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PLGでカスタマーサクセスやるなら押さえておきたい4つの「違い」

日本のSaaS業界の盛り上がりは本当に素晴らしく、関連するアドベントカレンダーはもはやいくつあるのかわからないほどですね。

そんななか、昨年のアドベントカレンダー企画で自分が書いたnoteを見返していたところ、なんと「自分宛ての宿題」を発見してしまいました。。。

このファネルと Another Model の解説はまだまだありますが、ここから先は来年の連載記事のために取っておきましょう。
なお執筆依頼は、まだ来ていません。

カスタマーサクセスを「マーケティング仕様」にアップデートする


国内においては、The Modelに代表されるSLG戦略におけるカスタマーサクセス・カスタマーマーケティングの話が多いのですが、実はそれ以外の世界もあり、そこではカスタマーサクセスのカタチが違い、よってカスタマーマーケティングのカタチも違います。

そこで本記事では、もうひとつの成長戦略 Product-led Growth (PLG) を選択した場合、カスタマーサクセスやカスタマーマーケティング活動に(SLGと比較して)どんな違いが生まれるのか、またどんな注意点があるのか、私の経験をもとに共有したいと思います。

今後、日本でもPLG戦略を取るSaaS企業が増えると思いますので、「こういったアプローチもあるんだ」と、皆さんに新たな視点と引き出しをご提供できたら幸いです。



PLG という Another Model 

SaaSビジネスについて考えるとき、バイブルのような存在になっているのが福田康隆さんの『ザ・モデル』です。正直言うと、Salesforce と Marketo での福田さんの成功譚が凄すぎて、SaaSでは Sales-led Growth (SLG) でやるのが当然!と思われている節がありすぎるように思っています。
もちろん自社のサービスにSLGがフィットしているなら、その戦略を選択するのは正しいです。

しかし、『ザ・モデル』で解説されているような SLG だけが SaaS のGTM (Go-to market) 戦略ではありません。SLG以外のやり方もあるし、その方がフィットしているサービスもあるし、事業フェーズやプロダクトラインの拡充によって、違うやり方が必要になることもあります。

そのひとつが、Product-led Growth (PLG) です。

国内でも普及の兆しを見せ始めたSaaS(サービスとしてのソフトウエア)。普及が広がる中で、新しいビジネスモデルも生まれてきた。無料プランを起点に顧客を獲得し、機能拡充の際に課金する「プロダクトレッドグロース(PLG)」だ。
(中略)
PLGはサービスの利用が、無料や安価で始められるSaaSサービスのこと。フリーミアムという無料でサービスを使えるようにし、そこから有料課金へ促すのが一般的だ。
(中略)
これまでのSaaSサービスでは、「ザ・モデル」と呼ばれる営業プロセスが採用されてきた。見込み顧客の獲得から契約、その後の利用や解約防止を担うカスタマーサクセスなど複数の役割に分割。それぞれの段階で数値を明確に管理することで、顧客が生涯に支払う金額を最大化することを目指す。特に米セールスフォース・ドットコムが導入したことで知られる。

上記リンク先記事より抜粋

海外では、Dropbox、HubSpot、Zoom、Slack、Asana、Canva、Miro、Calendlyなどなど、多くの企業がPLGを成長戦略の中心に据え、IPO/ユニコーン化する企業もかなり多くなりました。
日本ではまだそれほど多くありませんが、それでも、上記記事中で紹介されている Spir や STUDIO などがPLG戦略を選択して成長しています(私もSpirを愛用中)。

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PLGでお馴染みのOpenViewさんによるレポートから引用


私自身の経験でも、昨年のnoteで以下のように書いたとおり、日本市場においてもPLG戦略が有効であることを強く実感しています

このチャレンジを続けていることで、とんでもない事業成長が実現できているのも、また事実なのです(語彙力不足な表現ですが、大人の事情と思ってください)。

カスタマーサクセスを「マーケティング仕様」にアップデートする


このときは、大人の事情で「とんでもない事業成長」としか書けませんでしたが、つい先日、わずか6年弱でARR79億円、国内SaaSとして7位の規模まで駆け上がったことが公式に発表されました。

(注:誤解を生みそうなので補足すると、この成長はSLG+PLGでもたらされています。よって、ARR/売上はPLGから生まれたものだけでなく、SLGから生まれたものも含みます)

PLGとは

このPLGというもうひとつのモデルについて、もっと多くの人に知ってほしいという思いがずっとあり、2021年4月のカスタマーマーケティングmeetup(#cmkt)では PLGとカスタマーマーケティングの関係をテーマにしたイベントを開催しました。
PLGとは何か、そのときのの資料から抜粋して、おさらいしてみましょう。
だいたい知ってる、という方は飛ばして、次項「PLGにおけるカスタマーサクセス」へ進んでいただいて構いません。

まずPLGの定義については、PLGを提唱しはじめたVCである OpenView Partners から。

PLGとは、エンドユーザーにフォーカスした成長モデルであり、プロダクトを主要ドライバーとして活用して、顧客の獲得、コンバージョンおよびエクスパンションをおこなう

OpenView Partners

Product-led Growth (PLG) という言葉からプロダクト中心と捉えがちですが、”end user-focused growth model” とあるように、実際にはエンドユーザー志向の成長モデルなのです。プロダクトがキードライバーというよりは、プロダクトに満足したエンドユーザーが事業成長 ― さらなる顧客獲得やエクスパンション ― をもたらすキードライバーと考える方がわかりやすいと思います。
古くは、Hotmail、Gmail、Facebook、Dropbox、最近ではSlack、ZoomからClubhouseにいたるまで、多くの先例が示すように、プロダクト内に「広げてもらう行動」を組み込み、ユーザーが広げる行動を取るよう促し、バイラル係数* を1以上にすることで、加速的な成長が可能となるのです。

*バイラル係数=ユーザーあたりの招待アクション回数×登録コンバージョン率。参考:『いちばんやさしいグロースハックの教本』

PLG採用企業はパフォーマンスが高い

OpenViewによれば、PLGを採用する企業の方がARR $10M以降やIPO後のパフォーマンスが高いことが示されています。2021年9月時点では、PLG企業はSaaS企業全体平均に比べて、Enterprise Valueが2.4倍、成長率1.3倍となっています(下表 Product-led Growth Index参照)。
この理由として、リードジェネレーション・営業・カスタマーサクセスのいずれにおいても、労働集約的ではないため、規模拡大しても高い成長率が維持できることを挙げています。

OpenView Product-led Growth Index

PLGが生まれた背景

PLGのような戦略が生まれ、効果を発揮するようになった背景としては、ソフトウェアが選定・導入される際の購買行動の変化が挙げられます。具体的には、決定権、ソフトウェアの置き場所、費用、購買プロセスという4つの面で大きな変化がありました。

ソフトウェア選定の主体(決定権)は、かつてはCIO(および情シス)にありましたが、BDM(事業責任者)へ移り、さらにエンドユーザーへとシフトしています。今では、エンドユーザーを中心とする一部門でのお試し利用だったSaaSが、正式に採用され、全社へ広がっていくことは珍しくありません。

オンプレミスが中心だったソフトウェアの置き場所は、クラウド前提が当然となり、柔軟性と拡張性を担保できるようになっただけでなく、複数のツールをAPIで連携する(個別開発しない)ことも容易になりました。
その結果、ITツールの導入にかかる費用は下がりつづけ、無料版でも十分に企業利用に耐える場合すらあります。それに伴い、買い方(ベンダーにとっては販売手法)も訪問営業中心から電話営業中心へ、そして今はオンラインで完結へとシフトしています。

PLGの3本柱

このようなエンドユーザー中心時代を象徴するPLG戦略を実践する上での3本柱は、やはりエンドユーザーの体験を強く意識したものになります。

  • エンドユーザーに向けて設計する  Design for the End User

  • 対価を受け取る前に価値を提供する  Deliver Value Before Capturing Value

  • GTMの一環としてプロダクトに投資する  Invest in the Product with Go-to-Market Intent


PLGにおけるカスタマーサクセス

前置きが長くなりましたが、PLG戦略を採ると、カスタマーサクセスにおいて以下の4つの側面で違いが出ます。

  • カスタマーサクセス対象となる顧客

  • 見るべきヘルススコア

  • カスタマーサクセスのゴール、求められる役割

  • 求められる人材・スキル

一方で、以下の点が重要であることは、PLGでもSLGでも変わりません。

  • リソース配分が課題になる

  • よって、既存顧客のセグメンテーションが重要

  • 顧客セグメントごとのカスタマージャーニーマップを描き、施策を適切に配置する

  • なかでもオンボードは死ぬほど大事

では、違いが出る4つの側面についてそれぞれ見た上で、最後にそれらがカスタマーマーケティングにどのような意味をもたらすのかを考えてみたいと思います。


違い1:カスタマーサクセス対象となる顧客

カスタマーは誰か

PLG戦略では、ユーザー体験を高め、「満足したユーザー自身にプロダクトを広めてもらう」ことが肝です。つまり、成長のレバーは「エンドユーザー」であり、エンドユーザーを増やすためにフリーミアム(無料プラン)を提供することになります。
つまり、有料プランを契約し利用している顧客(企業)だけでなく、無料プランを利用している顧客(企業)も重要な存在として位置づけられます。

また、PLGにおいては、顧客を企業単位で捉えるだけでなく、エンドユーザー単位で捉える必要性が高まります。先の「PLGが生まれた背景」で解説したとおり、エンドユーザーが中心となって社内で展開されていくため、エンドユーザー体験を高めることの重要性が、SLGよりもさらに高いからです。
SLGにおいては(正確には、SLG戦略で対象顧客となる大手~中堅顧客においては)、SaaSの選定や推進がエンドユーザーではなく、CIOや情シス、または事業責任者であることが多いため、エンドユーザー個々を見るというよりは、企業として捉え、個々人を顧客内のステークホルダーとして捉えるのとは、ニュアンスが異なります。

SLGにおけるカスタマー:契約顧客(企業)
PLGにおけるカスタマー:利用しているエンドユーザーすべて(無料プランユーザーも含む)

カスタマーサクセスの対象

この結果、カスタマーサクセスやカスタマーマーケティングが指す「カスタマー」も、SLGよりも広く捉える必要があります。

SLGにおいては、ほとんどのカスタマー(契約顧客)はセールスが介在しているため、利用開始時点ですでに多くのやり取りを交わした相手です。したがって、皆さんが実感しているとおり、セールスからカスタマーサクセスへの引き継ぎがポイントになるわけです。
ここで、契約顧客の中でも、どの顧客には手厚いカスタマーサクセスを提供するのかを見極めることになります。したがって、多くの場合は契約規模や企業規模(契約ポテンシャル)によって基準をもうけて、リソース配分を変えていくことになります。

一方で、PLGにおいては膨大な数の無料プランユーザーが、セールスや販売代理店を介さずに、オンラインで流入してきます。したがって、利用開始時点でSaaS企業は顧客についての情報をなにも持っていません。ですから、カスタマーサクセスのリソース配分のための情報がまったくない状態です。
PLGにおいては、こういった顧客についても、サービスの利用を通じて得られる利用データ(usage data)やエンゲージメントデータ(例:イベント参加数、フォーラム投稿数、コミュニティ活動量)を通じて、顧客(エンドユーザー)を理解し、サクセスさせていく必要があります
なぜなら、有料契約顧客であろうと、無料プラン顧客であろうと、とにかく彼らにバイラルの起点になってもらうことがPLGの肝である以上、どちらの顧客にもまずは「サクセス状態」になってもらう必要があります。

SLGにおけるカスタマーサクセス対象:選択的
PLGにおけるカスタマーサクセス対象:広範

だからこそ、PLG3本柱のひとつにあるように「プロダクトデータに投資する  Invest in product data」が重要になってきます。
個人的には、それに加えて上記したような、プロダクトからは取得できない「エンゲージメントデータ」の収集・分析への投資も同じくらい重要だと考えています。

これらのデータの重要性はあまりにも高く、統合的なデータインフラは必須です。リソース配分の優先順位付けをするためにも、データがないと死にますので、PLG戦略を採用する際はくれぐれもご注意ください。


違い2:見るべきヘルススコア

違い1で見たように、PLGではカスタマーとなる対象が広い。有料契約顧客だけでなく、無料プランの顧客も含め、利用している顧客すべて、しかもエンドユーザーひとりひとりをカスタマーとして捉えることになります。
そして、無料プラン顧客の方が多いはずなので、彼らをサクセスさせ、チャネルとして活用できれば、レバレッジ効果は非常に大きくなります。
一方で、無料プラン顧客である以上、無制限に社内のリソースを配分することは難しく、いくらカスタマーサクセス対象が広範であることが前提とはいえ、なんらかの基準によってリソース配分を変える必要があります。

ここでポイントになってくるのが、本気な無料プランユーザーの見極めです。

一般的にカスタマーサクセスのために見るべきヘルススコアとしては Adoption/活用度やMaturity/成熟度 が挙げられます。またリソース配分のための重要な基準としてビジネスポテンシャルを見ますし、解約リスクを減らし契約更新・増加を得るために顧客とのリレーションを確認します。

マチュリティカーブの例(『ザ・モデル』第10章 カスタマーサクセスより)
顧客ヘルスチェックシートの例(『ザ・モデル』第10章 カスタマーサクセスより)

やる気との闘い

一方で、PLGでは必然的に無料プランユーザーが多くなるため、「本気度」の見極めが重要になります。「やる気度」と言い換えてもいいかもしれません。

過去記事「あなたの「カスタマーサクセス」はどれ?マトリクスで考えるカスタマーサクセス4類型」で述べたように、(無料プランユーザーのように)顧客のコミットメントが低い場合は、時間を割いてもらうことにハードルがあったり、「簡単なんでしょ」というパーセプションに反してそれなりの労力を求める(やり方を覚えてもらう)こともあるので、やる気との闘いになるからです。

※参考記事


したがって、ここでもまたプロダクト内での顧客情報の収集と、プロダクト外でのエンゲージメントデータの収集が求められます。サインアップ後に頻繁にWebサイトを訪れていたり、メール開封率が高かったり、セミナーやコミュニティイベントに参加していたり、フォーラムへの質問投稿が多いければ、ある程度やる気があることがわかります。データだけでは見極めきれない場合は、Welcomeコールやオンボードセッションなどを通じて反応を探ることも選択肢です。そして、その反応をデータ化し、さらなるセグメンテーションと、優先順位付けに活かしていくことになります。


違い3:カスタマーサクセスのゴール、求められる役割

新規獲得のためのカスタマーサクセス

カスタマーサクセスの教科書(赤本、青本)などを読むと、一般的なカスタマーサクセスのゴールは解約防止(解約率の低下)、次いで契約更新およびクロスセル・アップセル(LTVの向上)、最後に口コミ効果(紹介・推奨による新規獲得)と解説されることが多いです。これは、取り組みやすさ順であり、計測しやすさ順でもあると思います。

もちろんPLGにおいても解約率の低下やLTVの向上は必要です。しかし、PLGではそれ以上に新規獲得のためのカスタマーサクセスという意味合いが強くなります。

なぜなら、必然的に無料ユーザーが多くなると同時に、先に解説したとおり、プロダクトに満足したエンドユーザーがさらなる顧客獲得をもたらすことを期待するのがPLGだからです。

(再掲)
プロダクトに満足したエンドユーザーが事業成長 ― さらなる顧客獲得やエクスパンション ― をもたらすキードライバーです。(中略)プロダクト内に「広げてもらう行動」を組み込み、ユーザーが広げる行動を取るよう促し、バイラル係数* を1以上にすることで、加速的な成長が可能となるのです。

したがって、カスタマーサクセス担当(部門)にも、解約率の低下を目指した活動よりも、むしろ新規顧客獲得につながる活動が求められる傾向にあります。
これは、無料プラン顧客を1社失うのを防ぐことと、無料プランのひとりのエンドユーザーがバイラルの起点になってくれること、どちらの価値が大きいか?と考えると理解しやすいと思います。

そこで具体的な施策として、紹介・推奨の促進や、UGC (User generated contents) の生成促進、アンバサダープログラムやエヴァンジェリスト制度、これらを統合するようなコミュニティプログラムといった、カスタマーマーケティング活動が求められるのです。

オンボード支援を通じたプロダクトフィードバック

もうひとつ、PLGでのカスタマーサクセスに求められるのがプロダクトフィードバックです。もちろんSLGにおいてもプロダクトフィードバックが求められることはありますが、PLGにおいての方がその重要性がより高まります。
ぶっちゃけたハナシ、無料というのは非常に強力な武器でして、リード獲得のための一般的なマーケティング施策よりも、はるかに多くの見込み顧客を獲得することができます。つまり、ファネルの上部が非常に太くなるわけです。
したがって、オンボード率の改善がもたらす効果は大きく、また無料プランユーザーであっても紹介・発信をしてくれればビジネスインパクトにつながるため、オンボードの成功にレバレッジが効くのです。

そして、PLGにおいてはオンボードとはプロダクト内でおこなうものですから、オンボード支援で得られた知見をプロダクトにすばやく反映することになります。
したがって、プロダクト内はもちろんのこと、プロダクト外(ハイタッチ)でも、一部の顧客向けにテスト的に施策を実行できる体制が求められます
PLG企業では、カスタマーサクセスがプロダクトチーム内に置かれることが多い理由も、これでおわかりいただけると思います。


違い4:求められる人材・スキル

ここまで見てきたとおり、PLGでのカスタマーサクセスでは、データの重要性が高く、そのデータを活用したオペレーショナルな活動が多くなります。顧客との相対コミュニケーションや個別提案力が求められる世界とはだいぶ様相が異なります。

したがって、いわゆるCSM(カスタマーサクセスマネージャー)としてイメージされる人材・スキルよりも、CS Opsやマーケター的な人材・スキルが求められます。CSMが一定数を超えたらCS Opsをアサインという順ではなく、むしろ先にCS Opsやカスタマーマーケターが求められると言っても良いかもしれません。また、アンバサダー・エヴァンジェリスト・アドボケーターを発見・育成するコミュニティマネージャーも早い段階で求められるでしょう(もちろんプロダクトのファンが一定数いることが前提ですが)。

また、プロダクトフィードバックの重要性が高いことから、サービス/テクニカルなバックグラウンドを持つ人材が活躍します。TAMやセールスエンジニア経験のある人が、一部の顧客向けにハイタッチでオンボードを支援し、そこで得た知見をプロダクトチームにフィードバックする、というサイクルが回せると、プロダクトの改善が加速します。

出典:『カスタマーサクセス・プロフェッショナル ― 顧客の成功を支え、持続的な利益成長をもたらす仕事のすべて


カスタマーマーケティングへの示唆

ここまで4つの違いを見てきました。繰り返しますが、PLGであってもカスタマーサクセスの基礎が大事なことに変わりはありません。

(再掲)
・リソース配分が課題になる
・よって、既存顧客のセグメンテーションが重要
・顧客セグメントごとのカスタマージャーニーマップを描き、施策を適切に配置する
・なかでもオンボードは死ぬほど大事

しかし同時に、カスタマーマーケティングの出番が多く、その価値がより強く認識されやすいと思いませんか?

カスタマーサクセスの対象が広く、データに基づいた活動が求められ、実験と改善をすばやく繰り返す。また、幅広いエンドユーザーの中からファンを発掘し、アドボケーター(コミュニティリーダー)へ育成していく。

こういった活動は、まさにマーケターの得意とするところであり、カスタマーマーケティングを実践したい/してきた人が活躍できる場面が多いのです。

また、対象とするカスタマーが広いだけでなく、効かせるポイント(作用点)も多いので、活動のバリエーションが多くなります
PLGにおける成長施策(Growth lever)は、SLGと共通的な ①見込み顧客(リード)を増やす、②見込み顧客の契約コンバージョン率を高める、③解約(チャーン)を減らす、④アップ・クロスセルを増やす、の4つに加えて、⑤無料プランお試し顧客の本格利用率を高める、⑥無料プランから有料契約への転換率を高める、と選択肢が増えます。
これもまた、カスタマーマーケティングを実践したい/してきた人にとって、恵まれた環境と言えるでしょう。

昨年のをちょっと修正。ファネルの太さ=顧客数なので先へ行くほど細くなります。

PLGは、どのSaaS企業でも選択できる戦略ではありません。ですから、あなたがカスタマーマーケティングに興味があるからと言って、「ウチもPLGにしましょう!」と言ってできるものではありません。

ですが、PLG戦略を推進する企業であれば、カスタマーマーケティングとして活躍できる場面が多いのは、事実だと思います。


まとめ

PLGは日本市場でも有効である一方で、PLGにおけるカスタマーサクセスには、①対象顧客、②ヘルススコア、③ゴール・役割、④人材・スキルの面でそれぞれ違いがあり、以下のような特徴があります。

無料プランユーザーが多くなるため対象顧客が広範であり、本気度・やる気度を見極める必要がある。
カスタマーサクセスによるプロダクトフィードバックがグロースに直結。
プロダクトデータ・エンゲージメントデータの重要性が高く、CS Opsやカスタマーマーケティングの活躍の場が多い。


おわりに

PLG実践中の皆さんへ

これわかるー、そこは違うぜー、ウチはこんな風にやってるよー、などなど、ぜひ感想・コメント・反論をください。まだまだPLG実践者は少ないと思いますので、知見の共有に加えて、仲間を見つけるという観点でも、発信していただけると嬉しいです!小さなことでもかまいませんので。

世界を目指すSaaS経営者の皆さんへ

PLGは決してバラ色の世界でもなければ、SLGより簡単なわけでもありません。また日本市場の商習慣を考慮すると、むしろ難しいことも数多くあります。PLG一本鎗ではなく、SLGとの組み合わせが求められるかもしれません。この場合、とても難しい経営が求められます。

一方で、国内での資金調達環境が、かつてないほど恵まれていることも事実であり、資本力が問われるPLG戦略を採りやすくなっているとも言えます。(参考文献にPLGにポジティブそうな日系VCな方のnoteを貼っておきます)

日本市場だけでなく世界を取りに行くならば、PLGという選択肢を考えないわけにはいきません。もしも市場特性、事業特性にフィットを感じたら、ぜひご検討くださいませ!


参考文献


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萩原 雅裕|Prodotto代表
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