いですね。他に「ほてった頬をひんやり冷やす雪女膝枕」「子どもをあやしてくれる子守膝枕」などなど「膝枕」新商品のアイデアが次々と。朗読に加えてネタのリレーも。これはしばらく楽しめそう。

落語みたいに演じ手によってアレンジが加わり、色んなバージョンが生まれたら楽しい。

男のうめきが入った4日目

6月3日木曜日15:00からはkana kaedeさん(10人目)。

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しっとりにジットリが滲み、全編に漂う背徳感。ラストに「保証書を探すガサゴソ」と「男のうめき」を入れた工夫は斬新かつ効果的。

うめきを膨らませて「抵抗の挙げ句の諦めの境地。その先に広がる享楽、快感」を表せたら、さらにラストの余韻が膨らみそう。

22:00からは槇藤寛子さん(11人目)とうえだあやかさん(12人目)。

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フレッシュなお二人。肩に力の入った硬さが、箱入り娘と男のぎこちなさにも通じて、熟練勢が醸し出すコッテリやネットリとは対極な初々しさ。「男」が似合う槇藤さんと、「箱入り娘」の雰囲気をまとったうえださん。「役を割り振った二人朗読も聴いてみたい」「役を入れ替えても面白いかも」と感想会。

二次会では、歴代の膝枕リレー読み手がお互いの朗読を伝え合ったり、これからバトンを受ける読み手にエールを贈ったり。

琵琶語りのコタロウさんが「読んでみたい」と手を挙げてくれ、「待ってました!」。ちょうど昼にロサンゼルス在住のBiwa LAさんの琵琶語りで「つる」(鶴の恩返し)を聴き、鶴の羽ばたきや機織りの効果音まで表現する琵琶の引き出しの奥深さに驚き、「琵琶語りで膝枕ができたら」と思っていたところ。ギターやウクレレも合うかも。

初ルーム組が存在感を見せた5日目

6月4日金曜日16:00からは小羽勝也さん(13人目)と堀部由加里さん(14人目)が2人で力を合わせて初ルームを開いた。

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それぞれの工夫をこらした「膝枕」。好青年声の小羽さんは立たせたいところをしっかり聴かせ、丁寧な朗読。地の文を読む声が藤本さんに似ていると思った。堀部さんは「はんなり関西弁」がたまらんと聴き手を興奮させた。堀部さんはご自身が持てる全エロ成分を濃縮して臨まれたとのこと。

偶然ルームに立ち寄った脚本家仲間で朗読劇ユニットidenshi195を主宰する高橋郁子さんが作品と膝枕リレーの試みを面白がってくれた。朗読作品の演出も数多く手がけ、声の可能性を追い求める郁子さん。「これだけの時間持たせるってすごいこと」と演者のお二人にもエール。

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BGMが入った6日目

6月5日土曜日14:00からは立花遥奈さん(15人目)と岩田麻里さん(16人目)。

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立花さんの「膝枕」は男の声にキュンキュン。「女の子の服」というところを「男の」と言いかけて言い直したのが間違いに聞こえなくて、女の子の扱いに慣れていない男のウブさが伝わった。

岩田さんは初のBGMつき。入れどころも選曲も音のバランスも良く、うまい入れ方。カタログ紹介のシーンにポップな楽しさが加わった。ラスト、枕に吸いつかれた男が「クソッ」と言いながら保証書を読むところ、苛立ちがリアルだった。

箱入り娘膝枕と「二股」かけられるヒサコは、歴代ヒサコにはなかった年上の美魔女タイプ。一方男は学生にも聞こえる若々しさ。「社会人の声に聞こえないのでは」と都代子さん。ほめるところはほめ、良くできるところはズバッと指摘するテツアツ愛の鞭。

声にあわせて男を学生やフリーターの設定にするのもありですよー。

耳で聴く名刺

ところで、Twitterで告知するとき、立花遥奈さんの下のお名前を間違えた。最初、「遙菜」と書いてしまい、遙「奈」と訂正したところ、「遥」奈ですとご本人から訂正をいただき、2文字とも間違っていた。でも、これで覚えた。

書く仕事もそうだけど、声の仕事も名前が看板になる。膝枕リレーでわたしが名前を知った読み手さんたち。約20分の「膝枕」朗読には、技術も色も出る。聴き手の人たちが「この人の朗読、いいな」と名前を覚えるきっかけになるかもしれない。「膝枕」が耳で読む名刺になったら楽しい。

読む名刺と言えば、コピーライター時代、CMのナレーターを決めるときにボイスサンプルを聴き比べた。今だと事務所のホームページでクリックして聴けるところが多いけど、入社した頃は事務所から配られたCDで聴いていた。

自己紹介、フリートーク、架空の会社のラジオCM……。同じ事務所だと、同じ原稿を別々なナレーターさんが読んだりする。その違いを聴き比べるのが好きで、候補に挙がっていない人のサンプルも聴いていた。

時は流れ、自分の原稿で長尺の聴き比べができる日が来るとは。

日曜日(6/6)17:00からは桜井ういよさん(17人目)&夛華正幸さん(18人目)

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21時からは、わくさわりかさん(19人目)&ほりえかおりさん(20人目)

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テツアツで9日目までつながった

6月5日の朝、テツアツ精神を発揮して、同じ部屋に居合わせた大分のDJ NAVEさんに「膝枕読みませんか」と声をかけてみた。「DJがお便りを読み上げるスタイルにして、膝枕が吸いついたままの男にDJが詳しい話を聞くのはどうでしょう?」と言うと、「それ、むっちゃ面白いですね」と乗ってくれ、6月7日月曜日の17:50からDJ「膝枕」上演決定

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わたしをClubhouseに誘ってくれた鶴野充茂さんの「まんが版 頭のいい説明すぐできるコツ」Clubhouse劇上演企画で主役を演じるうのちひろさんは6月8日火曜日22時に。まんが版を一人で全役演じたうのさんの男女演じ分け、楽しみ。

というわけで、これから読む人も含め、「膝枕リレー」メンバーをこちらに。

藤本幸利▶︎徳田祐介▶︎下間都代子▶︎MayFlower理恵▶︎広瀬未来さん▶︎菱田盛之▶︎三原徹司▶︎櫻隼人▶︎miho.F▶︎kana kaede▶︎槇藤寛子▶︎うえだあやか▶︎小羽勝也▶︎堀部由加里▶︎立花遥奈▶︎岩田麻里▶︎桜井ういよ▶︎夛華正幸▶︎わくさわりか▶︎ほりえかおり▶︎DJ NAVE▶︎うのちひろ

ただいま土曜夜21時40分。間もなく22時20分から「迷ナレーター達が紡ぐ朗読の世界」。1週間前、わたしの「読まれる作品を書きたい!」願望をかき立て、「膝枕」を書かせたルームから1週間。

こんなに「膝枕」と書いたり聴いたり口にしたりした1週間はなかった。タイトルを「ひざ子」にしていたら、多分こんなに広まっていない。

思えばあれもこれもテツアツ

24:30追記。

第一走者の藤本幸利さんはわたしと足立紳さんが脚本を書いた『嘘八百 京町ロワイヤル』に通販番組のナレーター役で出演(「膝枕」ではなくシワ伸ばしテープを紹介)されているが、挨拶したことはなかった。Clubhouseを始めて間もない頃、一人ずつ自己紹介していくルームで居合わせたとき、わたしを見つけて「同じルームに脚本家の今井雅子さんが」と皆さんに紹介してくれた。

思えば、あのときからテツアツは始まっていた。

そして、今週の「迷ナレーター達が紡ぐ朗読の世界」の終わりに下間都代子さんが「膝枕」を話題にしてくれた。作者のわたしを紹介するとき、4月に書き下ろした「たゆたう花」の話をしてくれ、あれもテツアツだったと思い出した。

都代子さんがビジネス書を読むルームで、「本を読ませてくれる人を探してる」と募り、「今オーディエンスで聴いている今井さんがC lubhouseで読めるものをnoteに公開してますよ」とつないでくれたのが、藤本幸利さん。

都代子さんが広瀬未来さんと開いている「耳ビジ道場」のファンだったわたしは喜び勇んで「はじめまして!」となったが、「ビジネス書は書いてないんですね?」と都代子さんに言われ、あわてて「書いている友人は紹介できます!」。その日のうちに鶴野充茂さんと川上徹也さんを紹介した運びはテツアツだった。

その場で「いいルーム名ないですかねー」と都代子さんに相談され、「耳で読むビジネス書(耳ビジ)」を一緒に考えたのもテツアツ。さらに「今週末の迷ナレーター部屋で広瀬未来とオリジナルの二人朗読をやりたいんですよ」と持ちかけられ、「みくとよのお二人にあて書き! やります!」と2日で書いて2日で直して本番という発注から上演まで最短記録を打ち立てたのもテツアツ。

そして、先週の迷ナレーター。わたしの膝をムズムズさせたのは広瀬未来さんが朗読した岡本かの子の「売春婦リゼット」だった。艶っぽい話を読む未来さんの声に「たゆたう花」の記憶が蘇り、「また迷ナレーターで読んでもらえる作品を書きたい」と思い、朗読から妄想をかきたてる「膝枕」を仕上げようとなった。

勢い余って迷ナレーターをはみ出す長さになってしまったが、このサイズに挑戦意欲をかき立てられる人もいる。

迷ナレーターを聴いた熱で「膝枕」を書き上げたわたしもテツアツだったじゃないか。そのバトンは、第一走者の藤本さんや膝蹴りの都代子さんから、すでに受け取っていたのだった。

clubhouse朗読をreplayで

2022.2.17小羽勝也さん(膝番号13)がこちらのnoteを朗読。

2022.3.26 小羽勝也さん(膝枕リレー300日目の日付が変わる前に)

2022.5.17 小羽勝也さん

2022.9.23 小羽勝也さん

2023.8.8  膝枕リレー800日記念

2024.2.18 鈴蘭さん(膝枕リレー1000日カウントダウン)

2024.2.24 小羽勝也さん(1000日ヒザーズknee次会)


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