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自分なんてわからないものだという話だと思っていた


久しぶりに読書感想文を書いてみる
今回は幾つか積読本にしてある養老孟司先生から『「自分」の壁』
たしか自分が高校生くらいの時に、先生を一躍有名にしたベストセラー書『「バカ」の壁』を読んでいた。内容はほとんど覚えていないものの、大衆をバカ扱いしてるんだ!すげえ!と単純に驚いて記憶している。
今回の本を読んだ、ザッとした感想は、第一章で語られている自分なんて意外とわからないよねということだと思っていた。
そこから自分とは〜という話が続いていくものだと思っていたが、読み進めていけばいくほど、政治の話、人も政治も参勤交代のように田舎に定期的に行かせるようにした方がいいとか、そうした養老先生のご意見的な内容となっていた。

前書きに『あとは本文を読んでください。ここで書いたことと、関係ないとか、矛盾するとか、そう思ってくださっても結構です。でも、どちらも結局は一人の人間が書いたものです。自分の問題って、ずいぶん怖いところがありますよね。』
と、要は「色々書いたけど、これは私が思ってることなんでそこのとこわかってね」ということだと受け取った。

幾つか参考になった気がする話を取り上げてみる

p.16溶けていく自分

生物学的な「自分」とは、この「現在位置の矢印」ではないか、と私は考えているからです。
(中略)「自分」「自己」「自我」「自意識」等等、言葉でいうと、ずいぶん大層な感じになりますが、それは結局のところ、「今自分はどこにいるのかを、示す矢印」くらいのものにすぎないのではないか。

どういうことか?
皆、自分は〜と言っているがあくまでそれは自分が認識しうる地図がある場合にのみ役に立つことで、それがなければ自分なんてあっても仕方のないものだよということのようです
たとえば、今自分はこれをコメダ珈琲で寛ぎながら書いているわけですが、自分が今コメダ珈琲にいて〜次は〜と認識できているから特に不安もなく出来ていることです
ここから駅への地図もわかり、どの電車に乗れば目的地に到達できるかもわかります。
ただ、その地図がなければ?自分は自分でしかなく、地図と一体化してしまうようです。

ここで、アメリカで脳神経解剖を研究している女性学者ジル・ボルト・テイラーさんの例があげられています。
三七歳のときに、脳卒中を起こして左脳の機能を破損してしまったときのことを、自身の職業意識からか書き留めていたそうです。(『奇跡の脳』)
そこでは、自分が液体になったようだと書かれており、

からだら浴室の壁で支えられていましたが、どこで自分が始まって終わっているのか、というからだの境界すらはっきりわからない。なんとも奇妙な感覚。からだが、固体ではなくて流体であるかのような感じ。まわりの空間や空気の流れに溶け込んでしまい、もう、からだと他のものの区別がつかない

とありました。あぁ、なるほど。たしかに自分が!とか自分の認識では!なんていう時があるが、それは周りの条件がしっかりしている時なのだなあと。
先生が書いていることとはズレるのかもしれませんが、夢を見ている時、時たまそこで起こる落下する感覚はとてもリアルです。きっと体がジェットコースターに乗っていた時のことでも覚えているのでしょう。
その時は自分でどうこうできません。それは自分が自分を認識できておらず、そこに地図がないから。
よって、ただ自分がいるということだけを認識しているだけの状態。それがここでいう、自分は地図上の矢印でしかないということなのだと。

また、これも多少ズレているとは思うのですが以前に少し読んだ鷲尾清一氏の本にあった
自分の体から出たものなのに、外に出た瞬間、それは自分とは違う何か汚いものとして観念されるという話
これも似た感じがあり興味深かった。
唾液、排泄物、鼻糞などありますが、自分もそれらが所定の位置になければ気持ち悪いと思いますし、ついさっきまで自分の体の中にあったとはいえ、外に出て悪臭を放ち始めた便を見て、それを掴もうだとか、ましてや食べたいなんて思いません。
でも考えてみたら、これは不思議な話で、自分が汚いと思っているものも実は数秒前までは自分の体内にあったわけです。
唾液にしろ、鼻くそにしろ、小便、大便にしろ。
それらは体の中にあって自分を構成していたものなわけです。
にも関わらず、外に出た瞬間から自分ではないどころか、自分の体内の一部であった部分を忌避するようになる。
自分と自分でないものの境界線ってなんなんだろうか?そう考えさせてくれる内容でした。


本書はそこから自分が!自分が!というのはアメリカの影響であるとか、社会的にはそんな自分が!自分が!と前に出るのは実はあまりよろしくないであるとか。そんな話にまで広がっていきます。
ただ、第一章との関連が何なのか分からず、なるほど、なるほどと、要所要所だけつまみ食いするような読み方となりましたとさ。

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