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建築センターに見たデンマーク市民と建築との距離。日本にもこういう施設つくりませんか?

今回は、2016/02/25の記事「歩道に椅子をブッ刺して!?アクティブな外席の先にある、市民の幸せとは?<コペンハーゲン外席写真集>」の最後に取り上げた写真からスタート。ここから川を渡って、下のようなルートで、デンマーク建築センターまで行ってみようと思います。

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改めて、地面に埋め込まれた外席。悶絶するほどに素敵です。無自覚に適当なテーブルと椅子を置くか、このようにきちんと考えて設えるか、その効果は歴然ですね。流行る店、儲かる店は、もちろん後者。そういう意味では、日本のグランドレベルは、デザインをないがしろにしてしまうことで、損をしているお店が無数にあると思います。そのあたりも、グランドレベルでなんとかしたい。

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というわけで、中に入ってみると、平日午前にして、小さなお店は常連さんでギュウギュウ。けど、皆旅行者にも優しい。

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身体が暖まったので再出発。数百メートル歩くと船着き場。車のバスも船のバスもバス停のサインは同じ。こういうこととても大事です。

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しばしの待ち時間。世界には、いろんな水上バスがあるけども、やっぱり、水上バスの待合所なるもの、可愛らしくこうして水際にあるべきですよね。隅田川にしても、よく待合所が水辺から離れた陸地につくられているけど、基本的な考え方として間違っています。浅草も同じですよね。水が手に取れるくらいのところにないとシズル感がありません。

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船バス地上電車メトロがシンプルにまとめられた地図。これにバスの路線が重なることで、コペンハーゲンの基本的な公共交通機関はつくられています。これに自転車道路が折り重なるので、の道路はかなり走りにくそうにできているそう。晴れていたら、南側の一番先まで行こうと思っていたけど、今回は断念。

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船の時間もグーグルマップで出てくるので、それほど待たずにやってきました。ほんと便利だー。

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対岸には、いかした集合住宅が建設中。これ後日うかがった設計事務所COBEの設計でした。

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3つ目で降りると、北側は中心部(写真)。そちらへに行きたいところを逆、南側へ橋を渡ります。

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数分歩くと、デンマーク建築センターの看板が。ここを左へ。

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こ、これか。。運河沿いの倉庫がリノベーションされたものだそう。では、入ってみましょう。

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入るといきなり本屋さん。

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うぉ!!世界中の建築本がビッシリ並んでいます。

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もちろんデンマークや北欧関連の本も充実。この本は、コミュニティの問題も人種の問題もパブリックスペースの再生でなしとげたスーパープロジェクトSuperkilenの作品集。この厚さの本1冊に、この作品1つなんだから、このプロジェクトのすごさがわかります。

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ザハ・ハディドのマグカップ。建築グッズも充実。

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日本では見ることのない、建築の楽しさをわかりやすく伝える本も、たくさんあります。ほら、ザハの新国立競技場もしっかり掲載。新国立競技場が、こんな顛末になってしまったことは、国際的に見ればとてもおかしなことなんですよね。。

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本屋の脇から吹き抜けを見下ろすとギャラリーが。数年前、東京のTOTOギャラリー・間でも個展をおこなっていたインドの設計事務所、スタジオ・ムンバイの展覧会が開催中。すべての工程を建築家から職人まで、手作業で行う彼らの意味合いも、デンマークで見ることで、また変わります。

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本屋の奥を覗いてみると。

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こんな素敵なレクチャールームが。暖かみがあって、これはちょっとしたトークイベントでも熱気に包まれそう。ギャラリー、本屋、レクチャールームがほぼつながっています。

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上階へ上がる踊り場には、こんなTシャツたちが。ギャラリーで開催された企画展に合わせてつくられているもの。確かにギャラリー・間くらいであれば、毎回こういうのがあってもいいですよね。建築好きはみんな着たくなる。

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階段を上がると、謎のオブジェが。奥をのぞき込んでみると。

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キタコレ! 子供のためのワークショップスペース。そうなんです。何ごとも子供に対する教育からなんです。見て下さい!子供がいなくても、ワクワク感が伝わってくるこの雰囲気。

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けんちく体操がきっかけで海外に行くようになり、「建築と子供の教育」に関わる海外の方たちと人たちとつながる中で知ったのが、日本は「建築と子供の教育」においては、超後進国だということでした。デンマークしかり、ヨーロッパはもちろん、最近は、エジプトやコスタリカといった国も、かなり力を入れた取り組みがされています。(写真は、2014年8月の南アフリカにて。世界建築家大会「建築と子供の教育」セッションの各国代表の皆さんと)

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子供向けワークショップの案内パンフレット。

日本では、こういう場所がどこにあるべきなんでしょうか。本来なら、建築学会のようなところの1階がこんなふうになっていて、地域にも開かれているべきなんでしょうね。学会が無理なら、私企業であるたとえばTOTOのギャラリー間の1階がこんなふうになっていたり、はたまた建築学科をもつ大学の1階がこうなっているのもありなんでしょうね。どなたか志のある方、一緒にやりませんか?

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子供のスペースの隣には、もうひとつギャラリースペースが。この展示もまた面白くて、なんと季節モノ。デンマークの冬は寒いけど、寒いところは世界中にある。そしてそこには、寒い季節をポジティブに楽しんでしまおうという建築的なクリエイティブがあるはずだ!という切り口で、世界各国の事例が集められていました。暖をつくって、人が集まれる小さな場所をつくるものから、日照時間が短いからこそ、暖かみのある照明をつくるものまで、写真が中心の構成のわりに、発見満載の展示でした。

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ふたつ目のギャラリーと子供のワークスペースから、ふと隣に目をやると、

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カフェ。

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照明と明るい自然光に吸い込まれるように入っていくと、

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建物から川側に飛び出てつくられたサンルーム席が!!

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あとで気付いたけど、写真の左部分、3階にポコッと出ているあそこだったのです!

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ちょっと高めだったけど、接客もお店の雰囲気も、本気度を感じたので、急遽ここでランチすることに。そうしたら、どの料理もパーフェクトに美味しい!てか、何なんだ!建築センターという名の施設内にある、カフェレストランで、こんな美味しすぎるのはおかしいだろ!!

しかし、充実の本屋にギャラリー、機能的でカジュアルなレクチャールーム、最高に楽しそうなキッズルームに、美味しすぎるカフェレストランですか。今ふと気付きました。ここもまたオトナのディズニーランドかも。。

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カフェの中の席も元の倉庫空間の良さがそのまま残っていて、とても雰囲気がいい感じ。ホームページも↑↑↑ほら、良い感じでしょう。きっと、展覧会やレクチャールームで開催される催しの合わせて、カジュアルにパーティーなども行われているんでしょうね。

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そして、改めてホームページを見てみました。小学校での建築教育の試み、海外の建築旅行案内、映画の日、ファミリーワークショップのお知らせ、日曜日建築ツアー、といった一般向けのコンテンツやニュースが「LIFE」というカテゴリーでたくさん発信されている一方で、専門向けのコンテンツもまた「BUILD」「CITIES」といったカテゴリーで発信されています。リオのオリンピックでデンマークパビリオンをデンマーク建築センターがキュレーションというニュースも、国の中の「建築」の立ち位置をよくあらわしてる。

日本では、「建築」というと「興味ないな」「知らないな」って人も少なくありません。しかし、社会と私たちの生活の間には、必ず「建築」って存在していて、大きく影響しているものなんです。だからこそ、どう在るかということが大事だということをデンマークの人たちは、もちろんよく知っている。だからこそ、デンマーク建築センターは、このようにつくられているのだと思います。

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最後に余談。こちらは、日本建築学会のホームページです。

(僕自身も学会員ですし...)それぞれに歴史も事情も異なるので、一概に批判することも、同じことをやるべきとも言えませんが。日本がより変わっていかなくてはいけないことは明確です。個人的には、日本では、既存の組織ではなく、個人や小規模の新規の組織がガンガン立ち上がっていくのが良いと思っています。

さて次回は、最新型のマーケットへ行ってみようと思います。では、お楽しみに!

おおにし・まさき(mosaki


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