部屋内で雨が降った話。

昔、24歳から31歳まで暮らしていた家の話。
今のマンションの前に住んでいた頃の家の話。
結婚するだいぶ前の話でもまず手始めに。

その当時住んでいた家は、
平屋の一戸建ての木造賃貸で、
とても古い賃貸だった。

18年前、
24歳の頃、
住んでいた高円寺のロフト付きのワンルームの部屋があまりにも狭く
小さな作品しか作れず、
どうしてももう少し大きな作品を作る為のアトリエが欲しく、
行き当たりばったりで現場帰りに作業着で入った新宿の不動産屋で、

家をどういじっても(壁を建てたりとか)、
怒られなくて、
夜中とかにうるさい音を出してもいいような
安い賃貸戸建に住みたいんですけどと伝えたところ、
すぐさま受付のスーツの男性は着座のまま表情を変えずにそのキーワードとなるようなワードを打っているんだろうが、
パソコンキーボードをカタカタ弾き、
その横にあるコピー機から出てきた、
10件程だったか、都内23区内外の、
戸建物件情報が印刷されたA4の紙何枚か?
を僕に渡してくれた。

その中で1番状態が良く、スーツの男性もここは安くていいんじゃない?
と、
その足でその人の会社の白い車で20分程走らせ見に行った家。
23区ではなく、西東京市の家。

少し夜遅い時間、暗くなっていたが内見した結果、
そんな時間なのに来てくれた大家さんもとても優しいおばちゃんで、
安い為、その家にその場ですぐ住むことを決めた。

そして、その1ヶ月以内には、
当時住んでいた高円寺のワンルームから郊外のその平屋の古い木造貸家へ引っ越した。

引越してすぐやった事。
一部屋の部屋内壁に角材を縦横と100cm角くらいに格子状に組み、
その上に大きな窓だけ残してベニヤを隙間なく貼り壁を埋めて、
畳の上に養生シートを隙間なく敷き、
壁を真白く塗り、アトリエを作った。
そこから7年、31歳までその家に住みながら
作品を作り続けていたのだが、

これはとある冬、
その家の構造上、
外がマイナス2度なら部屋内もマイナス2度、
外が35度なら部屋内も35度だったので、

灯油ストーブとエアコンは
火事だけは勘弁と、
安全に常に配慮し24時間稼働させていながら、生活をしていた。
部屋が外だったから。ほぼ。

で、もうひとつ、
身体を芯から温める

この話の本題の

「お風呂」の話。

寒い冬を乗り越えるために
若い1人暮らしだったが、
真冬は完全に風呂に水を張り、
お湯を沸かして、
キンキンに沸かして身体を温めていた。
それも、水はもうほぼ満タンにして、
身体を風呂に入れる時、
ザバーッと浴槽外に、
無駄にしちゃうのが好きだった。

その浴室内だが、
外の温度がマイナス2度の時、
家の中はマイナス1度だとして、
浴室内は裸なのでマイナス15度の体感だった。
だから、
灯油ストーブであったまった部屋から、
ほぼ外の風呂へ入るときの身体から聞こえてくる声はいつも

「キゃーーーーン❤️💦🧊」

とか

「おわーーーーーっっっっ!!!💦」

とかだった。

で、その家の風呂を沸かす時なんだが
ガスを点ける際、
古い何か小さい草刈機の電源を点けるみたいな動きが必要なんだが、

浴槽沿いに備え付けられている、
湯沸かし機の機械に、
親指と人差し指で持てる黒い丸いツマミがあり、
それを持ち引っ張ると、
回せるようになっているので、
タイミングよく、クルクル早めに回すと、

「カンカンカン! ガンガンガン!!!」

みたいな音が昭和の残した風景のような内装の古いタイル貼りの浴室内にこだまの様に響く。

※ちなみに同じタイプの家が隣にもあり、
その隣の家がガスを点ける際の音も、
隣家なのに聞こえてくるくらいの音量。

※更にちなみにその隣のお宅はまたいつか別で話すが、優しいフィリピン人女性の母と、
日本人男性(新聞配達員の方)と子供1人の家族と数人のフィリピン女性達が住んでいた。

そうして、そのカンカンカンといい音を鳴らした後、

「クゥルルルル………

………シュボッ!!!!!」

と明らかに、火が燃焼を開始し始めた音とともに、
お湯が沸き始める風呂。

※シャワーはそもそもこの風呂には備えつけられていない
だから沸かしていた、毎日。
というのと、風呂が好きだから。
もっと前に東京に来たての20歳〜21歳の頃に住んでいた家は、4畳半、風呂トイレ無しワンルームで銭湯生活だった。
銭湯は好きで良かったが、
これもまた別で話すがお金もかかったりで
結果真夏でも3〜4日で1回しか銭湯に行けず、
上の住人が勝手に靴で家に土足で入っていたり、
隣のおじさんがなんかやばい感じとかで引越した。

と、話が逸れたが風呂は好きで、
時間をかけて毎日毎日お湯を張って、
風呂に入っていた。

その風呂は
「水」から「お湯」にしなければならないタイプの風呂の為、
沸けるのに10分から15分とかかかるのだが、
真冬は真水、
高原の石清水、冬の軽井沢の川の水温、
その綺麗な白狐のような指で触るときゃっ!❤️となり既にあったまったホッカイロに手を埋めたくなるような冷たさの水だったので、
20分とか?
お湯が沸ける時間がかかった、ような記憶。
※18年程前の記憶の話しなのでご了承。

で、湯沸かし機の黒いつまみを回して
「カンカンカンガンガン!!」
とその氷のような満タンの水を、
天国の湯温にする為沸き始めたのが
現場が終わり家に帰ってきて、
19:00には夕飯を済ませていた?記憶だが
20:00頃からだったと思う。

で、
気付いたら顔に

「ポツポツ、ポタポタ」

という水滴、というかびしゃびしゃになっている?

あと、部屋の中なのだが、
耳に近い音で

「シトシト、ザーザー」

という、音。

家の中で事態が掴めず。

「.......... ん?」と。

そして?
家の端っこの方からは
何か響くような?轟音?も
どうやら聞こえている。

その音はよく聞くと、

鬼の住む国にしか存在しないような真っ黒い鍋。大きさとして、人間が100人はたやすく浸かれるような、
なんか50mほどの鬼が両手で持てるような持ち手が2つ付いたような大きな大きな黒い鍋くらいの感じね。

その鍋の下には、
アホみたいな滝のような真っ赤な溶岩が
鍋の下を流れ、
その鍋の中の水が、
とんでもない大きな気泡で沸騰している時のような音だった。

「ブォゴンブォゴンブォゴンブォゴン!!!!!
ブォゴンブォゴンブォゴンブォゴン!!!!
♾️ (ループ)」

・・・・・・・・

え!?!?!?

なんの音なんこれ?!(岡山弁)

で1人なのにガバッと起きて喋ってしまうあのびっくりした時のやつの声が出た。

どうやら風呂を沸かしながら、
20:00頃から寝てしまっていたようだった。


風呂を沸かしながら。
24:00頃まで?だったか寝ていた。

、、、、、!!!!!!!!!!!!!
?!?@#/!!??,,☆→♪!!!!!

となり即、

ルイスよりも大谷よりも、
良く飛ぶドライバーで打ったゴルフボールよりも、
ひかりよりものぞみよりもかがやきよりも速く、
当時遅刻症だった俺は常に建築現場最寄り駅から建築現場まで、
7:45朝礼に間に合う為に全力で走っていたが、そのどの時よりも速く、
風呂へ走って向かった。
※(余談)
現場に入る時は走っていなかったフリをしていた。

そして到着したその、
轟音、大沸騰音、硬いバレーボールを何千発と壁の向こうでこちらへ打ちつけてくるような音の、
の元凶、大元へ到着。

それは鬼の住む台所、
地獄の鍋料理が出来ていた。

沸騰の気泡のひとつのサイズは大袈裟ではなく20cmくらいあった。
その気泡が数100個、

満タンに浴槽に張っていた水はほぼ空になっており、
沸騰の末路のような状態。

そう、
風呂を沸かしたまま寝てしまっていた結果、
浴槽内の水分が沸騰して、
蒸発して、
そうなっていた。

轟音の音の正体は

「風呂が沸かし過ぎて沸騰していた音」

だった。

事態を把握し始めていく俺。

風呂からまた特急小江戸号で部屋へ戻り、
部屋全体を首を回して見ると先ほどの
「ザーザー」音、
顔に当たる水滴の正体は

風呂のお湯が沸騰し、完全に蒸発し、
家の中でこもった蒸気が家中の天井に付着し、

天井から床に落ちる水滴、

「部屋雨」 (ヘヤサメ)  だった。


部屋内で雨  が降っていた事に気付く。

その、6畳×3部屋あった、
昭和の落とし物の平屋全部の天井から、
床、畳に向かって、ザーザーと

「雨」が降っていた。

これを後に人に話すも皆ウソだと言われていたが、
本当に降っていたのだ、部屋雨が。

屋根あるのに、
屋根が無いみたいに
雨が家の中で降ってたんよ、
ほんまに、信じて、
トトロいたんだよ、、。

ただ結果、
後日友人の家でも数年後に同様の雨が降り、
実証されその話は皆に信じてもらえたのだが、

その雨に24時に気付き、
朝の4時まで僕は家中のタオル、布、
乾いた布、
乾いた物とか色々を使って
家を拭いた。

無限に家の中の壁と天井を拭く作業を、
翌日も現場なので、
朝5:30に家を出ねばならないのに、
夜鍋でやっていた。

拭いても拭いても、
家はびしょびしょだった。
心の中も目の中も、
びしょびしょの大粒の雨が降っていた。


ただ、その家は古民家で
壁の仕上げは砂壁だった。

朝4時頃、
もう諦め1時間ほど寝た後、
現場に行った。

昼間現場で身体を動かしながら、
家に帰るのが嫌だったのを覚えている。
あのびしょびしょの家に帰るのが。

で、憂鬱な気持ちのまま、
夕方帰ったら
家の中は

カラッカラだった。

あの強い熱帯低気圧がウソみたいに、
部屋の中が鳥取砂丘だった。

砂壁のおかげだと思った。

まじかと、
手で色々な部屋の壁や天井を触るも
カラッカラ、
鬼の手で平手打ちされて、
目覚めたかのように、

乾いていた。

乾いとるやんけ、、、と

めちゃくちゃ安堵したのを、
この42歳になった今でもその瞬間を
よく覚えている。

これが僕の部屋内で雨が降って、
即乾いた、

嘘のような、
全く大袈裟に誇張していない、
よく仕事の休憩中に話していた、話。

うたた寝をしてしまった今日、2023/7/25
にあの日の事を思い出したので、お話しました。
ご清聴ありがとうございました。
また会う日までごきげんよう、おやすみなさい。

2023/7/25/岸本雅樹

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