[書評]一番幸せだった日は明日かも。そう思って今もこれからも生きて。
優しい言葉にあふれていた。痛みから発する語が、僕の胸をうずかせた。詩人・岩崎航さんの詩を見たとき以来かもしれない。弱さの力を丁寧に句につなぐ「美」に触れたのは。ナナチルさんのご著作『何もいいことがなかった日の君へ』は、言葉少なにそっと、あなたに寄り添ってくれるだろう。
精神病棟にいた頃を思い出した。トラウマではない、ずっと昔のこと。僕は、精神疾患を持つ人が収容される病棟にいた。重く、病んでいた。窓には鉄格子。そこから見えるのは、枯れ木が刺さった狭い荒れ地。それと、全方位にあ