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続 中小企業にITツールをうまく導入するにはどうすればいいのか?

前回このテーマで記事を書いてから、もう5ヶ月も経ってしまいました。

その後、Twitterの呼びかけに賛同してくださった方々からお話も伺い、それを受けて自分自身の考えも変わり、もう何度原稿を書き直したか分かりません。

そんなことを繰り返しているうちに、記事を公開するハードルがどんどん上がってしまい、ひたすら時間ばかりが経ってしまいました。

本記事では、SaaSベンダー、企業内の導入推進者、第三者的支援者と、さまざまな立場の識者の方々に伺った内容を、SaaSベンダーや導入支援者へのヒントになるよう整理しました。この記事が書けたのもご協力いただいた皆さんのおかげです。あらためて感謝の意を込めて、文末にお名前を掲載させていただきました。


学び1:課題感こそがすべてのスタート

多くの識者の皆さんが口を揃えて言及したポイントNo.1が、これです。

そもそも中小企業というのは、その定義からして、社員の数が少ない企業です。その少ない社員の中に、「課題を整理できる人*」がいる可能性は、あまり高くありません。能力の問題以前に、確率の問題として。
仮にどの組織にも5%の確率で「課題を整理できる人」が存在するとしたら、5,000人の会社には250人いますが、20人の会社には1人です。そして、この1人が適切な役割を与えられている可能性を掛け合わせると、ゼロに近い数字になるでしょう。つまり、20人規模の企業で、「課題が整理されている」という状況はまず起きないということです。

*業務とITを紐づけたり、BeforeとAfter(As-isとTo-be)を描けたり、業務の全体像を把握して改善点を見つけられる人。

「中小企業には、作業をする人はいるけど、仕事の段取りができる人や、業務改善に意欲がある人はいない」

識者の方からは、こんな発言も何度かありました。

では、経営者であれば全体感を見て課題を把握しているかというと、そうでもありません。そもそも、経営者だから全体感を見るとも限りません。製造畑出身なら製造、営業出身なら営業はよく見えているが、それ以外はあまり見えていない(任せている)ケースが多いのです。

さらに重要なことは、中小企業の場合、経営者ですら必ずしも成長意欲や改善意欲があるわけではないという点です。
SMB市場を攻めようと思うなら、ここは世の中のリアルを知っておいた方がいいでしょう。

「企業として成長が必要」だとか、「痛みをともなう変化をしてでも生き残る」だとか、「競争に勝つためには新しい取り組みが必要」だとか、そういった考えを持つ中小企業経営者は、ごくわずかです。なぜなら、中小企業には成長しないインセンティブが存在しているからです。
これは琉球オフィスサービス 藤本社長の受け売りですが、多くの中小企業においては、成長のために努力・投資して得られる利益よりも、成長を捨てて利益を消すことで得られる利益の方が大きくなるのです。したがって、利益を出さない、成長しないことの経済合理性があるのです。これは、私自身も個人事業主になったことで、非常に理解できる内容です。

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だから、運良く担当者レベルに課題を整理できたり、改善意欲のある人がいたとしても、その人のやる気だけでは進まないケースはいくらでもあり得るのです。
詳しくは、以下の動画をご覧いただきたいと思います(37分01秒~40分30秒あたり、上のスライドも以下の動画からお借りしました)が、そういった中小企業の「成長しないインセンティブ」を考慮すると、そもそも日本に380万社ある中小企業のなかで、どの顧客セグメントなら自社サービスの顧客になり得るのか(導入が成功しやすいのか)というセグメンテーションとターゲティングは、とても重要なポイントになります。


逆に、課題感を持っていることが多いのは、ベンチャーやスタートアップ志向で会社を成長させたい経営者や、外のモノサシを持ち「あるべき姿」のイメージを描ける経営者、例えば異業種や違う会社で修行してきた2代目3代目といった方々です。

SMB市場や中小企業を攻めるなら、従業員数だけで見るのではなく、その会社の成り立ちや経営者の特性や出自でセグメンテーションするくらいの見極めが必要になります。(とは言え、それはとても難しいのですが)


やや横道にそれましたが、話を「課題感」に戻すため、ここで組織変革やチェンジマネジメントの権威であるジョン・P・コッターによる「変革推進のための8段階プロセス」をご紹介します。

中小企業へITツール導入

最初に来るのが「危機意識を高める」です。危機意識とは、何らかの行動が必要と感じるレベルまで課題を強く認識することです。

一見、その後の7ステップと同じレベルで並んでいるので誤解しがちですが、このステップは他のステップよりもはるかに重要で、はるかに難しいのです。
これはおそらくコッター自身も最初は気づいていなかったんだと思うのですが、その後このステップだけにフォーカスした著作『企業変革の核心』を書いていることからもわかるように、知れば知るほど、やればやるほど、このステップの大事さと難しさを実感したのでしょう。

変革推進のための8段階プロセスは、組織の中の視点で整理されていますが、SaaSベンダーや支援者は、顧客企業の中でこのステップが進むよう支援することになります。その際に、第1段階の危機意識が高まっているのか、課題が認識されているのかを見極める必要があります。ここをパスしなければ、その後のステップには進めないので。

運良く課題を整理できる担当者がいたとしても、その課題感がその人だけに留まっているのか、組織内のどこまで共有されているのか。逆に、経営者が課題感を持っていたとしても、それが組織内で共有されていなければうまくいかない可能性も高まります。経営者とIT担当と現場部署のエンドユーザーで、なんとなく全員が課題感を持っていたものの、よくよく聞いてみると見ている課題が全然違った、なんてケースも多々あります。
ベンダーとしては、まずは課題の共有を支援するところから始める必要があるのです(労力を掛ける価値があると判断した場合は。具体論は次の項に)。

誤解しないでほしいのですが、課題を認識させる努力(啓蒙活動や顧客教育)をするな、しても意味がないと言っているわけではありません。むしろ、やった方がいいです。
ポイントは、そうした一定の努力の結果、響かなかった相手を深追いしてはいけない、という点です。営業担当者は、案件(リード)が少ないとつい深追いしがちですが、それはベンダー・顧客双方に何も生み出しません。淡々と次に行きましょう。

危機感を煽っても、響かない人には響かない。

危機感がない人が窓口だと、手を動かす人がいない。1ヶ月でできることを1年掛けてやってる。

まとめ:課題を感じていない相手には売るな、入れるな


学び2:理想がなければ、課題は生まれない


課題を持っている人だけを相手にするなんて言ってたら、そもそも案件がないよ!
SMBを担当している人であれば、きっとこう感じるでしょう。

外からの働きかけで課題を感じてもらうことは極めて難しいという前提を踏まえつつ、では何をやったらその可能性が高まるか?
それを考えるためにも、そもそも中小企業はなぜ課題を感じないのかを考えてみましょう。きっとSaaSベンダーにお勤めの多くの方にとっては、中小企業の実態を知れば知るほど、こんなに非効率なことやってるのに、なんで課題だと思わないの?!と不思議でならないでしょう。

その答えは、人が課題を認識するプロセスにあります。
人は、現状だけを見て課題を認識することはありません。現状と理想的な状態や目標との差を認識してはじめて、そこに課題を感じます

理想がなければ、課題を感じない

現状に課題を感じないのは、理想像がないからです。
「課題を整理できる人」がいなければ、理想像(To-be)が描かれません。外のモノサシ(他の会社ではどうやってる?)を持つ人でなければ、現状と理想にどれだけ差があるかわかりません。
課題を感じないのは、現状に問題がないからではなく、理想がないからです。

であれば、やることは明らかですね。
理想像を示しましょう。
「こうなったらいいね」「ウチもこれやりたい」「ウチもこうなりたい」と思ってもらいましょう。
そう思ってもらうためには、理想像は具体的でなければなりません。難しい単語での説明的文章ではなく、わかりやすいストーリーと絵(画像、動画)があった方がいいでしょう。

そのために事例を使いましょう
その事例には、導入理由の論理的な説明とか、導入時の苦労とか、要りません。そう考えると、SMB向けの事例づくりのゴールは「このツール凄いね」や「このツールについて問い合わせしよう」ではありませんね。
事例のゴールは「ウチもこうなりたい」と思ってもらうことです。だから、とにかく「こうなって良かった」という話が前面に出ていた方がいいのです。

井領さんにお話を伺った際、これを「エンタメで興味を惹かないことには始まらない」と表現していました。
エンタメで興味を惹き、バズワードも使いつつ、お涙頂戴のストーリーで涙を流してもらい、「ウチもあの豆腐屋と同じ事やりたい」と言ってもらうのだ、と。
事例制作経験が豊富な長橋さんは「ツールをアピールするのではなく、お客様の固有のストーリーに焦点を当てよ」と表現していました。
事例では「あの豆腐屋」を描くことが大事なのです。マーケティングチームの腕の見せ所でもあり、営業チームもストーリーを語れるようになる必要がありますね。

まとめ:わかりやすい理想像を見せて、「ウチもこうなりたい」と思ってもらうべし


学び3:社内展開の肝は人間関係である

小さな単位では導入が進んだけど、そこから先に広がらない。社内で使ってくれない部署・人がいる。SMBに限らず、よく聞く話ですね。
これに対して、ベンダーの視点で向き合っても、あまり進展しないようです。なぜなら、それはツールの問題ではなく、人間関係の話だから(by 岩澤さん)。

人は、誰に言われたかでやるかやらないかを決める
上に言われたらやる人もいるが、上に言われたらやらない人もいる

YouTubeで公開した野水さんとの対談で膝を叩いたのが、この点でした。


多くの識者から似たような意見を聞きました。

頭を下げる、お願いするのがうまい人の方が、成功してる。
どこまでいっても課題を共有できないこともあるので、「ごめん、私のためにやって」と言う。
関係性ができていない人には、ほかの人から頼んでもらう。
使ってくれない人はいったん置いておく、言っても無理なので。
やりたいと言ってこない部署には無理に勧めない、タイミングの問題もある。

岩澤 樹/NPOの情シス・会計さん

座組みをしっかり考える。
入りたいチームに直接入るのではなく、なんらかのつながりがある人を通じて、入り込む。
社内のコミュニティリーダーとつながる。

かふぇ 職業 ITリベロさん

だから、社内展開をする段階では、ひとりでやらずにチームを組んだ方が良いわけです。と言っても、中小企業にはチームを組めるような体制はないでしょう。だから、仲間をつくっていく必要があります。

人を巻き込むのが得意だったので仲間を増やした。
仲間になりそうな人をベンダー主催のワークショップに連れて行って、一緒に受けた。
社内ワークショップでノベルティグッズを配ったり、楽しい体験要素を入れた。
周りのみんなが使ってる状況をつくったら、1年くらい掛かったけどそっぽ向いてた人も最後に乗ってきてくれた。人数の力は大きい。
MasakazuYoshikawaさん

ということは、ベンダーとしては、顧客の担当者に対して「仲間づくり」を支援してあげる必要があります。もちろんこれも直接支援するのは難しいですが、識者のコメントにあるように、ベンダー主催のワークショップやノベルティグッズは意外と侮れません。また、そもそもそういうアプローチをするものなんですよと伝えるだけでも有効です。
私の経験でも「味方になりそうな人を見つけて仲間にするといいですよ」と伝えただけで、目から鱗が落ちたように「なるほど!やってみます!」と帰っていく人もいました。

仲間(チームメンバー)は同じタイプではなく、違うタイプを組み合わせた方が良いです。
営業に話ができる人、製造側に人脈が多い人という組み合わせもいいですし、ロジックを作るのが上手い人、説得するのが上手い人、思い切りがいい人などの組み合わせも大事です。このあたりのチームづくりの要諦は、先ほどのコッターによるわかりやすい寓話『カモメになったペンギン』を読むと理解が進みます。

で、ベンダー側としては、こういったチームづくりの要諦を押さえた上で、「こういう人、御社にいませんか?」とか「こういう人にお願いしてみましょう」といった提案を投げかけたいところです。これは営業チームもカスタマーサクセスチームもどちらもできるようになっておく必要があります。なぜなら導入前の稟議・説得時にも、導入後の展開時にも、アップセル・クロスセル時にも求められる視点だからです。

まとめ:導入推進者の社内仲間づくりを助けよう


学び4:ハードSだけでなく、ソフトSの変化が大事

前回の記事で私に大きく欠けていた視点がこれでした。というよりも、これまで私は大きな勘違いをしていたようです。私は、ITツールやSaaSの導入について、こう捉えていました。

これまでとは異なる業務プロセスやアウトプット、またはその両方を導入すること

だからこそ、導入障壁のひとつとして「業務プロセスを(再)設計するスキル」を挙げていました。

カスタム開発(いわゆるSI)では、既存のプロセスを自動化したり、既存のアウトプットを出すためにシステムを構築していた。これからはパッケージソフトの時代である。パッケージソフトには、法規制対応や業界標準の業務プロセスが組み込まれているので、これに合わせて自社の業務プロセスを変えていくのが正しいやり方だ。自社の業務に合わせて、パッケージをカスタマイズするのは愚の骨頂である。パッケージをノンカスタマイズで利用しておけば、アップグレードも容易で法改正にも対応しやすく、また別の業務領域にソフトを導入する際にもスムーズに進む。

これは、私のバックグラウンドであるSIの世界で、20年ほど前(2000年ごろ)に活発に交わされていた議論です。「パッケージソフト」の部分を「SaaS」に置き換えると、現代でも似たような議論をしているように思います。この話がどこまで本当だったかはさておき、私はこういう議論がおこなわれている時代に育ったので、どうしても「プロセス」に重きを置きすぎていたようです。

かつての情報システムがもたらす価値は、たしかに「プロセスの効率化・自動化」が中心だったと思います。ですが、現代のITツール/SaaSがもたらす価値とその影響範囲は、もっと広範囲に及びます。もちろん、業務プロセスを(再)設計することは、SaaS/ITツールの導入において重要ですが、そこだけを見ていると、大きな勘違いをしてしまうことに気づきました。この点については後ほど詳述します。

今は、SaaS/ITツールの本質的な価値を、このように捉えるようになりました。

組織としての力(ケイパビリティ)を向上させること

SaaS/ITツールの導入によるプロセスの変化は表面的なものであり、SaaSが定義している仕事のやり方(または思想や哲学)に従うことで、個人レベルではなく組織レベルでスキル(ケイパビリティ)を向上すること。

SaaS/ITツールの価値をこう捉えなおしたときに、頭に浮かんだのが「マッキンゼーの7S」と呼ばれるフレームワークでした。
これは組織行動(その集合が組織文化と呼ばれる)に作用する要素をまとめたもので、組織行動論でよく引用されます。このフレームワークの良いところは、経営者や外部の人間(ベンダーや支援者など)は、つい短期間に変更可能な要素(ハードS)にばかり目が向きがちになるところを、変化に時間がかかる要素(ソフトS)への気づきを与えてくれるところです。

中小企業へITツール導入

戦略を変えたり、ツールを導入したりしても、Staff=適材適所はすぐには実現しないですし、Style=行動様式もすぐには変わらないですし、Skill=能力もすぐには変わりません。そして、社員の頭の中にある「良し悪しの判断基準」もすぐには変わりません。Shared Valueとはよく言ったものです。単なる語呂合わせだと思ってましたが、価値観や判断基準が Shared=社員の間で共有されて、はじめて組織行動が変わることをよく表していると思います。


ちょっと小難しい話が長くなりましたが、要はITツールの社内展開というのは、ツールの普及ではなく、ソフトSの変化をもたらすことなのです
チェンジマネジメントの観点(変革推進の8段階)で言えば、ソフトSの変化が定着するところ(8. 新しいやり方を文化として根付かせる)までやるのが大事、ということです。

変革8段階

言われてみれば当たり前なんですが、でもベンダー側にいると、つい忘れがちなんですよね、この視点。

仕組みを考える人がいない → だから業務(再)設計が必要、というのは間違ってはいませんが、それだけでは不十分です。なぜならそれはハードSのSystemとStructureだけの話だから。

最初

でも、SaaS/ITツールの導入後は、変化に時間がかかる Shared Value, Staff, Style, Skillといった4分野に継続的に働きかける必要があります。

その後


新しい価値観が社内やチーム内で口に出されているか?(Shared Value)
新しいやり方をする人が表立って褒められているか・重用されているか?(Shared Value、Staff)
スキルを身につける場が定期的に開催されているか?(Skill)
ITツールを使った仕事のやり方が基本(デフォルト)になっているか?(Style)


エンタープライズ(大企業)を担当するカスタマーサクセスマネージャーは、こういったことをそこまで意識しなくていいのかもしれません。なぜなら、先方に「プロジェクト推進担当(複数)」がいるし、良くも悪くも上司や関係部署から「あれは大丈夫か、これもやった方がいいんじゃないか」と口を出されることで、7Sの各方面に対応することになります。
でも、中小企業ではそんな動きは起きません。だから、ベンダー側がそこまでフォローしないと、あちこちでつまづいてしまいます。これもまた能力の問題というより、人数や視点の数に起因する部分が大きいと思います。

つまり、SMBを担当するカスタマーサクセスマネージャーは、SystemやStructure(情報の流れ)だけでなく、Shared Value、Staff、Style、Skill にも変化が起きているかをヒアリングし、その後押しをする必要があるのです。
一瞬考えただけで、これを個別に対応するなんてまず無理、ということが明らかですね。ということは、こういったことをプログラマティックな施策として用意しないといけません。いわゆる「スケールするカスタマーサクセス施策」をつくるわけです。

なかなか大変そうですね。でも、よほどプロダクトが強くない限り、これは避けて通れなさそうです。となると、腹を括って、汎用化した「進め方」を提供する取り組みをはじめた方が良いでしょう。
具体的には、チェックリスト的なものや、ガイドブックなどのドキュメントはもちろん、座学(既存顧客向けセミナーやワークショップ)や情報交換の機会(ユーザーコミュニティ)などに、7Sのフレームワークを盛り込むことになるでしょう。

まとめ:カスタマーサクセス施策で7S (特にソフトS)の変化をフォローしよう

学び5:価値観を共有できる相手が顧客になる

SaaSやITツールがもたらす価値が大きく、広範囲に及ぶようになったとは言え、コンピューティングパワーの大半はデータ処理、つまりデータの保存・計算・共有・検索において大きく発揮されることには変わりありません。

当たり前のようですが、まさにこの「データの保存や共有」が価値をもたらす、という概念を理解し、共感できるかどうかは、非常に重要なスタートポイントです。
平たく言えば、みんなが見える・使える・探せるようにすることが、良いことである(生産性が上がる、利益増につながる)、という価値観をもつ人がいることが前提です。そもそもこの考えに共感できなければ、SaaS/ITツールを導入することで得られる価値を信じていないとも言えます。

みんなが見える・使える・探せるようにするためには、なるべく多くの人がツールを使う(データを保存・共有する)必要がある。良いことのためには、そういった行動が必要である。多くの企業では、この考えを信じている人、この考えに共感している人が、SaaSやITツールの導入推進者となります。そして、この考えに共感している人が多ければ多いほど、SaaSやITツールの導入プロジェクトはスムーズに進みます。担当者がこう考えていても、経営者がこの考えに共感していない場合、導入プロジェクトはうまく進みません。

さらに言えば、そもそも「何かを改善する」「新しいものを取り入れる」という価値観がないかぎり、SaaS/ITツールの導入というソリューションにたどり着くことはありません。私はこの点も過小評価していたように思います。

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逆に、「改善・成長」や「みんなで共有」といった価値観を持たない会社に対して、懸命に支援したところで、果たしてそれは双方にとって意味のあることなのでしょうか。

補足しておくと、ツールの導入が潜在的に存在していた価値観を表出させることはあります。
「そんなことはこれまで考えたこともなかったけど、言われてみればそういう風に捉えていた気がする」「ツールを入れたことによって、その考えが自分(たち)のなかでハッキリと認識できるようになった」
こういうケースは数多くあります。

また、個人レベルで見れば、「ITなんて自分たちには役に立たないと思っていた」人が、「意外と役に立つことがわかった」というように、価値観の変化が起きることはあります。この記事では個人レベルではなく、「中小企業にSaaS/ITツールを導入する」という観点で書いています。

あらためて強調したいポイントは、SaaS/ITツール導入を推進した人たちは、「新しいものを取り入れてでも改善しよう」「みんながツールを使って、データを共有することで、会社と自分たちにとって良いことがある」という価値観をもっていたからこそ、困難な状況でもツール導入を推進し、成功に導けたのだという点です。ツール(やその導入プロセス)を通じて、この価値観が作られたわけではないのです。


B2Bの取引やITツールの導入や継続判断において、「価値観」「相性」「愛着」という言葉が数多く出てくる時代です。なぜなら、機能的に同じことができるツールはいくらでもありますから。選ぶ基準、継続する基準は、価値観や世界観を共有できるかにシフトしているのです。

ブランドビジョン

だからこそ、SaaSベンダーの経営者は自分たちが提供するツールはどんな価値観を前提にしているのかを丁寧に伝えることが大事になります。価値観に共有してくれた人を顧客にするのであって、顧客があとになって価値観を合わせてくれるわけではないですから。
ツールの導入・展開をうまくやろうと思ったら、はじめから価値観に共感してくれる人を引き寄せた方が良いのです。

まとめ:価値観を発信し、価値観を共有できる相手を引き寄せよう


まとめのまとめ

1. 課題感こそがすべてのスタート → 課題を感じていない相手には売るな、入れるな

2. 理想がなければ、課題は生まれない → わかりやすい理想像を見せて、「ウチもこうなりたい」と思ってもらうべし

3. 社内展開の肝は人間関係である → 導入推進者の社内仲間づくりを助けよう

4. ハードSだけでなく、ソフトSの変化が大事 → カスタマーサクセス施策で7S (特にソフトS)の変化をフォローしよう

5. 価値観を共有できる相手が顧客になる → 価値観を発信し、価値観を共有できる相手を引き寄せよう


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