IBD患者の今宵の食卓 第二十九卓
あまり知られていないようですが人参は葉っぱも立派な食材になります。昭和三十年代頃は間引き人参も八百屋さんの店頭に並んでいたのを記憶していますが、今は時々葉付きの人参を見かけても間引き人参を店頭で見ることはなくなりました。
お品書き 6月20日(夕)
・鯒の刺身
・鱧の卵の玉子とじ
・ポテトサラダ
・人参葉の炒め煮
・酢もずく
・玉子豆腐
・焼き海苔
・たくわん
・鱧出汁のすまし汁(三つ葉、木綿豆腐)
・白飯(魚沼産こしひかり)
この日に手間をかけて作ったのは人参葉の炒め煮だけで後は残り物や買ってきたものに薬味などを添えただけなのですが、ちょっとした懐石料理のようになりました。
鯒(こち)は年中美味しい魚ですが旬は夏と言われています。魚は白身魚が一番好きなので、これからは真子鰈(まこがれい)や鱸(すずき)なども楽しみな季節になります。
この日の数日前に鱧を一匹ネットで注文して買ったところ(高かった!)卵もついてきました。鶏卵でとじるのが一般的な食べ方のようです。鱧は京料理でよく使われる食材のようで味付けも京風に控えめが素材の味を活かします。
作り置きしておいたポテトサラダです。作るのには結構時間がかかるので、これと人参葉の煮物とは作る日をずらさないと大変です。
何クールか前にTBSのテレビドラマで『リコカツ』という番組が放送されていましたが、北川景子が家事下手の設定で、(パーティー料理で)「作れるのはポテトサラダ位」と言われていました。私は内心これを見ていて少し違和感を覚えた記憶があるのですが、ポテトサラダは料理の格としては脇役だとしても、作るのには大変な手間暇がかかるのです。ポテトサラダが作れてもなお料理下手と言われるのは「それはないよ」と思いました。
まだほとんど根が成長していない時期の間引き人参なら葉も茎も使えるのですが、写真程度に根が成長する頃の茎はとても硬くなっています。茎を取り除いて葉先だけを使うのがコツです。
菜園で採れたものの廃物利用程度の気持ちなので歩留まり2割程度に本当に葉っぱの先ばかりを集めて炒め煮にしました。菜種油で刻んでおいた葉と輪切りにした根を同時に炒めたのち、酒、出汁、味醂、鶏ガラスープの素、薄口醤油、三倍出汁で味付けしています。
玉子豆腐とかもずくは冬場だとそれだけでも汁物代わりになるのですが、今の季節だとやはり前菜の位置づけになるかなと思います。
鱧出汁の吸い物には豆腐がよく合います。身体にはあまりよくないかもしれませんが、鱧出汁の吸い物の豆腐を噛まずにそのまま呑み込むその時ののど越しが好きでこどもの頃からよくやっていました(なぜだか鱧出汁の吸い物の時だけなのですが)。いずれにしても誤嚥などしてしまうと大ごとなのであまりやらない方が良いです・・
夏場になるとどうしてもご飯よりも麺類を食べたくなるのですが(いや夏場に限らずかな?)、一日のどこかで一食はご飯を食べないと体調がおかしくなってきます。やはり原点は米なのだと思います。
主食の話ではなく酒の話になりますが、世の中から一種類だけ酒を残してあとは消えてなくなるとすると、私なら間違いなく日本酒を残すと思います。
一年通して飲む量でいうと圧倒的に赤ワインなのですが(←一升瓶ワインを箱でしょっちゅう注文している)、料理に使うことを考えると日本酒に勝るものはないように思います。
和食、中華、一部の西洋料理、だいたい日本酒だけでカバーできます。逆にワインが今日のような献立で日本酒の代わりになるかというとまず無理でしょう、人参葉の炒め煮にしても鱧の卵の卵とじにしても、鱧出汁のすまし汁にしてもちょっとワインを使うことなど想像できません。
やはり家庭料理でも原点は米なのだと思います。