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[第23節_富山vs琉球] ‐ GAME2のターニングポイント -[21/2/27,28]

※サムネイルはGAME2の数字。

第23節。富山対琉球の試合はGAME1を85-67で富山が、GAME2を76-85で琉球が取り、1勝1敗の痛み分けとなった。

2試合とも序盤に琉球がリードする形だったが、GAME1ではそこから富山がすぐにリードを奪ってそのまま勝利。
しかし、GAME2では富山は逆転できず、琉球が終始リードを保って勝利した。

この違いは一体何だったのか?

GAME2では琉球のDF強度の修正が要因としては挙げられるが、特にある“ターニングポイント”でのプレーが勝負の明暗を分けた。
今回はこれらについて解説していきたい。


【GAME1】

26  1Q  20
17  2Q  12
24  3Q  17
18  4Q  18
富山  85   F    67  琉球


1Q _富山はなぜすぐに逆転できたか?

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富山は序盤の3分間で並里選手のP&Rを絡めた攻撃から失点をし、3-9のスタートとなったが、終わってみれば26-20とすぐに逆転した。

この序盤の9失点はどちらかというと、"9点分を捨てながら琉球の引き出しを観察していた" 印象だ。

松脇選手は並里を観察しながら、彼がミドルシュートに自信を持っていることや、どれくらい自分がプレッシャーを掛けられるか等の間合いを図った後、ファイトオーバーで対応する判断をした。(彼はDF面ではかなり頭が良い)
スクリーンをかいくぐり、並里と常にゼロ距離を保ってプレッシャーを掛ける対応だ。

さらにこの日の琉球のP&Rの多くは、PGがドリブルした状態からスクリナーをトップへ呼んで始める形だ。
富山はこれの対応を非常に得意としている。

松脇が並里のP&Rに早々に適応し、琉球が並里選手から決定的なズレを作れなくなるとこの富山の持ち前のDFが機能し、9失点した出だしの2分30秒から一転、その後の5分間で2失点に抑え込んだ。


さらに3得点に留まったオフェンスに関しても、富山は各選手のオプションを試しながらどこが良いかを探っていた。
点は取れずともこの時点で既に3つファールをもらえていたし、ターンオーバーも起こらず各自が自分のシュートで終われていたため、スコアほど富山は焦っていなかった。
(最近の富山は相手にファールを付けながら、こういう先を見越した様子見の入りをする傾向がある)

開始2分で田代選手が2ファールでベンチに下がったことも相まって、宇都選手の所が相手に効いているとわかると彼にボールを集め、富山は得点ペースを上げていく。

琉球のスコアが2点に留まっている間に12点を積み上げ、15-11まで戦況を変えた。
こうして3-9から始まった1Qは26-20で終了した。


2Q _2点差から再び11点差へ。その理由は?

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富山はマブンガ・岡田・水戸・橋本・ソロモンのビッグラインナップで挑むが、クォーター最初のセットオフェンスは決めたものの、以降の約3分間ではFGが0に留まった。
ソロモン・橋本がポストの1on1を決めきれず、2-3ゾーンも細かいミスが生じて29-27と1ゴール差に詰められてしまった。

残り7分18秒に浜口HCはこの体制を解除し、ポストの1on1をシンプルにスミスに任せ、DFをマンツーに戻すとこれが成功した。

多くのチームがスミス選手のポストアップをダブルチームで対応する。

ダブルチームを仕掛けて1on1を始めさせず、そこからのパスアウトは変則的なローテーションで守り、あわよくばパスカットを狙う。
もしくはポストへの配給役へプレッシャーを掛けてパスをさせないようにする方法もある。

スミス選手の1on1を止めるのではなく、そもそも始めさせないのが基本的な富山対策マニュアルである。

しかし琉球は富山の1on1を真に受けてしまっていた。
スミス選手のポスト1on1を受けて立ち、そこへのパスも特に邪魔をしない。
宇都選手のドライブやミスマッチを突いたポストの1on1に対しても特にDFがペイント内へ収縮するでもなく、気持ちよく彼らにプレーさせてしまっていた。

確かに琉球のクーリー選手は過去のスミスの1on1を見ていても比較的押し負けていない印象だったが、「他チームのセンターよりは」というレベルの話で単独で抑えられるわけでは決してなかった。
クーリー選手であってもさすがにサシでは相手が悪い。

さらに意外と警戒するチームが多くない印象だが宇都選手のポストアップも要注意である。
ガードポジションのサイズのミスマッチはもちろんだが、彼はシンプルに1on1スキルが高く、同じ190cm近いサイズの日本人フォワードが相手でもシュートを決めていく。
今回は田代選手(188cm)今村選手(191cm)らがやられていたが、田代選手は過去にもやられており、他に名古屋の中東選手(191cm)なども彼のポストプレーにはやられている。

DFに関しては1Qに十分通用していたマンツーに戻し、同じように守り、同じように抑えた。
琉球はP&Rを防がれ、ファールトラブルなどもあり、焦りやリズムの悪さからたまに空くシュートもことごとく入らない。

これによって富山は琉球を突き放し、43-32と2桁リードで後半へ。


3Q_小さい選手が背負うディスアドバンテージ

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アメリカ、NBAのバスケットボールはフィジカルコンタクトが激しいイメージがあるが、実は意外と彼らのDFはクリーンである。
というのも彼らは一度オフェンダーに抜かれ並走する形になった時、横から腕を使うことはあまりせず、リングへのコースを譲るのだ。

そして、レイアップをブロックする狙いにシフトチェンジする。

【フェーズ1_ペイント外】抜かれないように守る平面での勝負。
【フェーズ2_ペイント内】抜かれた後のシュート時の空中戦。

これがバスケット先進国のDFの考え方である。

しかし、小柄な選手にフェーズ2は存在しない。
ブロックできるチャンスが無い小柄な選手はフェーズ1で止めきれなければ終わりなのである。(相手が持ったボールを下から叩くなどはあるが)

バスケットボールにおいて、サイズの無い選手はこのデメリットを埋め合わせるだけの強靭なクイックネスor得点力を持っていなければならないのだ。

故に岸本・並里らを起用する琉球は、サイズのある富山に相手にするとペイントアタックを許せば即失点というリスクを常に抱えることになる。

宇都・松脇・前田のポストアップは勿論だが、水戸選手のペイント内へカッティングするセットオフェンスなどは琉球には効果てきめんで、通常のマンツーマンDFではかなり分が悪い。

そのため琉球はゾーン、もしくは変則的なマンツーマンDFなどでこういった富山の1on1を避けなくてはならない。

3Q残り3分にようやくこの試合初めてのゾーンをしたがタイミングが悪かった。
この時すでに19点差がついており、富山の面々は伸び伸びとプレーできている状況。
このゾーンDFの一発目に松脇選手にディープスリーを決められ3Qで勝負あり。

琉球は平均73失点のところを85失点し、オフェンスも平均81得点を大きく下回る67得点とオフェンスが完全に沈黙。

琉球側としてはディフェンスは富山の1on1を真に受けないこと、オフェンスでは岸本・並里のP&R以外のオプションで起点を作りたい内容だった。

そして、GAME2で琉球はこれらを見事に修正してくる。

【GAME2】

 8   1Q  25
21  2Q  21
22  3Q  22
25  4Q  17
富山  76  F  85  琉球

1Q_富山のFG%が8.3%に留まった理由

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この日の第1クォーターはビッグクォーターとなった。

この日も出だし3分で2-8とGAME1同様に琉球が序盤に先行する形になった。
しかし、琉球は既に5つファールを付けられていたし、8点の中には再現性の低いタフなショットを勢いでねじ込んだものもあった。

故に序盤こそ富山は慌てておらず、"想定の範囲内"という雰囲気だった。

しかし、ここにアクシデントが重なり、この6点差の傷口はさらに広がってしまうことになる。

1つ目のアクシデントは


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