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【感想】FXドラマ『SHOGUN 将軍』第1・2話

真田広之がプロデューサー兼主演を務める時代劇ドラマがDisney+で配信される。
そんな第一報が出たのが昨年11月。

日本のテレビ局が介在しないDisney+オリジナル作品という点で最初は『ガンニバル』を思い浮かべたのだが、よくよく見ると実は似て非なる座組み。

『SHOGUN 将軍』は日本の俳優は多数出演しているものの、あくまで純然たるFX製作の海外ドラマ。
その証拠と言っては何だが、アメリカではHuluで配信されている(いわゆるFX on Hulu)

FX’s Shōgun 将軍. New episodes Tuesdays on Hulu in the U.S., Disney+ internationally and Star+ in Latin America.

https://x.com/shogunfx

つまりは昨年度のエミー賞のコメディ部門を制した『一流シェフのファミリーレストラン』なんかと同じ立ち位置。

FXのドラマを日本“でも”配信という形の逆輸入である。
キャッチコピーの「ハリウッドが本気で描く」もそういうこと。

そんな本作の舞台は戦国時代の日本。
1600年という関ヶ原の戦いの直前。
ただし、史実を描いているわけではなく登場人物は徳川家康や石田三成ら実在の人物に着想を得た架空のキャラクターになっている。

あくまで"inspired by"

名前も変わってるので「もしも徳川家康が◯◯だったら」のような歴史改変SFでもない。

日本では2023年はなぜか家康が登場する作品が豊作だった。
まずはやはり大河ドラマ『どうする家康』

大友啓史監督の『レジェンド&バタフライ』

北野武監督の『首』

僕はどれも程度の差はあれ楽しんだけど、やはり本作を観た後では「2023年にやっといて良かったね…」とは思ってしまう。
さすがに比較すると映像のクオリティは敵うべくもない。

海外ドラマということもあって撮影・照明の陰影が非常に効いている。
もちろん美術や衣装の予算も凄そうなわけだが、やはり画面のトーンが段違い。
一部には「ゲーム・オブ・スローンズ並みの予算」なんて報道もあるがどうなんだろ?
さすがにGoT規模はなかなか難しい気もするが…
とはいえ少なくともFX作品としては過去最大規模だそうで。

具体的な金額は明かされていないものの、FXにとっては、創業以来、最高の予算を投じた大規模プロジェクトだ。

https://toyokeizai.net/articles/-/736649

そんな圧倒的な映像の上で繰り広げられる作劇はかなり独特。
まず序盤からナレーションによる説明は非常に少なく「ついてこれない人は置いていきますんで」と言わんばかりのスピーディーな台詞回し。
説明的な台詞もほとんど無い。
※もちろんこれはジョン・ブラックソーン/按針(コズモ・ジャーヴィス)の視点から何か得体の知れない陰謀に巻き込まれたというスリラーを描くためでもある。

そういった意味で本作と最も近い邦画は原田眞人監督の『関ヶ原』なんじゃないだろうか。

『関ヶ原』を観て「よく分からなかった」となった人はもしかすると本作も合わないかもしれない。
個人的には原田眞人作品の常連であり本作でも石堂和成 inspired by 石田三成を演じる平岳大の進言なんじゃないかなーなんて妄想もしてしまうw

そういえば平岳大と戸田鞠子役のアンナ・サワイは『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』に続く共演ですね。

そんなわけで何やらよく分からないが主人公の虎永(真田広之)が処刑されると決まったらしいところから第1話はスタート。
激動の時代(正確にはその前夜)に放り込まれた感。

さらに視聴者を混乱の中に引き込み、かつ本作を今まで作られてきた日本の時代劇と一線を画するものに仕上げているのがジョン・ブラックソーン/按針(コズモ・ジャーヴィス)の存在。
最初はスコセッシの『沈黙 サイレンス』のような話になるのかと思ったが、これが思わぬ形で政治サスペンスに繋がっていく。

肝は当時のヨーロッパで勃発していたカトリックとプロテスタントの対立。
これが文字通り巡り巡って吉井虎永(真田広之)と石堂和成(平岳大)の間の駆け引きの材料になる。
この発想は日本人クリエイターからはなかなか難しいだろうなぁ。
日本はどうしても「キリスト教」と一括りで認識している人が多いだろうし。
第2話を観ていて思わず唸ってしまった。

『ゲーム・オブ・スローンズ』と比較してみたくなるところだが、どうやら監督のジョナサン・ヴァン・トゥルレケンはまた別の作品を思い浮かべているようで。

「この作品はキャラクターピースであり、陰謀を描いた物語です。暴力がどこからともなく起きる危険な世界ですが、真の危険は策略にあります。会話は何よりも危険なものです。(『ゲーム・オブ・スローンズ』よりも)『メディア王~華麗なる一族~ 』や『ハウス・オブ・カード 野望の階段』の方が、良い比較対象でしょう。」

https://theriver.jp/shogun-succession-hoc/

日本の作品だと『鎌倉殿の13人』とか?
(三谷幸喜はGoTを参考にしたと言っていたけど)

政治サスペンスであり一旦は乱世が落ち着いた時代が舞台なので今のところ合戦シーンは無し。
クライマックスが関ヶ原の戦いになるなら大規模な合戦シーンが見られるのだろうか?
それとも前述の監督の発言通りスリリングな会話劇で貫き通すのだろうか?
あくまで史実を基にしたフィクション(本来は大河ドラマもそうなのだけど視聴者の認識が追いついてない面あり)だから想像外の飛躍もあり得る。

4/23(火)まで残り8話楽しみ。

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