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【雑記】TBSドラマ『ドラゴン桜』シーズン2最終回 あるいは(良い青春映画の条件)

シーズン2自体は途中で離脱してしまったのだが、最終回放送日の朝にシーズン1の生徒がゲスト出演するというリークが出ており、録画でその部分だけ見た。

『攻殻機動隊 S.A.C.』シリーズで知られる神山健治監督は著書の中でこう言っている。

 では、その時の僕は『スティング』の何に“映画”的なるものを感じたのだろうか。そこに映画の正体についての原点が隠されている気がするので、まずはそのあたりをあらためて振り返ってみたいと思う。
 思い返すに、一つは「この物語に登場する人物たちとは、この映画が終わったらもう二度と会えない」という感慨と「だがフィルムの中には彼らの姿が永遠に焼き付けられている」という憧憬だったのではないかと考えている。それをもっと端的にいえば、「物語から受けた感動に、不可逆性と永遠性を感じた」ということだろうか。
(中略)
 それは『スター・ウォーズ エピソード4』にも共通しているところではあるのだが、その想いが崩れてしまったのは、2年後に続編が制作されてしまったことに尽きる。続編が制作されることで、映画の中以外での彼ら(登場人物)の姿を具体的に見せられてしまい、確かに劇外にも存在し続けていたであろう(僕だけの)彼らが、公式に別の彼らとして再び僕の前に現れてしまったことで、『スター・ウォーズ エピソード4』における永遠性がその時点で損なわれてしまったということなのだ。

2005年夏のシーズン1放送当時はまさに高校3年生で受験生だった。
だから龍山高校特進クラスの生徒6人への思い入れは強い。
シーズン2最終回に全員がゲスト出演すると聞き、その出方次第では僕の大切なシーズン1における永遠性が損なわれる危険を察知した。
そう、未来が過去に影響することもあるのだ。
我々はそのことを『ゴジラ S.P<シンギュラポイント>』を見て学んだばかりである。

また、ライムスター宇多丸は映画『ちはやふる』評の中で「あいつら」という表現を用いてこう言及している。

青春映画においてはやっぱりこのね、「あいつら」っていうのがたしかにそこにいて、その時間を過ごしたんだという実在感。これが本当に大事なんですね。

だからこそ、「あいつらにまた会いたい、あいつら、どうしてるかな?」っていう、この考えが起きる。その意味で、今回は若い役者さん同士のアンサンブル。相性も含めてですね、もちろんそれを生かすように確かな演出をしていることも含めですね、これが最高にうまく行っているんではないかと思います。

だからこそ同時にこういうことも起こり得る。

『上の句』で高まりきった期待、『上の句』のこういうところがよかったよなっていうのを胸に、そういう期待している部分からするとですね、かなり……特に前半部。違和感を覚えざるを得なかった。特に初見は。

要は、こんな感じ。「またあいつらに会いてえよ! あいつらに会える!」って楽しみにしていたのに、実際に会ってみたらその友達は前とちょっと変わっちゃっている。「あれっ、こんなやつだったっけ?」みたいな感じ。そういう違和感を覚えざるを得なかった。それはまさにちょうど、この本作の物語の冒頭部分そのまま。あれほど再会したいと思っていた、<元トモ>ですよね。元トモに会ってみたら、「あれっ、なんか……変わっちゃった?」っていう、そういう話。

個人的には2019年に13年ぶりの続編が放送された『まだ結婚できない男』は「あれ?」となってしまった作品だった(奇しくも阿部寛主演)
・早坂先生(夏川結衣)と別れちゃったのか…
・英治(塚本高史)と沙織(さくら)は破局しちゃったのか…(まぁこれはさくらが芸能界を引退したという大人の事情もあるけど)
・沢崎さん(高島礼子)とはもう一緒に仕事してないのか…
etc.

もし龍山高校特進クラスの生徒と16年ぶりに再会して「あれ?」となったらショックだろうなぁと、ストーリーとは全く関係ないところでドキドキしながら最終回の録画を見たw

各々の近況報告は割とあっさり。
そもそも出演シーンがゲスト枠なのでかなり短め。
いや、これぐらいが粋だ。
みんな立派に社会人生活を送っているようである。
再会の時間は短かったけど“あいつら”は元気そうだった。
最終回を見た限りだが、矢島と香坂に至っては何の仕事をしているのか・具体的にどういう形で協力していたのかもよく分からないし、何か伏線が張られていたわけではなく後出しジャンケン的な登場だったようだ。
だが、それでいいのだ ©バカボンのパパ
○年越しの伏線回収なんてのを(本作に限らず)もてはやす向きもあるが、そもそも人生において伏線なんてものは回収されないぐらいがちょうどいいのである。
ギリギリ何とか僕の中で永遠性が損なわれることはなかった。

最近だとドラマ『コントが始まる』なんかもこの条件を満たしてくれそうな青春ドラマだった。
(これは「続編期待!」みたいな話とは全く別物です。念のため)

『ドラゴン桜』シーズン2が現役高校生のみなさんにとってそういうドラマになってくれることを願ってやみません。

あ、最後にもう一つ。



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