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「天城山からの手紙 60話」


森には、過酷な場所へ命を宿した者、逆に最高な条件の場所に命授かる者がいる。それぞれに待ち受ける運命は、千差万別だが、命あるその場所で命繋ぐために生き抜かなければいけない事実は、変わらない。そして、命あるものは必ず終わりが来るという自然のルールを、すべての者が受け入れる。森を歩きながら、そんな事を考えていると、とても寂しくなる時がある。しかし、”時間”は流れ、決して止まらないのだから仕方がない。時間に形があれば、捕まえてしまいたいと思うのだが、いくら手を伸ばしても手元に置いておけないのだ。例えば、時計を見れば時が進んでいると目では確認できるし、正月が過ぎれば1年また過ぎたと記録が時間を形にする。今年の秋、私は久しぶりに行った渓谷で時間という無形を、自分だけの形で確認することが出来た。毎年、たくさんの氷の造形を作る小さな滝があるのだが、今年そこには一滴の水も流れていなかった。もう、過去に何度も氷の芸術を見せてくれたのに、もう見れない。いつも見ていた渓谷の流れが、ある日突然変わってしまう・・なんとも心にぽっかりと穴が開いたようで力が抜ける。そういえば、ここには来たのは2年ぶりだなと思うと、これが2年という時間の形だとはっと気づく。そうすると、目に入るものすべてが時間の結果が作る形・・・私達は、同じ時間の中に生きている事だけでもしかしたら平等なのかもしれない。時間は止まらない。今、この瞬間も動いている・・・さて、また森にでも出発しようか。


掲載写真 題名:「時間の形」
撮影地:本谷川
カメラ: Canon EOS 5DS R EF16-35mm f/4L IS USM
撮影データ:焦点距離16mm F5.6 SS 1/80sec ISO800 WB太陽光 モードAV日付:2017年1月16日 AM9:05



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