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最強の製造現場<182/1000>

【ラジオ体操485日目】
『ニコチンレス生活206日目』

こんばんは。
製造業の完成系はトヨタ一択だと思っていたけれど、新たな形があることを知って、リアクション出来なかったコマリストです。


今日は『誰も到達できない境地』というテーマで書いていきたいと思います。


社員数は36万人を超え、日本一知名度が高い会社と言えばトヨタ自動車です。


関連会社や子会社下請け企業も含めれば、100万人以上の生活を支えているモンスター企業。


大野耐一副社長が体系化したトヨタ生産方式は、世界中の企業が参考にしているとも言われています。


改善という文化が、『KAIZEN』という表記になって広がったことも、世界のトヨタと呼ばれる所以だと思います。


今日は、トヨタ生産方式を超えているんじゃないかという中小企業の現場にドン引きしたというお話です。


真似することは難しいかもしれませんが、何かの参考にはなるかもしれません。

軍隊のような会社

今日の午後にお会いしたK社長が営んでいるK工業という会社がヤバかった。


この会社は、金属の合板から必要な形をレーザーで抜き、タップを切ったり、曲げたりといった加工を施した上で組み付けを行う『鈑金』の会社です。


1時間ほど、会社の方針や近況なんかを教えて頂いたところで、現場を見学しながらさらに詳しい話を伺いました。


この会社の運営は、体育会系そのもの。


朝の8時半から始業すると、全ての社員が1日の予定を書き出した後に駐車場を5周走る。


その後に、一人一人が1日の予定を共有し、設備の掃除を行う。


半日が終わると、午前中の反省と改善を書き出す。


そして、昼休みの終わりには、また駐車場を5周走り、設備の掃除をする。


さらに、15時の休憩終わりにも同じような光景が繰り広げられる。


そうです。毎日駐車場を15周走るんです。


しかも、仕事終わりには1日の振り返りを全員が毎日書き出す。


このくらいなら、実施している企業もそれなりにあると思います。


この会社がすごいのはここから。


金属の加工を行う会社なので、加工機の大きな音が鳴り響く現場です。


けれど、それよりも大きな音が現場の中には鳴り響いています。


それは、社員達が図面寸法と実寸法を声に出して確認しながら図面に書き込んでいる時の声。


まさに軍隊のそれ。


そして、この社員達が生み出している生産スタイルが、トヨタ自動車を超えているんです。

オーケストラ

駐車場を走ったり、何度も何度も掃除をしたり、大きな声を出したりしながら軍隊のように生産を行っている現場が生み出しているのがどんな生産スタイルだったのか。


多くの製造業では複数工程がある場合、各工程の間に中間在庫というものが存在します。


前後の工程だけでなく、全体の加工時間を考慮して、安全在庫と呼ばれる在庫を抱えながら生産を進めていく。


この中間在庫の最適化を行い、必要な時に必要なものを必要なだけ生産するジャストインタイムというのがトヨタ生産方式の中核を担っている。


つまり、中間在庫というのは必要な分だけあるべきものであるというのが基本になっています。


仮に、5つの工程があるとすれば、1つ目の工程を終了したものが次の工程の材料として蓄積される。これが中間在庫です。


各工程の間にそれが存在するということ。


自動車産業は3ヶ月先までの生産数量を示す『内示』というものをベースに組み立てられていて、これを落とし込んだ「かんばん」を用いてジャストインタイムを実現している。


では、この会社はどうなっているか。


そもそも、この会社が手懸けているのは自動車関連部品ではありません。


この会社が扱うのはエレベーター関連部品。生産数量は『3日後』までしか分からないという業界です。


これでは「かんばん」など活用できるはずがありません。


そして何よりすごいのは、この会社には中間在庫が一切存在しないんです。


最初の工程が終わる前に次の工程がスタートし、さらにその先の工程も同時に進行する。


わかりやすく数字を使うと、最初の工程で100個の加工を行うとして、10個ほどできたあたりから次の工程がその10個を加工し始める。


そして、その先の工程も次々と加工していく。


結果、朝9時に急遽入った案件であっても、午前中には加工を終えて出荷される。


しかも、自分で加工した製品を自分でお客様のところに納品に行くので、その間に動いていない設備を別の人が活用するので一切停止することなく生産が行われる。


こんな神がかった生産システムを、全てアナログで実現しているんです。


というより、紙すら使わずに頭だけで成し遂げている。


全ての社員が、リアルタイムでだれがどの製品をいくつ加工し、何時までかかるのかを互いに把握しているんです。


しかも、互いの声を聞くだけで。


まさに、指揮者のいないオーケストラのような状態です。


さらに面白いことに、一日の仕事が早く終わっても前倒しの仕事はしないんです。


なぜなら、前倒しすると「中間在庫」が生まれるから。


計画していたものが15時に終われば、定時までは一切仕事をせずに、BBQをしたりザリガニを取ったり、雪合戦をしたりして過ごす。


3日先までの生産量を見て、社員達が残業をするかどうかを判断し、土曜日出勤するかも決める。


もうね、これはどんな大企業も真似出来ない最強の組織だと思うんです。


社員曰く、
『設備は納入した日から進化することは無いけれど、社員は時間が経過するほどに進化する。ウチは「人」の差別化に特化している』とのこと。


設備の見学に来た大手メーカー社員が、現場で働く社員のことばかり質問してくると言うんだからすごいですよね。


ここに書ききれない、面白い話をたくさん教えて頂き、本当に勉強になったので、これから出会う製造業者に共有したいなと思います。


DXとか叫ぶ前に、人による差別化を実現する。


全ての中小企業者に挑戦して頂きたい最高の取り組みだと思います。

じゃ、またね!

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