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【感想】NHK BSプレミアム『星新一の不思議な不思議な短編ドラマ』第1話とバカリズム脚本ドラマ『ノンレムの窓』

ショートショートの神様、星新一。
1,000を超える作品群から選りすぐりの20話が実写化。
特筆すべきはそれを彩る豪華キャスト。

ただ、それに隠れ気味だがスタッフも負けず劣らずの腕利き。
実はNHKが星新一のショートショートを実写化するのは今回が初ではない。
2007年から2010年に『星新一ショートショート』というド直球なタイトルのドラマが放送されていた。
2009年には国際エミー賞でコメディ部門最優秀作品賞を獲得。

近年で国際エミー賞のドラマ部門最優秀作品賞を獲得した作品にはNetflixで大ヒットした『ペーパー・ハウス』やApple TV+の『テヘラン』が名を連ねており、部門の違いはあれどそれなりに権威ある賞である。

今回の『星新一の不思議な不思議な短編ドラマ』にはその『星新一のショートショート』のスタッフが再集結。
つまり豪華キャスト×国際エミー賞獲得スタッフという座組み。
期待するなと言うのが無理だw

第1話は『ボッコちゃん』

自選作品集のタイトルにも据えられているぐらい有名な1本。

ドラマ版もストーリーの大筋は原作通りで、ラストに少し改変が加えられている。
(原作ではラジオから聴こえてきたある言葉にボッコちゃんが反応した場面で終了)
原作では何が起きたかを明記せず読者に能動的に想像させていたのをドラマでは映像で見せて分かりやすく。
ボッコちゃんの最後の台詞は星新一が避けていた時代性(今回ならAIやテクノロジー)を帯びたように聞こえなくもない。
この辺りは原作への思い入れ次第で賛否が分かれそう。
個人的には

  1. 映像メディアへの変換は必須(原作そのままなら映像なんて見ずに小説を読めばいいので)

  2. 人間と機械の支配関係のメタファーになっていて今やる意義に繋がっている。

といった点から賛です。

味わいとしてはフジテレビで改編期の風物詩となっている『世にも奇妙な物語』もしくは海外ドラマならNetflixで配信中の『ブラック・ミラー』に近いか。

まぁ後者は藤子・F・不二雄のSF(すこし・ふしぎ)の方が近いかなぁと書いたところで、そもそも僕は「世にも奇妙なドラえもん」という触れ込みでこの作品を知ったのを思い出したw

第1話のメインキャストは水原希子と古舘寛治。
古舘寛治は言わずもがな、水原希子も無表情・無感情のロボットをしっかり演じていた。
(たまに演技の拙さを補う手段として感情をあまり表に出さないキャラクターにするというのがあるが、これはさらにその先の無なので演技が下手では務まらない)
奇しくもレオス・カラックスの新作『アネット』に出演中の2人。

あれは変な映画だったなぁw
摩訶不思議な世界に迷い込んだ140分。
レオス・カラックスのロングロング。

美術の仕事も素晴らしかった。
15分の短編のためにあれだけのセットを作るとは。
ワンシチュエーションものではないので画面に映る時間はものによっては数分。
そしてオムニバスということは第2話以降は使い回せない。
(連ドラなら例えば主人公の職場や自宅は何回も出てくるのでセットを作り、一度きりのシーンはロケで済ますのが常套手段)
あそこに金かけられるのはさすが全国民加入型サブスク a.k.a. NHK。

放送は8月まで続くそうで、残りは19話。
ちなみに個人的には豪華キャストの中になぜか唐突に放り込まれたコウメ太夫がお笑いファンとしてめちゃくちゃ楽しみw

あ、そういえば感想ツイートにURLを貼り忘れたけど、NHKオンデマンドに見逃し配信あります。

で、実は(?)今週はもう1つ『世にも奇妙な物語』と近いテイストの短編オムニバスドラマが放送されていた。
それがバカリズム脚本の『ノンレムの窓』

これは「世にも奇妙みたいな感じで」と企画が通ってバカリに発注が行ったのではなくかというぐらい世にも奇妙テイストだったw
1本目の『私達の恋』は『もうひとり』『倦怠期特効薬』と被っていて「ありゃ?これは二番煎じの期待外れな感じか…?」と不安に。
(なので『私達の恋』は個人的には低評価)

え、てか『倦怠期特効薬』ってリアルタイムで見た記憶あるんだけど放送されたの20年以上前なの!?

でも2本目の『解約ゲーム』で巻き返し。
自分もサブスク複数加入で常に「これは今月末で一旦解約」というリマインダーと共に暮らしているので身に染みるw
勤務先もウェブ系のIT企業なので退会・解約を何とかして少しでも減らすように努力している部署のことも多少は知っている。
だからこそあり得ない方法の解約防止策に思わず笑ってしまったw

3本目の『カスタマイズ』は完全に松岡茉優という稀代の女優が持っていった。
スタバのアレって散々ネタにされてきた印象だけど(つまり着眼点そのものが斬新というわけではない)意外にこういう映像作品にはなってなかったのか。
『勝手にふるえてろ』の怪演を彷彿とさせる見事な芸達者ぶりだった。
そういえば『勝手にふるえてろ』の大九明子監督×バカリズム脚本の映画『ウェディング・ハイ』も良かったなぁ。

それにしてもバカリズム最近めちゃくちゃ脚本の仕事やってるよなー

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