【感想】日テレ土曜ドラマ『初恋の悪魔』最終話
前作『大豆田とわ子と三人の元夫』ではご乱心としか思えない(※褒めてます)全体構成を見せた脚本家・坂元裕二。
全10話なのに第9話でほぼ全ての風呂敷を綺麗に畳んでしまい、なんと最終回で新たな話を始めるというw
今作『初恋の悪魔』ではラスト3分で事件の真相が明らかになるどんでん返しと森園(安田顕)がハサミで刺されるというクリフハンガーで終わった第9話。
どうなっちゃうの!?と視聴者は1週間やきもきしたが、事件は序盤であっさり解決。
よく考えれば本作は誰か死んだかもしれないと匂わせる結末で翌週には特にそれに触れないという手を何度か使ってきた。
第4話、署長(伊藤英明)が階段から落下→第5話の開始数分で朝飯を食べているw
第7話、さっきまで森園と会っていた署長が涙ながらに「大丈夫。何とか片付いたよ」と誰かに電話するシーンで幕→森園は第8話に普通に登場w
事件が解決した残り約40分は後日談というか、まさに『花束みたいな恋をした』『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』のようなラブストーリーに一気に舵を切っていく。
やはり(?)坂元裕二はいわゆる典型的なミステリー作劇には最初から興味が無かった、もしくは脚本を書く過程でラブストーリーに焦点を絞ったのだと思う。
それは初回放送後の感想で自分も述べたし多くの人も言っていた「ドラマ考察という風潮へのアイロニー」のようでもある。
あれだけミステリーで視聴者を惹きつけておきながらそこはメインディッシュではなかったのだから。
正気の沙汰で書ける脚本ではないw
本作は鹿浜(林遣都)の物語だったということが浮かび上がる終盤。
4人(5人)いた主人公たちの内の2人(3人)が不在のラストシークエンス。
美しくて切ない夜の公園。
ここで最終回のハイライトの1つである小洗(田中裕子)のこの台詞が効いてくる。
坂元裕二作品で繰り返し語られてきたメッセージ。
他にも『それでも、生きてゆく』『カルテット』に続きナポリタンを食べる満島ひかりだとか、最後に星砂が振り返らずに手を振るシーンは『花束みたいな恋をした』のラストからのセルフ引用だとかイースターエッグ的な要素には事欠かない。
ちなみに第9回自宅捜査会議で扱われる「野球場で試合中に審判が倒れた。後頭部には殴られた傷があった。誰も彼には近付いていないのに」という事件概要は先週の裏番組だった『ガリレオ 禁断の魔術』と似ている。
さすがに深読みしすぎかw
こうして全話を見終えて総括的に振り返ると間違いなく坂元裕二作品だったわけだが、同時に自分としては特に第1部(第1〜5話)の演出と脚本の噛み合わなさがより一層惜しいと思えてくる。
前作『大豆田とわ子と三人の元夫』が初っ端から伊藤沙莉のナレーションにオレンジを基調とした色彩設計で第1話から見事なルックだったのに対して、本作は正直そのレベルには及ばなかったと思う。
背景を少々ぼかしすぎな撮影(実質的に役者しか映らないので美術が効いてこない)
美術と衣装(これは同時期に『石子と羽男』が放送されて無意識に比べてしまったのもある)
静止画を連続で見せるのであればそれこそ『シン・エヴァンゲリオン劇場版』と同様に実相寺昭雄アングルばりのキメキメの構図が必要(第9話)
ただ、じゃあスタッフの力不足なのかというと終盤は良くなってきていたから決してそんなことはない。
特に最終回の星砂と小洗が会話するシーンの、カメラが横スクロール移動するとガラスに映った2人の姿で会話を見せるというシークエンスはとても良かった。
ああいうショットもっとあっても良かったのでは?と思うが、もしかしたら演出陣もこのアクロバティックな脚本にチューニングを合わせる必要があったのかもしれない。
特に第1部はマーヤのベールを剥ぎ取った後の見せ方にかなり注力していたように思うし。
難しい。
自分も含めて坂元裕二ファンでも第1話はピンと来なかったという人は結構いると思うんですよね。
それでも終盤に向けて右肩上がりにどんどん面白くなってきたのはさすが。
次回作はついさっきTUDUM Japanでも紹介されたNetflix映画『クレイジークルーズ』
群像劇コメディみたいな感じなのかな?
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