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V6岡田准一さんGL田中がベンチでまちづくりをFMでトーク!今週限定タイムフリー聴くことができます。ベンチでまちがどうして変わる?【京橋実験レポ】

まず、いきなり事後報告です。先日の日曜日の深夜24時に弊社グランドレベル代表の田中元子が、V6岡田准一さんのJ-waveの番組「Growing Reed」に出演させていただきました。

テーマは「座ること以外のベンチの効能とはどんなものですか?」ということで、ベンチプロジェクトについてお話をさせていただきましたので、もし興味のある方は、ぜひアクセスしてみてください。今週中であれば過去の放送もradikoで聴くことができます。

これまでこのnoteでもベンチの話をいくつかさせていただいてきました。どれも大変大きな反響もいただきまして、これをきっかけに、リアルにベンチを中心としたパブリックスペースを向上させるデザインプロジェクトが複数進行中です。

その中のひとつ、昨年の秋には、その大きな転機となったプロジェクトを東京は京橋、東京スクエアガーデンというビルの公開空地でさせていただきました。今回はそのレポートを中心に。

ベンチの「ない」「ある」をどう捉えるべきか

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東京は京橋、京橋駅の地上口を出ると写真右手に東京スクエアガーデンという建物が建っています。写真の向こう側、首都高をくぐるとそこから銀座エリアのスタートです。右手に行くと有楽町エリア。まぁ、銀座も含めて(東京全体のことなのですが)このあたり全体も、まさにノーベンチエリア。

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見て下さい。電車を降りて、地上に出てきても、ひとはひたすら歩いて行きます。どこかで用事を済ますために、あるいは用事をすませた人が帰っていく。日本のほとんどの開発はこんな感じでつくられてきました。

人々のためにまちをつくる!のではなく、浮浪者を避けるためにベンチはつくらない!まさに謎のロジックです。

結果生まれるのが、人をただ流してしまうこういう光景。ベンチがないから、人は行動範囲を広げず不健康に、エリアにお金も落とさないのですから、悪いことだらけなんですよね。

だから、ここを、

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こんな光景にリニューアルさせていただきました。

ベンチ2019比較

すると人々の過ごし方が変わります。左が、右になったというわけです。

きかっけは、東京ビエンナーレと東京建物

そもそもは、ジャパンベンチプロジェクト、トーキョーベンチプロジェクトをはじめたころ、3331アーツ千代田などを手がける美術家の中村政人さんにお声がえいただいて、これからはじまる「東京ビエンナーレ」に一アーティスト・作家として参加してみないかとお声がけをいただいたことがきかっけでした。

「東京ビエンナーレ」は世界的に見ても非常にチャレンジングなビエンナーレで、何と会場が東東京エリア全体!!美術館だけではなく、あらゆる建物や空地に一斉にアート作品や活動を体験できるというものです。

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そこで、私たちはアート作品をつくったり、あらたな活動を立ち上げるのではなく、まちの1階の大切さを啓蒙するメッセージを込めた「ベンチ」そのものを日本に増やしていくプロジェクトを、東京ビエンナーレに重ねながら、東京全体にベンチをふやすプロジェクトそのものを、アート作品と位置づけたいとプレゼンテーションしました。増えていくベンチが、アートとひととまちをつないでいく。

そして、その会場にいらしたのが、東京建物の皆さん。ちょうど東京建物さんが所有されている京橋の東京スクエアガーデンという建物の公開空地に想いを寄せていた私たちは、交渉させていただき、社会実験としてその場をお借りすることとなりました。

ベンチに大切なデザインとは?

ベンチのデザイン監修には、マイパブリック屋台をつくっていただいたツバメアーキテクツに協力をお願いしました。(実はnoteではまだ屋台の話は一度もできていませんね。今年中には必ず!)

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私たちが考えるベンチデザインで最も大切なことは、何よりも普通であること。そこに奇抜さはいらないのです。日本のベンチメーカーが実施するような、座らせないようにとかはとんでもないことです。

ただただ、安心して座りたいと思わせられるか。それには抑えておくべきポイントがあります。それをツバメアーキテクツさんに伝え、ブラッシュアップしていっていただきました。写真はそのモックアップ第1号を3331で展示していたときのもの。

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今回は20台をつくらせていただいて、当日現地に到着。ここから約1ヶ月の設置となるのです。

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設置時は一番緊張するものですが、ものの数分で、座り、外国人観光客のご夫婦がお話しています。スマホを見ながら、どこに行こうかな?きっとそんな感じ。

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この日は週末だったこともあって、たくさんの人が座って下さいました。

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座る人のタイプも、座り方も、過ごし方も、何もかもが多様なのです。

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ここから1ヶ月、暇さえあれば通い、観察する毎日を過ごしていました。

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やっぱり、1階に、人が常に座っているという光景はすばらしい。

日本の社会実験が糞ダサい!理由

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また、赤色が効いてるでしょ!色は田中がセレクトしました。こういうパキッとした色が日本の都市にはほとんど使われません。

日本は今、どこもかしこも空地や歩道で社会実験のオンパレードです。でもそのほとんどがとにかく糞ダサい。何故か?それはそこにデザインがないからです。いや、デザインはある程度でいいと勘違いをしています。適当に椅子を置き、人工芝を敷く。もちろんそれでも人は集まり、佇みます。そんなこと猿でもわかることなんです。だから、それは実験としてはほとんど意味がない。

いつも僕らは、ゴッホが描きたくなるレベルの光景をつくらなくてはいけないと伝えています。実際に今回のようなレベルまでベンチについても、また配置についても、詳細までデザインをしていくと、人の心に響く光景をつくることができます。そこまでできれば、恒常的にこの光景が欲しいとあまねく人々に思ってもらうことができるはず。

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実際、通りがかる人が「わぁ、こんなベンチあったっけ?すてきだわ〜」と言っているのを数え切れないくらい耳にしましたし、また噂を嗅ぎつけた写真好きのお父さんたちは、この光景に何度もカメラを向けられていました。きっともう少し設置期間が長ければ、きっと絵に描いて下さる方が出てきたと信じています。

つまり、その先にあるのは、新しく生み出された人がいる光景が愛されるってことなんです。このまちいいよね!スキだよ!それがシビックプライドのはじまりなんです。それが社会実験であろうが何であろうが、1階づくりの目指すところ。それを最高のクオリティで持って行きたいわけです。

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途中からクリスマスイルミネーションがはじまって。カップルが座ったりすると、それはまた絵になる。

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お父さんは本を読んでて、子どもはゲームをやっている。物思いにふけるおじさん。どの過ごし方も、愛おしいのですよね。

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ちょっと、遊び心もということで、これまた田中の発案で2倍ベンチというものをつくらせていただきました。すべてが2倍の大きさなので、とんでもない重さになったのですが、大人たちが座るとこんな感じに。

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こういうパブリックアート的な要素もデザインが大切。きちんとできれば、こんな風に自然と記念写真スポットになる。

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オープニング時は、地元のお祭りに便乗して、数時間だけ、道路にこんな風に置かせていただきました。

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子どもたちが群がり

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記念撮影。最高ですね!

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駆けつけて下さった、地元の町会長さんと中村政人さんも

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目の前に広がるこの光景に感動してくださいました。理屈では、ベンチの効用っていろいろあるわけですが、何よりも人が通り過ぎるだけだった場所が、こういう光景になることを目にすると、どちらが人間が暮らすまちにあるべきかは言うまでもありません。

というわけで、約1ヶ月間、大きな問題も起きずにこの社会実験は終わりました。ですので、今訪れると寂しいかな元のベンチのない光景に戻ってしまっています。

そして、恒常的設置と複数のプロジェクトへ展開!

しかし、その後、東京建物さんもまちの住人の皆さんも、やはりあのような光景が恒常的にあるべきだと考えてくださいました。そこで、今、私たちも協力しながら、ある会社と共にオリジナルベンチを開発中。来年3月の設置へ向けて動きはじめています。

また、別の会社とベンチを含めたパブリックファニチャーの開発プロジェクトがはじまったり、さまざまなまちからの「ベンチでまちづくり」の依頼も。東京で、日本で、ベンチを増やしていきたい、そのお手伝いをしていきたいと思っていますので、もし興味のある方は、プロジェクトのサイトをまずはご覧いただけると嬉しいです。

サイトもリニューアルして、主旨を完結にわかりやすくしました。

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コロナでベンチ?はどうして?

そうこうしていたら、コロナ禍の8月18日のタイミングで、コペンハーゲン市は、まちに500のベンチを増やすから、希望を地図にマッピングしてね!と新しいプロジェクトが始動。数千あるのに、さらに増やす。これはニューヨーク市などと同じですね。

そもそも今回のコロナ騒動で、公園や空地、歩道や車道までをもつかって、人々の過ごす場所を増やそうということは、世界では進められています。人々がすごす場所が、外部にたくさんあることは、ウイルス予防などの衛生的観点からも有効に機能する。

そして何よりも、人と人が会うことの大切さを諦めないというわけです。そこにこそ人間たる健康と幸福が担保されているから。

それはこの記事にも少し書きました。

さぁ、ベンチプロジェクトは、これからもいろんな展開を見せていく予定です。機会があれば、noteでも発信できればと思います。気になった方は、要チェックで、よろしくお願いします。

というわけで、今日はこの辺で。

1階づくりはまちづくり

▼ 喫茶ランドリーと1階づくりの入門書『マイパブリックとグランドレベル』(晶文社)


大西正紀(おおにしまさき)

ハード・ソフト・コミュニケーションを一体でデザインする「1階づくり」を軸に、さまざまな「建築」「施設」「まち」をスーパーアクティブに再生する株式会社グランドレベルのディレクター兼アーキテクト兼編集者。日々、グランドレベル、ベンチ、幸福について研究を行う。喫茶ランドリーオーナー。

*喫茶ランドリーの話、グランドレベルの話、まだまだ聞きたい方は、気軽にメッセージをください!

http://glevel.jp/
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