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[第13節_富山vs川崎] ‐富山の敵は川崎ではなく、、-[20/12/12-13]

今節もまた、非常に見どころの多い試合だった。
川崎ブレイブサンダースとは毎回のように熱い試合になる。

しかし、今節に関しては本当の意味で富山が戦っていたのは川崎ではなかったように筆者は思う。

今回はこの対戦カードについて解説していきたい。

【1戦目】16点差から逆転を許し、OTの末に惜敗

1Q 31-23
2Q 25-22
3Q 14-24
4Q 23-24
OT 8-9
F 101-102

まず、1戦目の大まかな展開を振り返りたい。

序盤に富山が先制し、3Qには最大16点リードをする。
しかし、そこから3Q終了までのわずか6分15秒で1点差にされると4Qには逆転され、72-81と9点ビハインドを背負う。
ここから富山は再び追い上げて延長戦へ。
オーバータイムでは一進一退。最後に川崎の篠山選手がクラッチシュートを決めて川崎が辛勝した。

この試合については以下の3点について解説したい。


①宇都宮戦の反省を活かした強気なオフェンス

相手を意識しすぎて自分たちの良さを後回しにしてしまった宇都宮戦の富山のオフェンス。
その反省を活かすように、この日の富山は最初のオフェンスから全開で川崎のゴールに襲い掛かる。
マブンガ選手がジャンプボール後のボールを確保すると、すぐにソロモンはリングへ走り、前田選手がスクリーンをかけ、試合わずか開始8秒で得点。

さらにそこから
川崎TO→富山得点
川崎ショットミス→富山得点
川崎TO→富山フリースロー獲得
と開始から4ポゼッション連続でオフェンス成功。
宇都宮戦の反省を活かし、守りに入らない強気なボールプッシュ。
そしてしっかりとフィニッシュまで持っていくオフェンスはまるで、宇都宮戦の5Q目を戦っているかのような気迫だった。

-初心に戻って自分達の強みを出していこう-

ミーティングでそんな会話があったのが想像できる出だしだった。


②富山の多すぎるミス

・富山のPoint From Turnover と宇都のTO

しかし負けた。敗因はミスの多さ。これに尽きる。
最後の篠山選手は確かにさすがだった。
しかし、富山はそれ以前に勝負を決めることができる試合だった。

この試合のターンオーバーは17本。
さらにターンオーバーからの失点を表す、Point From Turnover は28点とむしろ中々お目に掛かれない数字を記録した。

※ちなみにこれは今季最多。2番目は渋谷戦の25点。3番目は宇都宮戦の23点。
参考までに記事の最後に今期の各試合のTO、PFT、宇都とマブンガのTO、点差をまとめた表を添付しておく。
今のところははっきりとした相関関係は見られないがここは今後も見ていく。
気になる人はここも参考にしてみてほしい。

とはいえ筆者はすべてのターンオーバーが悪だとは考えていない。

例えば相手のシステムに探りを入れるためのターンオーバーであったり、ターンオーバーになる可能性も計算に入れたうえで何かしらの目的をもったプレーの結果のターンオーバーならばそれはOKだ。

そこまでのレベルと言わずとも、例えばチャレンジをした上でのミスでもOKだ。
例えば、ソロモンへのアリウープミスによるターンオーバーもこれに当たる。こういうチャレンジプレーによるミスはポジティブなミスで、個人的にこれぐらいの飛び道具はCSまでに精度を仕上げてくれればいいと思っている。

しかし、こういう単純なミスはダメだ。

なにより、このミスを阿部選手不在の今の富山で、先発PGを務める宇都選手がやってはいけない。
控えPGの岡田選手はピュアPGではなく、あくまでPGも兼任できるスコアラー。
山口選手は通訳を兼任している。プレーするとなれば他の選手以上に頭の負担が大きく、長時間は中々コートに出せない。
マブンガ選手はただでさえ多くの仕事を兼任していて長時間労働。さらにターンオーバーに関してはリーグワーストの平均4本超え。
田中選手も、宮永選手も、松山選手ももういない。

スコアラーならばいくらでも替わりはいる。
しかし、専属のPGは宇都選手しかいない。

今だけは彼が最も冷静に、ミスを少なく、ゲームメーカーとならなければならないのである。

彼のターンオーバーの数字の推移。また、ターンオーバーの質がどのように変わっていくのかは今後も注目していきたい点である。


・3Q残り6分15秒で記録したターンオーバーは8回

最も直接的に勝敗に影響した富山のミスはここだろう。
3Qの残り6分15秒で16点リードした後のポゼッションは下記の通りだ。

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なんと富山は12回のポゼッションでターンオーバー8。シュートまで行けたのはわずか4回だ。
そして、相手の得点につながるターンオーバーも多かったことから、逆に川崎は13回のポゼッションで9回加点に成功している。
川崎はターンオーバーも増田選手がシュートまで行ってブロックされた一回のみ。

では、この時間の富山に何があったのか?
理由は笛と戦ってしまった点にある。
自分たちの思うように川崎のDFに対して笛が鳴らず、宇都のペネトレイトや、マブンガ→スミスへのパスでターンオーバーが発生。

この時間帯のノーコールのコンタクトがファールだったのかどうかはここでは語らない。
筆者は当事者でもS級審判でもないからだ。

重要なのは、富山が現状の審判がマネジメントする試合の中でどうプレーしていくかという対応力の点だ。
スミス、マブンガ、宇都はペイント内への攻撃に偏っていた。
笛が鳴らないこういうときはいつもの「反応された上で構わずねじ伏せる系のオフェンス」を控え、例えばアウトサイドを主戦場にしたマブンガ選手と前田選手と高めの位置で絡めるホーンズを主体にするなど、組み立ての切り替えが必要だ。

審判のジャッジへの適応力。
これは富山のターンオーバー数と関連性があるように思う。


・富山はターンオーバーとどう向き合うべきか

この試合ではとにかく勿体ないミスが多かった。
3Qの最大16点リードを失ったこともそうだが、そこまでに16点しかリードを作れなかったこともそうだ。
(正直この時点で25点はいけていたように思う。)

例えば1Qの14-3から14-10へと持っていかれてしまったこちらの5回のポゼッションを見てほしい。

14-3で最初に先行し、川崎タイムアウト後の場面。
最初にアギラールにキャッチ&スリーを決められて14-6とされた。

この失点はまだいい。
ソロモンがファジーカスのピック&ロールを最優先にケアしたことで空いた部分だ。この時点ではファジーカス選手が絶不調であることはわからなかったし、アギラール選手のキャッチ&スリーは川崎の中では警戒の優先度は高くない。

問題はその後。
宇都選手が3発連続でミスをしてしまうのだ。

1発目は宇都宮戦でも何度か見られたこのパスミスだ。
これによって即オフェンス終了&即2失点で合計4点分の損失だ。

その次のオフェンスでは、オフェンスリバウンドを取ったが目の前が空いていることへの気づきが遅れてシュートを打つタイミングを逃してしまう。
遅れてそのことに気づき、タイミングはもう過ぎている中プレーを続けてしまい、やや難しいステップバックのミドルシュートの選択をして打ち損じ。
これによって2点を取り損ねる。

さらにその後のディフェンスではスクリーンのフェイクに掛かり、藤井選手に逆を突かれてショットファールし、2点を献上し7点連続失点で14-10と2ゴール差まで追い上げられてしまった。

宇都選手はこのわずか2往復半のポゼッションで3回ミスをした。
これがなければ少なくとも、アギラール選手のワンマン速攻が無くなり、宇都選手のゴール下が決まり、藤井選手のフリースローが無くなって16-6にはなっていた。
(ここではたまたま宇都選手が説明しやすいミスをしたので例に挙げているが、追い上げられた3Qやそれ以外の時間でも他の選手でこういう場面はよく見られた。筆者は断じて宇都アンチではないのでご理解を。)

しかし富山はこの14-10と追い上げられた後、再び自慢のオフェンス力で突き放して31-23でQを終えた。

確かにこれも一つの解決方法だ。
最終的な目的は勝利すること。ミスを未然に防ぐ、減らすというのは勝利するための手段の一つに過ぎない。
たとえミスしても、それ以上にプレーを決める。そんなミスありきの大味なバスケットもアリだろう。

勝てるならば。

宇都宮には勝てなかった。
そして、川崎にも勝てなかった。
だからやはり、富山はこのミスを減らさなければならないのだ。
この攻撃力や高さを保った上で、さらにミスを減らしてゲームのクオリティを上げなくてはならない。

例えば宇都選手の場合、これを「31-23で8点リードできたからOK」ではなく、「俺の3連続ミスがなければ本当は33-19にできた」と悔やまなくてはならない。
そして、本気でそのミスを消すための練習をしなければならない。
(彼の場合は東京戦の勝利インタビューで「正直、ターンオーバーがなければもっと開いたと思う」と答えていたことから、いつもそう考えているであろうことがわかるが)

富山全員がこういう意識を持たなければならないのだ。

これはプロ選手(それもB1の)ならば誰もが持っているマインドセットなのかもしれない。

しかし、例えばマブンガ選手は東京戦で大量リードした時にフリースローを3本連続で外し、その後の宇都宮戦でも同じく3本連続で外した。それを見ると、「彼はあの日の自分のフリースローミスを深刻に考えていなかったのではないか?」と思うのだ。

宇都選手に限らず、グラウジーズ全員が過去の試合でしてしまったミスに対してきちんと何かしら積み重ねているのかはしっかりと見届けたいところだ。

そういう意味では次節の千葉戦で富樫のピック&ロールをどう対処するのかは注目したい。


③去年の逆転負けとは違う

15点リードで迎えた第4Q。
あっという間にリードを失い、オーバータイムでは逆に8点離されて負けた去年のクリスマスゲームはまだ記憶に新しい。
しかし、一度ノった川崎から一度も流れを奪えなかったあの頃の富山とは違った。

去年はひたすらにゆっくりと時間を使い、守りに入ったことで4Qに10点しか取れず、逆に25点取られて延長へ持っていかれてしまった。

延長も、そのまま1度も富山に流れが戻ることなく負けた。

しかし、今回は攻め続けた。
一時は9点話されても逆転し、延長でも再び連続得点で先行と、常に強気な姿勢と心の強さで最後まで接戦を演じた。

去年であれば1度逆転された4Qにそのまま走られていたであろう。

実はこれはとある選手の躍動によるところが大きい。
その選手とは、


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