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[第11節_富山vs名古屋] ‐"正しい"オフェンスを求めて。富山が積み上げたもの。-[20/12/5.6]

第11節。富山vs名古屋は1勝1敗の痛み分けとなった。
しかし、1戦目は富山にとってチームのトラブルシューティングを増やすきっかけとなる学びのある敗戦であり、修正した2戦目では1戦目の4点差を大きく上回る21点差で星を取り返した。

今回は負け方、勝ち方ともに非常に良い内容だった。
シーズンの前半戦の1つの黒星ならば安い勉強代だったように思うほど。

今回は富山がこの2日間に積み上げた内容について解説していきたい。


1戦目 - 3P絶好調の名古屋相手に立て直すも惜敗

1Q 16-27
2Q 24-13
3Q 18-22
4Q 21-21
富山 79-83 名古屋

この試合で最もインパクトがあったのは、なんと言っても名古屋が1Qに決めた7/9のスリーポイントだろう。
77.7%の3P%もさることながら、素晴らしいのは名古屋(特に斎藤選手)が作った好条件の9本のスリーポイントだ。
2Q以降は7/18で38.8%と数字を落としたが、これもそこまで悪い数字ではない。むしろ9本中7本を決めたあと、富山のスリーへの警戒が強まった30分の中でもここまで決めた名古屋の集中力は素晴らしかった。

・"正しい"オフェンスとは?富山が陥りがちな事

1戦目の立ち上がりのオフェンスは悪くなかった。
スタメンである宇都、松脇、前田、マブンガ、スミスは早々に全員がシュートを打った。
つまり、オフェンスが低調であることをチームが理解し、全員の選択肢を試したということだ。
スコア的には低調だったがチームの試みとしては過程は悪くなかった。

そして、序盤は宇都選手のシュートだけが決まった。
これを踏まえ、宇都選手は自分中心のオフェンスに切り替え、富山の最初の7点を一人で決めた。
しかし、ここから徐々に富山のチームオフェンスは分離していく。

これは宇都選手がマブンガ選手のオプションを引っ張りすぎたことでオープンになった前田選手への配球が遅れ、その後の前田選手のドライブと逆サイドに切れたマブンガ選手とが被ってしまったケースである。

これは宇都選手の組み立ての癖が顕著に現れた場面である。

彼は劣勢の苦しい場面では、味方の得意なシュートや自身のシュートなど、”そのとき自軍の中で最も強いオプション” に選択を限ってしまう傾向がある。
(これはマブンガ選手も同様で、彼の場合はより自分のシュートに偏る。)

それ自体は全くもって "正しい" 組み立てである。
手堅く点が欲しい場面では、チームで「期待値の高いシュート」を選択することは当然と言えるだろう。

ディフェンスがフラットに守っている場合においては。

相手からしてみれば、それらは最もDFの警戒を強めるシュートオプションでもある。

その時、それは単純に "正しい" 選択とは言い難くなる。

スカウティングが進み、マークを受けるそれらを選択することは本当に最善なのか?
もっと相手がマークしていない簡単な選択肢があるのではないか?
そういう話になってくる。

「反応された上でねじ伏せる系オフェンダー」である宇都とマブンガの強気な性格上、相手の出方に関係なく、自軍の最も得意な武器で突き進んでしまうことがある。
それが一概に悪いわけではない。
事実、それで相手をねじ伏せる場面も多々あった。

しかし今節の名古屋戦においては結果論として、岡田選手のような「ズレを作ってかわす系」のシュートや、相手をきちんと処理した上で放つ水戸選手のシュートの方がよく決まっていたことから、こちらが "正しい" オフェンスだったということなのだろう。
(ちなみに富山の初得点である宇都のスリーもそうだった。宇都にとってドライブよりはるかに弱いオプションだったとしても、名古屋が"捨て"にしていたシュートを選んだあの判断は実に "正しく"、故に決まったのだと言える。)

また、実は1戦目でこれによって沈黙していた選手がいた。それは2戦目の部分で説明する。

・きっかけを逃さず、素早いプラン変更で同点に

ここで渋谷戦同様、またもベンチからの出場で富山を救ったのが岡田選手だ。
富山はこの試合で彼が一番当たっているとわかると、岡田選手中心の組み立てにシフトチェンジする。
ホーンズセットまではいつも通りの形で入り、そこからのピック&ロールのハンドラーには岡田選手になるようにパス回しをしていた。
状況に合わせてオフェンスの主役を変化させるこの対応力は今シーズンの富山の強みである。
結果、1Qより8点多い24得点を記録し、岡田選手自身も前半20得点とチームの半分の得点を挙げた。

・しかし、前半の「負債」で後半わずかに届かず

前半は40-40の同点でスコア上は振り出しに戻したように見えた。
しかし、1Qに名古屋の斎藤選手とシューター陣のホットラインに自信を持たせてしまったこと。対する富山は岡田選手しかノれていなかったこと。
この内容は負債となって後半に帰ってくることになる。

2Qでは斎藤を5分36秒の出場に抑えたこともあり、スリー1本の13得点に留まった名古屋だったが、斎藤選手が10分出場した3Qでは斎藤→シューターのホットラインを止められず、7点3アシストとまたも好きにやられてしまった。彼に名古屋のオフェンスを加速させられ、失点は再び22点へ膨らんでしまい、スリーも3本決められた。

富山はハーフコートオフェンスが中々機能しない中でもDFからの速攻やスミスのポストなど、試行錯誤しながらきっかけを作り、最終的に後半も39得点したが僅かに一歩及ばなかった。
とはいえ、名古屋の理想的な試合内容と高確率なスリーにも関わらず、やはり富山は4点差のゲームを作った。
この負けは9節の川崎戦に近い。

・ちなみに

↑この3Pに幾度となく救われてきたからこそ、これにはぐうの音も出ない。

2戦目 - 選手同士の緊急ミーティングで見事に修正

1Q 17-17
2Q 17-9
3Q 28-14
4Q 18-19
富山 80-59 名古屋

序盤のオフェンスは、2018-19シーズンの富山のようなスミス中心の組み立てで快調に加点。その後も富山は相互理解の高まったバランスの良いオフェンスで得点を重ねる。
さらに富山はオフェンスだけでなく、ディフェンスでも着実に修正し、2Qでは9点に抑え、3Qでは持ち前のオフェンス力で28得点し快勝した。

・緊急ミーティングで"とある選手"が復調

1戦目ではとある選手が酷く沈黙していた。
しかし2戦目での復調を見る限り、1戦目の後に行われたという選手同士の緊急ミーティングでしっかりとそのことについても話し合われたのだろう。
その選手とは

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