理学療法士の中堅が思った以上に少なく、組織運営に影響を与えているのではという話

先日理学療法士会長選挙の討論会を視聴後にツイートした理学療法士会員には若い人が多いという話。

これって、つまりは現時点では「ゆくゆくリーダーとして組織を引っ張っていく中堅が足りてない」問題なんですよね。

今、色々な職場で吹き出している問題は、ここに端を発する可能性があります。

若手がなぜか育たないし場合によっては辞めていくのはなぜ?

入職したての新人理学療法士。
登録理学療法士制度も始まり5-10年目の指導者が多いと推察します。20代後半から30代前半でしょうか。
彼らを育てたのは誰か?
職場環境によっても様々でしょうがこれが現在30代後半から40代前半だと思われます。

この30代後半から40代前半が少ないことが、組織および理学療法士の卒後教育に多大な影響を与えているのではないかというのが、ここで話したいことです。
あくまで仮説ですが、ご一読いただけると幸いです。

理学療法士数の推移

理学療法士合格者数の年次推移をみると
・1990年代中頃から合格者数急増傾向
・2006年に 6000人/年 突破
・2013年に 1万人/年 突破
と制度変更に伴う養成校増加→総定員数増加(グラフが下にあります)の影響がこのころにあった事が推察されます。

1990年代後半の卒業生の多くは40代後半から50歳くらい。
また2000年代中盤までの卒業生は40〜45歳あたりと思われます。
2000年代中盤に理学療法士数がもう1段階急増しており、ここが現在の40歳未満の方々でしょうか。
2010年代には増加傾向が止まりばらつきはありますが横ばいに。ここが現在の20代〜30代前半の方々ですね。

理学療法士国家試験受験者と合格者
(日本理学療法士協会HP統計情報 https://www.japanpt.or.jp/activity/data/ 記載データより作成)
理学療法士養成校入学定員数(合算)
日本理学療法士協会HP統計情報 https://www.japanpt.or.jp/activity/data/ 記載データより作成)
理学療法士協会会員数推移
(日本理学療法士協会HP統計情報 https://www.japanpt.or.jp/activity/data/ 記載データより作成)
理学療法士養成校年次推移
(日本理学療法士協会HP統計情報 https://www.japanpt.or.jp/activity/data/ 記載データより作成)

中堅理学療法士が少ないことによる影響

セカンドキャリアの方もいるので一概には言えませんが現在の40歳以上は合格者3000人台の時代がメイン。
その後に理学療法士数が爆増したため、40歳以上は総数から見れば相対的に数が少ない世代ということになります。

あくまで推測ですが、ここが卒後OJTにおけるマンツーマン指導時代の終焉であったのではないでしょうか?

1対2、場合によっては1対3などの指導も行わなければならない時代には突入したわけです。

おそらくこの頃から指導側も新人側もなんか上手くいかない感覚を持つ人が増えてきたはず。

それまでの理学療法士は経験と手技のようなところが(おそらく)メインだったので、マンツーマンできないと継承できる部分が大きく損なわれます。

そこにEBM(EBPT)という黒船も襲来。

この辺を意識できた施設は別として、ほとんどが大混乱状態になったことは想像に難くないでしょう。

卒前教育もそれまでと大きく変わり始めたのもおそらくこの時期。

この頃から、立場が上の方のPTと、若めのPTの知識やリハ概念が乖離し始め、話が通じないケースも多くなってきたのではないでしょうか。

若手や管理者の立場や考えに関して、どちらもなんとなくわかるのが2023年現在の40代前後の理学療法士の方々ではないかと思います。

ですので現在の40代前後タスクには下への教育、上との折衝、自己研鑽に加え、人によっては研究活動もあります。

うーん、ヤバい。
そこを潜り抜けてきたタフガイがこの年代なんです。
結果、マネジメント能力もついている方も多いのでは。

一方家のこと家事育児にも追われるのもこの世代。
その多くが時間的辛さを感じているのではないかと推察します(私はそうですw)。

40代前後は次世代のリーダーとして期待される一方、上が蓋をしている場合もあり、立場的な辛さを感じている方も多いことでしょう。

何より40代未満が会員の70%を占め、前述のように40代以上の理学療法士の絶対数が少ないため、そもそも指導的立場・プレイングマネージャーとしていて欲しいその年代が組織にいない/不足しているケースも多々あることが予想されます。

理学療法士の年代別割合
(日本理学療法士協会HP統計情報 https://www.japanpt.or.jp/activity/data/ 記載データより作成)

このグラフみると一目瞭然ですね。
数少ない中堅が大量の若手を支えている姿がありありと目に浮かびます。

また、これは組織の中に組織の教育統括や次世代のマネージャーが不在もしくは育っていない(育てていない)という状態になっていることも示唆しています。

これは組織として非常に脆弱で、自転車操業にも近い感じになります。

40代前後の方々はおそらく多大な残業などでこのギャップを埋めているはずです。また家事や育児などもあり、色々なことを諦めている方もいるでしょう。
うん、つらい。

この状態で若手の教育までして下さいというのはかなり酷な話かもしれません。

そもそもPTは単位制があり自分も単位を取っていかないといけない中、いつ新人他の教育をするのか問題はなかなか解決できないところ。

すると新人は一部の勝手に学んで成長するタイプ以外がほっとかれて道を見失いやすいのではないでしょうか。そして組織への感謝も薄いと思われます。

そうすると、何かあると辞めますよね。
理学療法士協会の新規会員にならないのも、上からメリットが伝えられてない場合も多いことは少なからず関係するでしょう。

つばさ-Oさんにコメントをいただき、POSについて軽く調べました。

うん、これですよね。ここを供給できる(余裕のある)人材がいない。

このように考えてみると、協会の目指す「ジェネラリストの育成」などはちょっと夢物語なのかもって思えてきます。少なくとも現段階では、ですが。

もちろん目標はあった方がいいに決まっていますし、個人的にもそうであればいいなあとは思います。

ただ、そこまでのロードマップが「こうしたいからそうなってほしい!」では困ります。

現状の問題点把握を行い、それを解決する手段を同時に講じる必要はありますね。

まあそんなことを考えて、こんな投稿をしてみました。

この現状を解決するために先に繋がりそうな話も考えているので、ご興味ある方はコメントや連絡くださいませ。

それでは。

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