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マイクロツーリズム?違うでしょう?CPH「観光の終焉」から日本の観光を考える。日本型「観光」は、もう終わらせませんか?

コロナでほとんどすべての業界に歪みを起こしています。少し前まで、日本はオリンピックまであと数ヶ月、どこもインバウンド熱気でいっぱいでした。その反動もあって、最近は「観光」を扱うニュースが多いように思います。

以前、上のようなnoteを書いたことがありました。コロナが起きた今こそここで立ち止まって、完全コンテンツ型の日本の観光も舵を切るべきだ!という確信と共に、そうなる兆しが生まれるといいなと少し希望を持っていました。

ところが、テレビで特集されるのは、地方のお客さんが来なくなった旅館が登場して、ピンチはチャンスです!と、新ためて地域の魅力的なコンテンツを探す。大抵こんな感じです。。

それには、星野リゾートの星野さんが、最近積極的にメディアに登場されて発信されている、そのメッセージも牽引しているのかなとも思いました。

観光はもうダメなのでしょうか?という問いかけに、インバウンドだけをターゲットにしてきたこれまでの観光の姿勢に反省の弁を述べていらしたところでは、ぉお!そうですよね、という感じだったのですが。その次あたりから、少し違和感を感じはじめました。

星野さんは、おっしゃいます。

これからは「マイクロツーリズム」です!と。

なんだろうと思って聞いていると、各地域で観光に携わる人たちは、それぞれの地元周辺(10分、15分、30分、1時間の範囲)を改めて歩いて、地域の魅力を再発見してみましょうと。それを新しいコンテンツにして、国内の旅行者を引きつけながら、海外からの旅行者が戻ってくるまで、耐えきろうというわけです。

上のリンク先の記事は、下記のように終わっています。

地域の魅力を知ってもらわなければ、実は観光は強くならない。新型コロナウイルスで大変なダメージを受けているが、転んでもただでは起きない。日本の観光が復活するときには、地域の人たちがその地域の魅力を知っていることは、世界に日本の観光の強さをアピールできる大きな力になると思っています。新型コロナウイルスの前よりもパワフルな観光にしていきたい。そういう風に努力していきたいと思っています。

あらゆるモノやコトの観光コンテンツが大量に生産されて、インバウンドだー!と邁進してきました。そのある種のパワフルさ、強さが、ウイルスひとつの誕生で、一気にひっくり返ってしまったというのに、また同じ地点を目指す?そこに猛烈な違和感を持ったのです。

もちろん、ひとつの対策としてみるとアリだと思います。ただ、今必要なのは、もう少し根本から「観光」とは?と問い直すこと。そんなときコペンハーゲン市のことを思い出しました。

戦略としての「観光の終焉」コペンハーゲン市

実はこのnoteは、2016年1月にコペンハーゲンをぐるりと巡ったことをきっかけに、書き始めました。コペンハーゲン空港を降り立った瞬間から、帰国後まで「なんて豊かなんだ!!!」と興奮が冷めやらず、国語の偏差値50の僕が下手な文章を書き続けることに笑。

2017年になったころに、2デンマーク大使館のSNSで、こんなタイトルの投稿を目にして度肝を抜きました。

コペンハーゲン市、「観光の終焉」を宣言!?

内容を読んで、鳥肌が立つと共に、そうだよね。そうだよね。と何度もうなずてしまいました。このコペンハーゲン市の新しい観光促進戦略というのは、こういうものでした。

これまでやってきたような、たくさんの観光客を呼び込もうとするPRは、もうやりません。これまでは大量の消費者が、ビジネスと余暇、都市と地方、文化と自転車など、各セグメントに分断された観光を楽しんでいました。見栄えの良い観光地の美しい写真で観光をマーケティングする時代も終わりました。政府の観光局が、当局が消費者に観光地を上から目線で提案する時代も終わりです。

だからこその「観光の終焉」というタイトルだというわけです。

そして、下記のように書いてありました。

・観光はもっと地域住民や企業、そして観光客が一緒に作り上げていくものになるべき
・観光客を単なる観光客としてではなく、一時的な住人として扱うことで、観光客も地域コミュニティの一員となり、コミュニティに貢献できる
・コペンハーゲンの街角での経験が、観光客に何かのインスピレーションを与えることができれば、それから将来成長するビジネスが生まれる可能性だってある

まさにコンテンツ型の観光を終わらせて、日常型の観光の在り方を、新たにつくりだそうというもの。

実際にコペンハーゲンでの1週間ほどの「観光」は、まさにそのような体験をしたあとだったので、よく理解できました。

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空港到着から1時間後、真冬の住宅街をとことこ歩き、エアビーのホストのおじさんと連絡を取りながら、よやくお家に辿りつき、

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そこをまるで自分のお家のように使わせていただいて、本当に一市民になったかのような感覚で、毎日街へ出て散策する日々。

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アメリカのポートランドなんかもそうですが、コペンハーゲンもこれといった名所とかないんです。でも、まちを歩いていたら、気になるお店や場所にたくさん出会える。ふらっと入るレストランは、どこでも感動できる味に出会える。

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少し前に東京で出会ったばかりの友人から突然連絡をいただいて、美術館で待ち合わせ。彼は隣国のスウェーデンのマルメから船でやってきた。こんなアクシデントが、旅行の最大の喜びだったりします。

こうして、宿であるお家と、コペンハーゲンのさまざまなエリアを歩きながら、市民の皆さんが暮らしている中に身を置いて、同じようにある生活を共にすることで、異国から来たからこその発見が無数に折り重なっていく。新しい人に出会え、新しいモノに出会え、そこにストーリーがあって、自分も関われたりして、関係性が生まれて、また行きたくなる場所になっていく。それが旅行、観光の醍醐味。

そう、日本は「体験」という言葉も、ほとんどの観光に関わる人たちが勘違いをしているように思います。観光に対して、人間が求めている体験というものは、用意されていた場所にアクセスして体験サセラレルことではありません。そんなわざとらしさをどこまでそぎ落とせるのかが大切。普通に街を歩いていて、自分のアンテナでいろんな発見があって、その先で、えっこれ触れるの、参加できるの!?一緒に、嬉しいとなる。ごく自然に、体験してしまった。一市民として。それが「観光の終焉」にはじまる世界的な観光の潮流なんだと思うのです。

まとめ:日本型とコペンハーゲン市型を表にしてみた

話してきたことを、少し表にしてみると、またいろいろと気づきがありますね。

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そうつまり、今の日本の観光業で交わされる議論は、そもそも観光ってどうあるべきだろうという根本にはまったく立ち返っていない。

左の赤から右の青へという議論ではないんですね。コペンハーゲンのような世界的潮流には一歩も踏み込めていない。それどころか、従来の価値感のまま、赤色ゾーンのまま、ウイルス対策でターゲットを狭めて(半ばこじつけで)新しいコンテンツを探し生みだそうとしています。

それでは、また近い将来、コロナのような何かによって大きな非常時になったときにも、生き続けられる本当の意味での“ツヨイ観光”になれるでしょうか。確実に人口が縮小していく日本において、観光がその地域の生活者の皆さんに、お金だけではない幸福を確実にもたらすようになるのでしょうか。

観光コンテンツではなく、まず「まち」を「1階」をつくる!

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もし日常型の観光に振り切れるとすると、そのときに最初に必要なことが、「1階づくりはまちづくり」なんです。

小さなまちでも、大きな都市でも、そこに見合ったスケールで、1階にまちがある。いろんな市民のチャレンジであふれている。それが結果的にその地域らしさとなり噂が広まる。また、人を惹き付ける。

そんな新しい観光のカタチを本気でつくりたい方がいらしたら、ぜひお手伝いをさせてください!

観光についての記事はたくさん下書きフォルダに入っているので、またタイミングを見て書き上げていきたいと思います。

というわけで、今日はこの辺で。

(「まち」の「らしさ」については下記の記事で)

1階づくりはまちづくり(気になった方は、入門編、弊社代表田中の書籍からも、楽しいまちの1階の世界へどうぞ!)


大西正紀(おおにしまさき)

ハード・ソフト・コミュニケーションを一体でデザインする「1階づくり」を軸に、さまざまな「建築」「施設」「まち」をスーパーアクティブに再生する株式会社グランドレベルのディレクター兼アーキテクト兼編集者。日々、グランドレベル、ベンチ、幸福について研究を行う。喫茶ランドリーオーナー。

*喫茶ランドリーの話、グランドレベルの話、まだまだ聞きたい方は、気軽にメッセージをください!

http://glevel.jp/
http://kissalaundry.com



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