『こいにおちました』
【拝啓】
・私はいつも通り何のへんてつもない日々を繰り返している。
いや、その日だけは違かった。
ただただ、その日だけはいつものような何のへんてつもない日々とは違かったんだ。
『こいにおちるおとがした。』
”その場所で確かに。”
・私の心はどきどきと、心臓がの鼓動がばくばくしていた。
初めての感情だった。
逃げ出した。
・気がついたら私は走りだしていて行くあても考えられないまま、『どうしよう』、『どうしよう』と、初めての感情をいだいた。
・どうしようと考えながら自宅へと帰り、今日一日のことを振り返る。
今日のことは私にとって初めての経験だった。
・そして一人で考えても考えても自分でも納得のいく答えが出ず、誰に相談すべきか、むしろ相談しないべきかも迷っている。
いままでかいたことのないような汗が止まらない。まるでどろどろのぬかるみにはまってしまったときのような
『苦しい』
そう、確かにその通りだった。
・もしかしたら誰にも相談せず、このまま内なる秘め事としてとどめておくのが一番いいのかもしれない。
ー。
・そうして私はとにかく落ち着いて、この気持ちを大切にこころに秘めておくことにしたんだ。
・しかし現実はそう甘くはなく、まるで私だけがこの世界に取り残されたような、私だけが世界の秘密を知ってしまったような、世界から疎外されてしまったようにも思えたんだ。
考えることをやめたい。
そんな感覚ー
・いつも通りの生活をし、この気持ちと向き合いたい。
そう思ったこともあるけど。
一日、二日、そうして何日も過ぎ、私のその時の感情も落ち着きを取り戻し、またいつもの何のへんてつもない日々をまた繰り返していたっけ。
・でも
私の中に”新しい感情”が芽生えた。
いつの間にか私の心の中に種をまき、水をやり、やがて芽が出るように
『あの時のどきどきをもう一度体験したい。思い出したい。』
と思うようになった。
・しかしあの時とは違った”何か別の感情”が私の中に芽生えた気がしたんだ。その思いは
考えることをやめたい。
そんな感覚ー
”とは少し違ったような感覚”だったんだ。
・そして私はあの日を思い出すことにした。
逃げずに、もう一度、、、
・私は”その場所”へと向かおうと決めた。
今度は逃げ出さない。もうあの時の私じゃない。
ーもう、あの時の私じゃないのだ。ー
・あの頃は
私はいつも通り何のへんてつもない日々を繰り返していて
”普通”という言葉で終わってしまうような人生をただただくりかえしていたのだ。
・こころのすきま風がさしこんでくるようにさみしくて
そのこころのすきまを埋めたくて
ただ何でもない普通のわたしの事を大切にしてくれた”男性”がいた。
私はこいにおちたのだ。
何のとりえのない私を気遣ってくれて、大切にしてくれて
愛をくれたような彼がいたのだ。
・でも裏切られたんだった。
理由なんて思い出したくもない。
些細なすれ違いの積み重ねだったのか
今となっては彼が悪かったのか私が悪かったのかさえもわからなくて
・私は”その場所”へと向かった。
私はもうその時のことを思い出したくもなかったはずなのに
また”この場所”へとやってきた。
『苦しい』
・でももうあの時の私じゃない。
あのときー。
『私は悪くなかったんだ。』
・わるいのは私ではない。わるいのはー。
こいにおちた音をはじめて聞いたとき、とてもドキドキした。
もちろん初めての経験だった。
そして私の中で芽生えた”新しい感情”
『あの時のどきどきをもう一度体験したい。思い出したい。』
”少しでもいいから彼のあの時の気持ちを感じてみたい。”
『こころが重なって一つになる気がするからー。』
そしてわたしは
『こいにおちます。』
ー。
【敬具】
〔語り手〕
その場所はだれにも見られないはずのビルの屋上だそうで
風の吹く音と歓楽街ならではの音がそうぞうしい、季節はもう冬ですね。
この街は常に人々で賑わってる。この街はいろいろな出会いがあり、別れがある。
ある意味、呪われてる。
彼女は男性をこいにおとし、その数か月後、彼女も同じ場所で男性を追ってかのように、こいにおちてしまった。
やがて彼女が残した”手紙”と思われる手記が見つかった、というわけだ。
あぁ、失礼しました。『故意に落とし』『故意に落ちる』だったかな。
日本語は難しいですね。
まるやまゆい
まるやまゆい
歌人 / 作詞作曲家 / ゲーマー / 自由人
『平成最終兵器』
noteでは
・僕について綴ってみた 編
・作詞した曲について 編
・まるやまゆい短編集 編
・思ってみたことを書いてみた 編
の4項目に分けて頻繁(?)に投稿予定
まさに令和に突如現れた『平成最終兵器』(自称)である。
X(旧)Twitter : @M4RUY4M4YUI
lit.link : https://lit.link/maruyamayui
作詞作曲などのお仕事のご依頼、イベントなどのご依頼お待ちしております。
ご依頼はこちらから : maruyamayui.info@gmail.com
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?