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中国

チベットのラサからバスで4泊5日かけて、中国の成都に向かいました。これは今までの旅移動で、ワースト3ぐらいにきつかったです。体力的にも精神的にも。今ならラサから中国各地には鉄道が通っていますが、当時は移動手段が飛行機かバス。飛行機が2万円ぐらいで、バスが5千円ほど。迷わずにバスを選んだ自分を殺してやりたいです。

まず、バスに乗り込んだ時点でとても臭いです。干物でも食っているのかと思ったけど、ただただ臭い。その臭いの中で換気もせずにタバコを吸ったり、ひまわりの種なんかを食ベてはそこら辺に捨てている中国人。臭いがさらに増します。臭いは無言の暴力。

バスの中は2段ベットが3列になっていて、乗員全部が埋まった後にそのベットとベットの通路にも人をいれてきます。僕がベットで横になると、柄本明似のおじさんの顔が10センチ近くにあります。このおじさん、食べたものを窓際の僕に、「これ、捨てて」という感じでガンガン渡してくるので、僕が窓からガンガン外に捨てることになります。なんか僕が悪いことをしている気になりましたが、だんだん慣れてくると、自分のものもガンガン捨てる様になってきました。上のベットのおばさんもいろんなものを捨てるから、窓の風景を見てると、上からみかんの皮とか空き缶が降ってきます。多分、ゴミ箱という概念がないです。

ちなみにバスの中には50人ぐらいで、旅行者は僕一人。あとはみんな中国人。英語が一切通じないのでバスが止まる度に「飯か?トイレか?」と、運転手にジェスチャーするけど、ほとんどが故障でした。そんな感じで一日目が過ぎていきます。

2日目の昼。乗っているバスが公安 (中国の警察) に止めらます。なんでも乗員オーバーなのが問題らしいです。そりゃそうだ。バスの添乗員が公安に必死に頼み込んで、通過させてもらいました。お金でも包んだのかもしれないです。

夜に何回か故障して、近くの村で道具などを借りて一生懸命にバスを修理するおじさん。どうもエンジンがいかれてしまったらしいです。車内のバスのベットでは、いちゃついてる若いカップル。毛布をかけだして静まったと思ったら、吐息だけが聞こえてきました。こちらのエンジンの方が動き出してしまったようです。おじさんは素知らぬ顔で修理しているけど、確実に気になっています。中国で「一人っ子政策」は、なかなか難しいと思いました。

3日目の朝。どこかの駐車場にバスが止まり、外でバスの運転手と添乗員が乗客と話し込んでいました。隣の人に筆談で聞いてみると「公安のチェックが厳しくなる。乗客が多すぎて成都まで行けない」とのこと。それを聞いた(読んだ)時、正直、一刻も早くこの人民バスから降りたかったので嬉しかったのを覚えています。まあ、降りた所で違う人民バスに乗らなければいけないんだけど。

「あー、でもない。こー、でもない」と、中国人が出し合った結果は違う車を借りて、そこに何人か人を分けて突破しようということになり、20人近くがどこかの車に乗せていかれました。バスの中がかなり快適になったのを覚えています。

窓の外を見ると一本道がずーっと続いていて、途中ウトウトして2時間ぐらい居眠りして起きてみますが、同じ風景が延々と続いてます。中国はやっぱりでかい。たまにその道を五体投地(手・両膝・額を地面に投げ伏して礼拝すること)しているファンキーなお坊さんもいたりします。

4日目の昼。山道に軽トラックぐらいの岩石が道をふさいで、バスが通れませんでした。その岩石を見ていた乗客の中国人たちが、バスから降りて岩石を囲みだします。だいたい20人ほどの男性達。まさかと思っていたら、みんなで持ち上げようとしました。

もしかしたら、いけそうかなという人数でしたが、全然ビクともしなかったです。そのあと、クレーン車がサクサクと運んでいきました。彼らの「ためしてガッテン」という気持ちにはエールを送りたいです。

5日目の昼。無事に成都へ到着しました。バスの中で日本人は僕一人だったから、物珍しかったのか、中国人の若者が話かけてくれました。彼の言っている事の30パーセントも理解できなかったけど、いろいろとご飯をおごってくれたり、成都に着いてからは彼の友達も呼んで一緒にパンダを見に行ったりしました。

「お金を払うよ」と言っても、「もし僕らが日本に行った時に、日本を案内してくれればいいよ」と言って受け取りませんでした。その当時は北京の日本大使館に卵を投げられたりと、反日運動が発生していた時期。メディアは一方的な情報を流すことと、いろいろな中国人がいることが分かりました。

彼と別れた数ヶ月後に、実家へ彼からお菓子が届きました。僕はまだ日本に戻っていなかったので母がお菓子を食べたのだけど、とてもまずかったらしく、すぐに捨てて「腐ってるのかと思ったわよ」とメールが来ていました。日中関係はなかなか難しいです。

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