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【百人一首鑑賞】朝ぼらけ有明の月とみるまでに吉野の里にふれる白雪 坂上是則

■朝ぼらけ有明の月とみるまでに吉野の里にふれる白雪 坂上是則

(詠んで味わう)あさぼらけありあけのつきとみるまでに よしののさとにふれるしらゆき

百人一首31番目の和歌を今日は取り上げたいと思います。
坂上是則ってどんな人?
三十六歌仙の一人です。死去したのが930年ごろ。
地方の官僚だったようですね。平安時代中期も後半にさしかかった頃に活躍した方。有名な紀貫之より少し前の先輩、というところでしょうか。


■現代語訳
夜がほのぼの明けてきた 辺りは白く明るい
この明るさは有明の月の光かと思ったが雪だった
月の光と見まがうほど あたり一面薄雪がともって明るんでいたのだ
ここは吉野なのだ  田辺聖子著「田辺聖子の百人一首より」

■語句解説
・朝ぼらけ・・・夜が明けてモノの輪郭などがほのかに見える状態
・ふれる・・・降れ(降るの已然形)+る(完了の助動詞りの連体形)=降っていた


有明の月って?

いわゆる「有明の月」を詠った和歌は多くあります。
お恥ずかしいことに、昔私は有明の月を
『有明海に浮かぶ月』だと思い込んでおりました(汗)

九州を歌った和歌なのか!ととんでもない勘違い。
人に言わなくてよかった。。。
勝手に自分が知っている「有明」と一緒にしていまったのですね。

有明の月とは毎月二十六日頃に見える月なのですね。

※参考(超絶便利な資料)
お月様の満ち欠けと呼び名

上記のページにて説明があるように
有明の月は早朝近くに上がる月。
もうすぐ朝だということなんですよね。
左の三分の一程が見える月のこと。


和歌人の視点を得るのに重要な『月』

さて。昔人々は太陰暦で生活していました。
月の満ち欠けを基本に年中行事などを行っていたわけですね。

この慣習が比較的色濃く残っているのが『京都』。
私はNHK『京都人の密かな愉しみ』というドキュメント&ドラマ
番組でこのことを知りました。


※参考情報
君し来まさば-「京都人の密かな愉しみ 月夜の告白」①


確かに、ワタクシ、過去に作句していた元俳人で月の呼び名は      沢山知っておりましたがそれはあくまで知っている、だけで
生活と結びついている感覚はなく、、、


それゆえ、平安時代の人々の生活と月との密接な関係を
感じ取れないと、和歌を詠んでの感慨などは少し薄いかもれません。


古代の人にとって「吉野」ってどういうところなの?

この和歌を理解するのに、「吉野」という土地の理解も
必要になってくると思います。

現在は桜で有名ですね。。。


吉野というのは、飛鳥の時代から
遊興・遊猟の別荘地だったとのこと。

それが時を経て、別荘地としての人気は落ちますが
平安時代の都人にはあこがれの地、として
引き続き賞賛され、和歌も作られました。


吉野を詠った和歌の時代の変遷については
下記の資料が貴重でした。

吉野といえば雪?桜?和歌で吉野山の歴史を知る

時代によってつくられる和歌の共通項や違い等に注目して
味わって詠むのもまた一興かと思います。

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