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カスタマーサクセスを「マーケティング仕様」にアップデートする

本記事は、タイトルからわかるとおり、カスタマーマーケティングに関するMarkezine掲載記事へのオマージュです。
カスタマーマーケティングを実践するために、カスタマーサクセスがやらなければならないことは何なのか、今年1年の学びをもとに、考えてみたいと思います。


このnoteは 長橋教祖hoozmさんら が主宰する #cmktアドベント2020 のエントリーnoteです。


なぜカスタマーマーケティングなのか

まずは、この問いから始めてみましょう。

あなたは、なぜカスタマーマーケティングに興味を持ったのでしょうか?

このアドベントカレンダー企画記事を読んだり、カスタマーマーケティングmeetup(#cmkt)に参加している皆さんは、なぜ「カスタマーマーケティング」に興味を持ち、継続的に情報収集し、実践しはじめているのでしょうか?

かなり多くの人が、カスタマーサクセスをスケールさせたいから、だと思います。

私もそうです。
弊社が扱っている LINE WORKS という商材は、始めるハードルが極めて低いため、とても多くのお客様、具体的には10万社以上のお客様にご利用いただいています。
とてもありがたいことである反面、すべてのお客様をサクセスへ導くのは非常にむずかしい状況です。

1対1であれば伝わる、届けられることを、どうやって膨大な数のお客様に届ければ良いのか?
まさに、カスタマーサクセスをマーケティング手法でスケールさせること=カスタマーマーケティングが必須な状況です。

商材や規模は違えど、同じ課題を持っているカスタマーサクセス担当の方は多いと思います。

ところで話を進める前に、スケールさせる前にやることあるよね?というカスタマーサクセスの女神からの戒め記事はもう読んであると思って大丈夫でしょうか。

また、信者の皆様におかれましては、教祖様による講演で、蜜だけでなく毒の部分についても、しっかり理解されていると思って大丈夫ですよね。

では、これらを十分に理解した上で、話を進めましょう。


カスタマーサクセスをスケールさせるとは、何をすることなのか

次の問いはこれです。

カスタマーサクセスをスケールさせるとは、何をすることなのか?


教祖様は「体はマーケティング、心はカスタマーサクセス」とよくおっしゃってますね。
対して、プロダクトマーケティング→フィールドマーケティング→カスタマーサクセスと経験してきた私は「体はカスタマーサクセス、心はマーケティング」という感覚です。

そんな私からすると、記事に出てきた図、わかるんだけど、ちょっとモヤモヤするんですよね。

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いや、体がマーケティングにあったときは気にならなかったんです。でも、体がカスタマーサクセスになった今となっては、緑の丸の部分、「はしょりすぎじゃね?」と思うのです。

「利用開始・契約」と「継続利用」の間には、なかなか解決しないオンボーディングの苦労とか、PoC/小規模利用から本格展開への壁とか、効果の可視化とか、先方都合による停滞とか、めっちゃいろいろあんねん!
て思うんです。
わかりますよね? カスタマーサクセスな皆さま。

そこで、カスタマーサクセス視点で、丸の部分をもう少し拡大してみると、こんな感じになります。悲しいほど、ファネルが太くなりません。むしろ細まることすらあります。

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さて、この絵の中の点線は何でしょうか?

ファネルを通るのはお客様です。
点線は、私たちがファネル間に流通させるモノ、各ファネルを担当するチームつなぐ活動です。

カスタマーサクセスチャートに描かれた点線は、私たちが流通させるモノであり、それは ユースケース(サクセスケース)です。

ちなみに私は、ユースケースを以下の5つの要素がカバーされたモノと考えています。

• お客様の中のどんな社員が
• どんな業務を
• サービスのどの機能を使って
• どう活用し
• それが、どんな成果や価値をもたらしているか

例えば、LINE WORKS の事例では、こんな風になります。

• XXX製作所の営業社員と、営業部長、常務、社長が
• 見積書の承認業務を
• LINE WORKSに専用トークルームを作って
• それまでのワークフロー型ではなく、順番無関係な返信形式に変更した。
• これにより、最大1週間掛かっていた承認作業が、半日で終わるようになり、競合よりも早く見積もりが提示できるようになった。

このようなユースケースを、見込み顧客、またはこのユースケースを知らない多数の既存顧客に届けることで、1社のサクセスをスケールさせる。そして、新しいデマンドを創出する。
これが、カスタマーマーケティングだと考えています。


汎用化の罠、自社で頑張る罠

ところが、ここに大きな罠が待ち受けています。
うかつに始めると、まんまとこの罠に引っ掛かります。

私はまんまと引っ掛かりました。
そして、今こうして、涙を流しながら記事を書いています。
皆さんにはぜひ気をつけてもらいたい。

① 汎用化の罠:スケールさせたいので、多くの人に伝わるよう、言葉やユースケースを丸めてしまう。

カスタマーサクセスの現場で見聞きするのは、業界用語、生々しい言葉、業界特有の業務への適用、個別具体的な設定方法や運用ノウハウです。
コンテンツを作ったり、セミナーで話すとき、ついつい、さすがにこのままでは理解できない人が多いだろう、当てはまらない人が多すぎるだろうと考えます。そして、多くの人にわかるように、翻訳・解釈して、汎用的な形にしておこう、と言葉が丸まっていきます。

これが大きな罠なんです。

1対1では伝わるのに、1対多だと伝わらなくて苦労しているから、スケールさせたいんですよね?
では、なぜ1対1だと伝わっていたのでしょう?

それは多くの場合、この生々しさまで含めて伝えていたからではないでしょうか。つまり、業界用語や生々しさ、個別具体性を削ぎ落してはいけないのです。

え、それじゃ、ものすごく限られた人にしか伝わらない?
そのとおりです。
だからこそ、深く刺さるのです。

① 汎用化の罠への対策:実際にお客様に刺さっている内容(ユースケース)をマーケティングでの訴求や、GTM戦略そのものに反映しましょう。
伝える内容はしっかりカスタマーサクセスチームが作った上で、GTM戦略へ反映する部分では、マーケティングチームや営業チームの力を借りましょう。

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② 自社で頑張る罠:スケールさせたいので、多くの人に届くよう、自社でコントロールできるマーケティング手法ばかり使ってしまう。

スケールさせようとすると、コンテンツ(メール配信や自社メディアへの掲載)やイベント・セミナー、場合によってはそれらへ誘導する広告といった、自社でコントロールしやすい手法に偏りがちです。

ところが、①のような個別具体性の高いコンテンツは、どこまでいっても制作が終わりません。ユースケースは多様にあり、また次々と生まれていきますから、カスタマーサクセスチームやマーケティングチームがどんなに頑張っても、制作に追われ続け、そしてそれらが届かない、というループに嵌まります。

この罠から抜け出すには、どうしたらいいでしょう?

答えは ② の矢印を作ることです。
ユースケースの流通を自社だけで頑張らず、お客様による発信を促す。そもそも、ユースケースはお客様の利用実態であり、それをベンダー側が話すよりも、お客様自身が話した方が説得力があります。
でも、放っておいてもユースケースを発信してくれるお客様は、そんなにたくさん出てきません。
だからこそ、カスタマーサクセスチームが接してきたお客様に対して、発信を促すところまでやりましょう。

発信の手法は、ユーザー会やコミュニティイベントでの登壇・発表、Q&Aフォーラムへの投稿や質問への回答、ブログ、Qiita、Twitterなどなど。場合によってはタイアップ記事での露出や、外部の大型イベントでの登壇などもあり得ます。

② 自社で頑張る罠への対策:お客様を盛り立てたり、見本を見せたり、そそのかしたりしながら、ユースケースを発信してもらえるようお客様を促していきましょう。
ここではマーケティングチームの力に加えて、コミュニティチームの協力が得られると心強いです。


カスタマーサクセスを「マーケティング仕様」にアップデートする

我らが師匠、Sansanの山田ひさのりさんは、記事中で「マーケターは顧客の成功体験に精通している必要がある」と書いています。

これを発展させて考えると、「カスタマーサクセス担当者は、顧客の成功をスケールさせる手法に精通している必要がある」のです。

カスタマーサクセス担当者は、スケールさせる手法、つまりマーケティングについて精通すべきなのです。

・個々のお客様をサクセスへ導き、具体的なユースケース(サクセスケース)を作る力。

今まで発揮してきた、このような力に加えて、スケールさせる手法を知ることが求められています。

・業界用語や専門用語を使い、個別具体的な設定方法や運用ノウハウを交えて、訴求力の高いコンテンツを制作する力。
・自社発信に加えて、顧客も発信者にしてしまうことで、多くの人に届ける力。


カスタマーマーケティングは、マーケティング活動です。
ですが、それをマーケティングチームの力に委ねるのではなく、カスタマーサクセスを「マーケティング仕様」にアップデートすることで、カスタマーマーケティングがさらに力強く実践できるようになるのだと思います。


おまけ:フリーミアムとPLGによる、Another Model

さて、本編は以上ですが、実は弊社が直面している状況は、ここにさらにもうひと捻り加わります。

弊社は、いわゆるThe Model型の Sales-led Growth(SLG)による事業成長に加えて、フリーミアム(無料プラン)を使った Product-led Growth(PLG)による事業成長も同時に目指しています。

マーケティングによる獲得〜自然発生的な有償化という理想的な流れができている一方で、ファネルはかなり複雑になります。
また、限られた社内リソース(人、時間、お金)で、2つのファネルを動かす必要があるので、内部プロセスや組織づくりも複雑になります。
ただ、このチャレンジを続けていることで、とんでもない事業成長が実現できているのも、また事実なのです(語彙力不足な表現ですが、大人の事情と思ってください)。

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フリーミアムの場合、ファネルは上図のようになり(かなり複雑になりますが)、カスタマーマーケティングの出番がさらにハッキリします。

試用中のお客様は、既存顧客でありながら、見込み顧客状態です。このようなお客様に対して、サクセスに導くためのマーケティングを行うことで、有償契約や継続利用へつながる。
まさに、顧客のサクセスと自社のサクセスが両立します。

このファネルと Another Model の解説はまだまだありますが、ここから先は来年の連載記事のために取っておきましょう。
なお執筆依頼は、まだ来ていません。


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