通級で好きや得意を指導のきっかけにする理由〜急がば回れ〜
通級に来る子供たちやその保護者は学校や日常生活で感じている困難を克服するために通級に来ています。
ただ、困難なことを改善したいとはいえ、困難なことばかりに着目しても改善は進まないことが多いです。
時間を守る。忘れ物をしない。対人関係。・・・
これらに直接アプローチしても、なかなかうまくいきません。
◯苦手なことに向き合うのは簡単ではない
私が担当する生徒で初対面の人が苦手な子供がいました。
通級の指導に私のメンターが指導助言のために同席した際も、終始緊張し固まってしまいました。
その生徒はあるカードゲームが好きで、定期考査をほったらかしてゲームに熱中してしまうので私も保護者も先生方も困っていました。
定期考査に限らず苦手なことは回避してしまう傾向がありました。
回避してしまう傾向は小中学校の生活の中で染みついたものなので、すぐには緩和できません。
通級で困難を克服したいと本人が思っていても、体が回避してしまうのです。
ですから、指導開始当初はいろんなアプローチで困難を克服しようと試みましたが、なかなかうまくいきませんでした。
〇好きなことをきっかけに変化が
ある時、その生徒が好きなカードゲームのイベントを同じ自治体の子供家庭支援センターが開催していると聞きました。すぐにその生徒に案内し、即決で参加することになりました。
そのイベントが開催される子供家庭支援センターはその生徒にとって、初めての場所であり、初対面の人ばかりでした。初初づくしです。
当日を迎え、初めての場所でしたので私も同行しました。その生徒はいつも以上に緊張し、一人ではその施設に入ることが難しかったくらいです。
しかし、入ってしまえば施設の大人の方に自ら質問したり、同年代の子供たちと好きなゲームを介して積極的に交流していました。
この時、私は好きなものがあり好きなものをきっかけに行動を起こすことの効果を感じたのです。
好きなことであっても、イベントに参加するには苦手なことも付随します。
今回の事例であれば初対面の人に会ってコミュニケーションをとらないといけないわけです。
好きなことをきっかけにしたことで、苦手なことにも臆することなく向かい合う姿がありました。
その時は緊張もしたようですが、後日の通級指導のなかでその生徒とイベントについて振り返りました。
その生徒は緊張はしたが、今回のイベントは成功体験となり大きな自信になったようです。
◯急がば回れ!
それ以降のその生徒は他の苦手なことも少しずつ向き合えるようになってきました。
苦手なことに向かい合うことができたという体験はその生徒にとっては大きな自信となります。
通級では得意を伸ばすことが大切だと言われますが、高校生年代になると、もう目の前に就職が迫ってきています。
だからこそ、通級指導においても焦りを感じます。
焦って課題克服にばかり着目していても立ち往生どころか、さらに自尊心を傷つけかねないです。
急がば回れで、子供が取り掛かりやすいものから活動の幅を広げる道に目を向けることが大切です。
通級は個別指導が基本なので、一人に時間をかけて支援が可能です。その強みから「急がば回れ」を体現した指導が可能なのです。