見出し画像

小説「とても嬉しくて。とても寂しくて。」

まえがき
初めてこのような長短編の小説を書き、「起承転結」ばらばらかもしれませんが最後まで読んで頂けると幸いです。
この小説「とても嬉しくて。とても寂しくて。」はTwitterのある動画を基に書きました。


小説
「とても嬉しくて。とても寂しくて。」


-君は-


ピチャ……ピチャ

下流辺りから聞こえる小さな川魚たちが跳ねる音
「いってきまーす」
「新くんおはよう」
「おはようございます!」
いつも通りの朝の光景だ。
ただ、いつもと違うことがある。見た感じ僕と同じぐらいの歳だろうかひとりで寂しそうに歩いている子がいる。
「君見たことないけど引越ししてきたの?」
「うん。」
「どこから来たの?」
「・・・」
「…何歳?」
「・・・」
「どこの学校?」
「せいじょう」
「西常!?僕と同じだ!」
「・・・」
そんな一方的な会話を交えていると学校に着くのが早く感じた。
僕、実は学校では比較的無口で大人しい子だが何故か"君”には話しやすい。
「あれどこ行くの」
「先に職員室行かないと」
「そう。じゃあね!」
「・・・」
返事もしないで早足で逃げるように職員室へ向かって行った。

キーンコーンカーンコーン

チャイムがなっても先生が来ない。まぁいつもの事だから気にする子はいない。
今日は先生がいつもより来るのが遅かった。はぁ〜。

ガラガラ

「せんせ...」
先生と見覚えのある子が教室に入ってきた。
「あっ。」
さっき学校に来る途中に会った子だ。
二人は目を合うと同時に
「さっきの....」
同じ年ぐらいだとは思ったけど同じ学年で同じクラスとは思ってはいなかった
「ん?知り合い?なら良かったこの子人見知りなの」
先生は安心したように言った。
「自己紹介、できる?」
少し不安そうに頷きながら言った
「うん。東京から来た“松永陸”です。」
今度は少し安心したような顔で先生は言った
「陸くん質問大丈夫?」
顔を縦に振る
「東京のどこから来たの?」「好きな食べ物は?」「好きなゲームとかあるの?」
小学生らしい質問ばっかりだった。
僕は素朴な質問をした。
「なんで、学校に来る途中僕の質問に答えてくれなかったの?」
陸は少し間をあけて
「あまり知らない人とは喋らない...」
「へぇー君面白いね」
「えっと、名前で、読んでくれないかな」
「あっごめんごめんわかった!陸!」
「呼び捨て...いいけど.....」
お昼休みにはみんな持ってきたお弁当を食べるがお弁当を忘れた陸をみて新は
「どうしたの?忘れたの?」
「うん。」
「そっか、僕のを食べなよもうお腹いっぱいだし」
「でも...」
「いいから食べな!」
「ありがとう。」
午後の授業を終え
「陸くん一緒に帰ろう」
「うん。いいよ。」
車も通らない静かで涼しい帰り道
何も喋らないまま帰り道は別れ
「僕、家こっちなんだ。また明日ね」
「うん。ばいばい」


-ごめんね-



長袖を着る人がもう完全にいなくなった
1日-1週間-1ヶ月と日が経つ度に陸は学校に来る日数は少くなっていた。年が明け外は真っ白例年より雪が深く積もっている。
風と雪が強いある朝、久しぶりに陸と学校で会った。
「どうしたの最近学校来てなかったけど」
陸は元気で乾燥してるのか少しか枯れた声で
「おはよう!ううん何もないよ!」
って言ってたけど僕には、今にも泣きそうな声で。鋭い目で
「なんで。なんで。」
と言われた気がした。でも僕は特に深く考えず、昼休みで外でサッカーをしてると
「おーいどこに向かって蹴ってんだよ〜」
「ごめん新取ってきてくれない?」
「いいよ!」
いつもなら誰もいないはずの倉庫の裏から声が聞こえた
「金はまだなのかよ」「痛い...」「貧乏には山にでも行け」「近寄るな」
僕は「助けなきゃ」そう思ったけど『助けたい』より『怖い』の方が強くて体が動かない
遠くから見ると陸の目は
「なんで僕なの」「他の子もいるじゃないか」「新でもいいじゃないか」
そう言ってる気がした。
でもそれは僕の目が間違っていた。
よく見ると陸の目はただただ「助けて」と必死に僕に訴えかけていた。
僕は人の気持ちを読み取ることも出来ない馬鹿だ。
陸は僕の事を唯一の友達だと思って助けを求めていたのに何もしてあげられなかった。
僕は勇気をだして震えた声で大きな声で言った
「おい!辞めてあげろよ1人に対してこんな大勢で卑怯じゃないか!」
全力を振り絞って言って怖くて体が震えていた
「お前。明日から覚えておけよ」
いじめっ子の“町中”はそれだけを言って僕を睨んで帰って行った
とても怖かったけど…
泣きながら「ありがとう」と「ごめんね」を繰り返す陸を見たらそんな事、どうでも良くなった。
りくが握ってくれた手がとても暖かくて…僕も涙が止まらなくなった。
その放課後僕は陸を誘って一緒に帰った。
陸は一言も喋らない。
でも僕はそれでも嬉しかった。ずっと黙ってままだったけど
「また明日。」
って言える事がすごく。すごく嬉しかった。



-とても嬉しくて。とても寂しくて-

ここから先は

656字

¥ 100

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!