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【感想】劇場映画『ザ・クリエイター/創造者』
それにしても『シン・ウルトラマン』そっくりな日本版ポスターである。
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ちなみに海外版を元にしたデザインはこちら。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/119166242/picture_pc_5eb127040a1e5d9e19992cb125ae8161.png?width=800)
どことなく『アフター・ヤン』を彷彿とさせるような静かで落ち着いたテイスト。
さて、そんな(?)本作の監督は我らがギャレス・エドワーズ。
大の親日家(身も蓋もない言い方をするなら日本のポップカルチャーを愛するオタク)として知られており、日本版ポスターも庵野秀明オマージュ?と勘繰りたいところだが、さすがに日本の宣伝担当の仕事だろうw
今作でも『攻殻機動隊』の義体・電脳や『AKIRA』のような巨大な力を秘めた子供といった描写が出てくる。
そういえば『AKIRA』は『ストレンジャー・シングス』や『NOPE/ノープ』にも影響を与えていますね。
ギャレス・エドワーズの過去作で個人的に最も思い入れがあるのはやはり2014年公開のハリウッド版ゴジラ。
GODZILLA/ゴジラ:TOHOシネマズ天神の最速上映回で早速鑑賞。渡辺謙の役名!原子力も真正面から。基本構成は平成VSシリーズだけどゴジラの位置付けはガメラっぽい?個人的に「怪獣映画は巻き込まれる人類側の視点を描いてこそ」と思っているのでそこも好印象。欲を言えば音楽かな〜
— 林昌弘,Masahiro Hayashi (@masahiro884) July 24, 2014
当時福岡まで飛んだのが懐かしい。
今作も記録映像風のコラージュで始まりニヤニヤ。
↑こんな感じの実際のものっぽい昔風味の映像を繋いでいくアレ
アルフィー(マデリン・ユナ・ヴォイルズ)の電気を無効化するパワーも『GODZILLA/ゴジラ』に出てきた敵怪獣のムートーからのセルフ引用。
電気が徐々に復旧するケレン味a.k.a.映画的ウソも健在。
現実ではこんな「ポン、ポン、ポン」なんて順番に点灯せず、どう考えても一斉に電気がつくに決まっているw
そして2年後の2016年には前述のポスターでも謳われているようにスター・ウォーズのスピンオフ映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』の監督に抜擢。
ところが、この制作過程が思わぬ形で壮絶なデスマーチになる。
編集作業が難航した上に試写でのディズニー幹部の反応が芳しくなかったのを受けてトニー・ギルロイが招聘されて再撮影を敢行することに。
ちなみにそのトニー・ギルロイが手がけたのが2022年に配信されたドラマ『キャシアン・アンドー』
2016年の映画公開当時このゴタゴタは既に報道されており、それもあって「実質的な監督はトニー・ギルロイ」とまで言われてしまいギャレス・エドワーズにとっては苦い経験となった。
それが影響してか巨大フランチャイズを離れた完全オリジナル脚本の新作が届くまでに7年を要することに。
ゴジラとスター・ウォーズを立て続けに撮ったヒットメイカーから一転、ちょっと地味だし予算規模も縮小されている。
制作発表時は正直「大丈夫なのだろうか…」という心配もあった
しかし、出来上がった作品は心底素晴らしい傑作SF映画。
物語は古典中の古典である人類とAIの戦争。
生成AIの出現と仕事が奪われる系の話題もあって現実世界ではめちゃくちゃホットだが、SF的には「もう見飽きたぞ」というレベルの題材。
ただ、ここに西側諸国vs.アジア諸国という構図を持ち込んで人類vs.AIという単純な図式を覆したのが見事。
ロサンゼルスの核爆発をきっかけにAI撲滅を掲げる西側諸国とAIとの共存を図るアジア諸国という構図。
現実ではGAFAやOpenAIを筆頭に世界のAI開発をリードするアメリカが悪として描かれているのが新鮮。
ニューアジアの方は現実なら中国がAI開発の対抗馬になるわけだが、本作ではタイやベトナムといった東南アジアをベースとした舞台設定。
ちなみに都市部の撮影では我らが渋谷でもロケが実施されている。
ニューアジア都市部の世界観は完全に『ブレードランナー』w
漢字・ひらがな・カタカナが画面に。
「強力わかもと」は無いが今回は「龍角散ダイレクト」の看板がw
「AIを支配するか共存するか」という命題は西洋思想と東洋思想の批評・比較でもある(個人的には中学生だか高校生だかの頃に国語の授業で読んだ『水の東西』という評論文を思い出したw)
西側諸国の政治的思惑によって戦争が起きているまさに現代への社会批評性も兼ね備えており、非常に強度のある脚本。
さらに本作を傑作たらしめている要素は何と言っても圧巻のビジュアルセンス。
美術と撮影。
全編あまりにも美しい。
撮影監督は『DUNE/デューン 砂の惑星』『THE BATMAN-ザ・バットマンー』を撮ったグレイグ・フレイザー。
エンドロールで知って声上げそうになったw
この人なら壮大なショットも暗いショットもお手のものである。
夕日もしくは朝日を背景にした引きの画はもう至福の時間。
贅沢な引きの構図だけでなく戦争映画のようなシーンも多い。
これは『ローグ・ワン』の“撮り直し”といった側面もあるように思う。
手持ちカメラや主観ショットの採用といった工夫の数々は、現代の戦争映画の手法で『スター・ウォーズ』を撮るという試みにほかならなかった。
(中略)
まさに戦争映画を作り上げるようにして、ギャレス監督は撮影を進めていったことが関係者の口から明かされている。
ストーリー上のテーマ的にも映像表現的にも今度こそ絶対にベトナム戦争を描きたかったのだろうなと。
そのシークエンスの中に、感謝の言葉を述べてから自爆するドロイドじゃなくてロボットや森の奥から巨大な何かが来る…?というスター・ウォーズやゴジラ(怪獣映画)のエッセンスを忘れないのもさすがw
美術・衣装のスタッフも歴代SF映画から手練れを集めて抜かりなし。
(全体的にドゥニ・ヴィルヌーヴ組で仕事してきた人が多め?)
ノマドやAI搭載ロボットのデザインとか何ですかありゃ。
ずっと見ていられる。最高。
SF映画はビジュアルが良ければその時点で100点出ちゃうよなw
劇伴を大御所も大御所のハンス・ジマーが手がけているとか往年のポップソングを多数引用した前半の選曲とか他にも語りどころはあるのだけど今日はこの辺で。
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