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[第32節_富山vs渋谷] ‐GAME1とGAME2で富山は何が違ったのか?-[21/4/10.11]

多くの強豪から勝ち星をあげ、快進撃の続く富山にも未だに勝てていないチームがいる。

サンロッカーズ渋谷。

両チームのシーズン戦績は1.5ゲーム差であり、両者の実力は互角なわけだが直接対決では過去の2試合でいずれも富山が敗れている。

富山は渋谷を苦手としていた。

しかし、今の富山は球団記録の8連勝中。
粗削りで勝ったり負けたりを繰り返していた以前とは違い、再現性の高い勝利パターンを作り上げている今の富山は今回こそ渋谷に勝てるかもしれない。

...そんな期待が高まっているところへ、リチャード・ソロモン元選手との突然の別れが訪れた。
富山に関わる多くの人が悲しみ、SNSでは様々な言葉が飛び交う中、チケットは完売で満員の会場。

ワイルドカード争いだけではない。多くのものが賭かった第32節。
ワイルドカード1位の富山vsワイルドカード2位の渋谷の対戦について解説していこうと思う。


GAME1

この試合に懸ける富山の気持ち

1Q最初の5分間のスコアは8-8。
過去の2試合とは打って変わり、この2チームとしては非常にロースコアな出だしとなった。

その理由は富山の丁寧さにあった。

ボール運び、スペーシング、パスワークなどを丁寧に行い、ターンオーバーのリスクの少ないオフェンスを行っていく。

シュート自体も1対2のようなタフショットを打つこともなく、マブンガがペイント内へドライブしても丁寧にノーマークへとキックアウトを行いDFを処理する。

これによって富山の1Qのターンオーバーはわずか1本に留まった。

そしてこれが渋谷の得点を抑えることに繋がった。
なぜなら渋谷の得点源はハードなDFからの速攻だからである。

ガードとフォワードがファーストブレイクを出し、それがダメでもライアン・ケリーらがセカンドブレイクに絡んでくる渋谷の速攻は成功率が高い。
これが彼らのチームカラーである。

しかし今日の富山はターンオーバーをせず、それどころかマブンガがセーフティ(トップ周辺のDFへすぐに戻れる場所)にいる状態でオフェンスを終えるため、渋谷の得意な攻撃の型が中々出せない。

そうなるとセットオフェンスになった時。
次に渋谷に多い得点はライアン・ケリーのシュートである。

ケリー選手はシュートが上手い。
正確に言うと、ボールをもらうまでのDFの処理が上手い。
オフボールで相手を振り切る、P&Rで合わせるなど、優位な状況を作るスキルが高い。

そして、DFとズレを作った状態でボールを受けた後の彼のシュートはリーグトップクラスに確率が高い。

ゆえに彼のプレーはスマートに見える。
しかし、その一方でDFと対峙し、ズレの無い状態でボールを持って始める1on1に関してはマブンガや滋賀のハミルトンらの理不尽さには及ばない。

タフショットを決める上手さではなく、タフショットにせずに決める上手さ。
それがライアン・ケリーの特徴である。

つまり、
ズレが起こる始発点のP&Rをしっかり対応すれば彼のシュート確率をかなり下げることができる、という事である。

富山は一つ一つのP&Rディフェンスをファイトオーバー、アンダー、ドロップを適切に使い分けながら対処した。
これによって過去2試合とも26点取られたケリー選手を前半FG2/8の4得点に抑えた。

しっかりとこれまでの2敗が活かされており、これまでの富山とは明確に違った。

しかし、マブンガを低い位置に置かないことや、ターンオーバーのリスクを避けるパス回しにはデメリットもあった。

ボールラインがなかなか落ちない。

渋谷のDFはハードだ。
ウイングへパスを落とすにも一苦労で、ウイングへパスが落ちてもスミスには速やかにダブルチームが行われる。

ウイング、ローポスト、コーナーといったスコアリングする上で使いたいエリアには常にリスクがついて回るため、スムーズにボールが落ちなかったのだ。

これにより、富山も得点が伸びず、前半は35-35の同点。

しかし、これには勝負の3Qに向け、前半はオフェンスを犠牲にしてでもディフェンスを優先し、手札を温存するような意図にも見えた。

一つ一つのP&Rディフェンス、ボール運び、スクリーン、パス、フリースローなどを全員が集中し、丁寧にプレーを行う様子からはこの試合に懸ける富山の気持ちが感じられた。

富山のマジッククォーター

今シーズン。
富山が第3Q終了時にリードした試合の勝率は28勝2敗(93%)であり、逆にビハインドとなったケースの勝率は3勝14敗(18%)である。

故に第3Qは富山にとって重要なクォーターとなる。

このクォーター。富山はさらに渋谷対策を実行。
それはマカドゥ選手、ジャクソン選手が得点チャンスになったら、日本人選手が迷いなくファールに行くというものだ。

この2人はフリースローが不得意であるため、彼らにファールをすればそのDFの失点を1点、もしくは0点でしのぐことができる。
さらに外国籍選手がマブンガとスミス選手しかいない富山にとっては彼らをファールトラブルから守る効果もある。

この作戦が功を奏し、3Qに2人が打ったフリースローは0/6。
その間に富山は全員で積み重ねた同点のスコアに貴重な5点のリード上乗せした。

そしてここで岡田侑大がゾーンに入る。

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