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まち全体が図書館に!?台北の地下街にあった無人図書館。図書館を建てず、人件費も増やさず、市民の近くに図書館を増やしていく斬新なアイデアとは?

台北の地下鉄MRT「忠孝敦化駅」周辺は、オシャレなショップがひしめきあっているエリア。ちょうどこの日の午後は、雷が轟く土砂降りの夕立ちにみまわれて、飛び込んだ先が「VVG Something 好様本事」という本屋さん。

ここはアメリカの情報サイトFlavorwireが発表した「世界で最も美しい本屋さんベスト20」に選ばれた本屋さん。入った瞬間から、空気が変わるというか。そこに並べられた本や雑貨を目にする度に、手に取る度に、このお店が伝えたいことが、じわじわと伝わってくる。置かれているすべてのものは、明確なカテゴリー分けがされているわけではないのに、そこに置かれているもの同士が関係を持っているような錯覚にさえ包まれる。実に体験したことのない本屋さんでした。

こちらのサイトに馴れ初めが詳しくありますので、参考に。

さてさて。雨が止まないので、雨宿りがてら「忠孝敦化駅」へ戻り、隣の「忠孝復興駅」へかけて伸びる東区地下街へ。それほど魅力的な地下街ではなかったのですが、折りたたみの傘を買ったり、現地のショップを流してたわけですが。

途中で、ん? こ、これは何だろう?

じ〜っと見る。ん!これは役所の分所的な施設じゃないですか!

確かに、改札はすぐそこだし、これは便利かも。いや、絶対的に便利だ。しかも見てくださいよ、この明るいデザイン!デザインそのものが、“気軽に訪ねてください”と言わんばかりです。ちょっとしたことも相談しやすそう。さっきまで、そこで買い物してたのに、次の瞬間ここに座れるという、このカジュアルさ。実際に来ている人も若い人ばかりだ。どう考えても、これは理想だよなぁ〜

さらに歩くと...

今度は、職業安定所的な施設が出てきたじゃないですか!

日本の職業安定所って、たいていビルの中にあって、億劫な場所にあったりするけど、これだけアクセスしやすくオープンだと、より活用されるでしょう。そもそもこれは、市民に必要な役所機能が、市民にとってどこにあるのがベストかを考えた結果なのでしょうね。

“市民にとって何がどこにあるのがベストなのか?”

確かにその視点で、日本の世の中を見渡すと、意外とベストな状況にはなっていないのかもしれません。

ととととしょかんが!

ちょっと地下街入っただけで、またしても感動の嵐。今回のレポート自体がそうなのですが、本当に台北のまちは一歩進んで一感動なので、もう身体が持たないですよね。

そんな感慨に浸りながら、さらに歩いていると...

!!! え!!! 本読んでる!!!

ずざざざっと、引いて見てみると、ととと図書館じゃないですか!

その名も「知恵図書館」。地下街通路に沿うように細長い空間。だから、それほど大きくありません。

右側が入口になっていて、中にスタッフがどうやらいない!? スタッフの代わりに、エントランス脇には、自動返却機が。エントランス側は黄色、自動返却機は赤色、そして出口側は青色。

大きく「OPEN BOOK」のロゴもキャッチーで可愛いです。

調べてみると、このタイプの図書館は、台北市内に7箇所もあって、地下街や空港、公園に設置されているのだそう。さらにそれとは別に、駅の改札脇や病院、アリーナに付随する形で、全自動図書貸出しステーションが8箇所もあるようです。

さらにこの「知恵図書館」がつくられた経緯について、図書館情報のポータルサイト「カレントアウェアネス・ポータル」に詳しくありました。

この図書館は台北市の財政難,図書館の人員増が困難という状況下での打開策として構想された。図書館を新たに建築するのではなく,設置場所などで民間の力を借りることにより経費を節減し,かつ無人化により人員不足を乗り切るという2つの側面がある。(カレントアウェアネス・ポータルより)

確かに、今回見たものの場合も、一テナントですからね。図書館の建設費はかからないし、さらに無人化によって人件費も削減できています。

台北市の最初の知恵図書館は,2005年7月,スーパーマーケット・家楽福(カルフール)の中に作られた「内湖智慧圖書館」である。105.78平方メートル(32坪)のスペースを10年間無償使用という条件でカルフールが提供し,台北市立図書館が運営を行っている。家族向けの図書などに重点を置き約1万冊の蔵書で出発したこの図書館は,1年を経ずして9,000人以上が利用証を持ち75,000冊近くを貸し出す人気図書館となった。開館時間はスーパーの営業時間と同じ朝10時~夜10時で年中無休である。スーパーマーケットの中に設置することで,図書館に行く暇がなかった人,図書館をあまり利用しなかった人の利用を促進するとともに,図書館に来た人が買い物をして帰るという双方にとって良い結果となったのである。(カレントアウェアネス・ポータルより)

このレポートには、このカルフールをきっかけに、台北の原宿・西門の地下鉄駅構内に若者向けの図書館が、地下鉄松山機場駅構内に旅行分野に重点を置いた図書館が、公園でゆっくり本を読みたいという人向けの図書館が青年公園に、次々と開館したとあります。その後、これらの成功は、台湾各地へとひろがりはじめていると。それぞれの場所と図書館とのコンプレックスは、いろんな形で相乗的な効果を発揮しているのでしょうね。

そして、今回は見られませんでしたが、レポートの最後に触れられている、主に地下鉄駅に設置されているというATMタイプの機械「Fast book 24小時借書站(24時間貸出ポイント)」がこれ!

ジュークボックスのごとく、動き回る本。先ほどの「知恵図書館」は30〜60坪だけど、こちらのタイプであればたった4坪で設置可能なのだそうです。きっとネットで予約して、駅に設置されたこの機械で受け取れるといったシステムなのでしょう。

今、日本の多くを占めている図書館というものは、それほど歴史の古いものではありません。役所然り、またこのブログで取り上げてきた数々の事例も同じでしょう。都市のカタチ、人口、ライフスタイル、情報技術、さまざまなものが猛烈な勢いで変化していく中で、あらゆる施設がより効果的に機能を果たしていくためには、新しいカタチあるということ。

さて、日本では、あなたのまちでは、どんな新しいカタチがあり得るでしょうか。

台北、まだまだネタあります。次回もお楽しみに!

※その他の台北記事もあわせてどうぞ!
https://note.mu/masakimosaki/m/mec11988a02e8


大西正紀(おおにしまさき)
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