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「天城山からの手紙」1回目

まだ見ぬ姿を求めて今日も暗闇に一歩踏み出す。その場所は伊豆に鎮座する天城連山。あまり知られていないが、全国でも珍しい橅(ブナ)が生き残っている貴重な森である。今回からそんな天城山にスポットをあて、たくさんの物語を写真と一緒にお伝えして行きたい。
この日は風速7m気温-15℃という伊豆では信じられない冬の日。天城連山越しから見える、朝日を求めて、達磨山に向かっていた。山頂に着くと、吹き付ける猛烈な風は急速に体温を奪っていき、バックから三脚すべての物を氷に包んでいく。そして闇夜が明けてくると、稜線の向こう側から赤い光がうっすらと差し始めた。何とも言えない異様なその光は、恐怖の中へ私を押し込んで行く。しかし、笹の音、鳥の声、森に住む者達の歌が、風に乗って聞こえてくると、溢れ出るその光は、途端に安らぎを灯し始めた。そう、風に乗って聞こえて来た歌声は、暖光を喜ぶ歓喜の声だったのである。そして、夜明けの光が差す時、それはまさに、生きる者に、安堵を与え、命を灯す瞬間なのだろう。

追記)

この日は、絶対に忘れない。暴風と言っていいほどの風が、西伊豆の下界から雲の塊を引き連れ、私のもろとも吹き抜けていった。そして、朝日が昇るその時、目の前は奇跡ともいえる光景が、連なり過ぎ去っていく。まるで自然と一体になったかのように特別な時間は流れていった。一体いくつの奇跡が目の前で起こったのだろうか?今振り返れば、この日がなければ、私は天城の山に飲み込まれていたかもしれない。写真集の1枚目は、この時の奇跡の出会いに決めている。

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掲載写真 題名:「命灯す、火」
撮影地:達磨山 
カメラ:Canon EOS5Dmark3 EF70-200mmF2.8 IS Ⅱ 
撮影データ:焦点距離70mm F10 SS 1sec ISO200 WB太陽光 モードM
日付:2014年1月28日AM6:01

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