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もうひとつの“映画プリキュア”視聴体験記

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2021年(令和3)3月20日に公開されたアニメーション映画「映画ヒーリングっど♡プリキュア-ゆめのまちでキュン!っとGo Go!大変身!!」本編に追加・実装された「副音声ボイスドラマ」サービスについてのレポートである。

アニメのみならず日本映画として“初の試み”となる「本編の裏で巻き起こるサイドストーリー」を描くオーディオドラマとはいかなるものかという趣旨で執筆された。

「HELLO! MOVIE」(ハロー!ムービー)とは

スマートフォン、タブレット端末にアプリケーションをインストールして、アプリ内の「音声ガイド」から視聴する映画を選択して、映画館で再生・聴取するサービスの総称。音声ガイドファイルは映画館でしか聞けないので、アプリケーションや音声ガイドデータのダウンロードは、映画鑑賞前にあらかじめ準備しておくことをお勧めする。(ダウンロードには通信回線が必要なため)

利用までの流れ

1.AndroidとiOS対応アプリケーション「HELLO! MOVIE」をダウンロードする。時間的な余裕がある場合は、映画館に行く前に、アプリの「動作確認」で利用の一連の流れを把握しておくとよい。(初めて利用する場合は特にお勧めする

2.アプリ内で、鑑賞する映画の音声ガイドファイル(今回の場合「映画ヒーリングっど♡プリキュア」)をダウンロードする。(ここまではWiFi環境下推奨

3.映画館に行く。鑑賞する映画が「スマートフォンアプリ HELLO! MOVIE」に対応しているか確認すること。(タイトル画像参照。筆者は「T・ジョイ京都」7番スクリーンで鑑賞した)

4.「HELLO!MOVIE」アプリを起動して、音声ガイドファイル(「映画ヒーリングっど♡プリキュア」)を選択。スマートフォン・タブレットにイヤホンを接続して(今回の場合「キュアドリーム・夢原のぞみ」による)「音声ガイダンス」が再生されているかを確認する。

 4-1.開いたアプリが「マイクへのアクセス」を求めてくるので、必ずOK(許可)すること。マイク音声を感知してダウンロードファイルを再生する仕組みなので、設定が「on」になっていないと音声ガイドは利用できない。

 4−2.スマートフォン・タブレットにイヤホンが挿さっていないと音が出ない仕組みなので、「必ずイヤホンを用意」すること。厳守!

 4−3.アプリ利用中は、画面上(左上)の「戻る」に触ったり、スマートフォンやタブレットの電源を切ってはならない。ユーザーが意図するしないに関わらず音声ファイルが途切れてしまう仕様になっているので注意すること。画面に触らなければすぐに明度が落ちる仕様となっているので周囲への光漏れを気にする必要はない。(気になる場合はマイクをスクリーンに向けたまま画面を裏返すとよい)

5.「上映前の予告」音声を聞きながら、ガイダンス音声を聴いてスマートフォン・タブレットの音量を調整する。そのため映画館には余裕をもって到着しておくことをお勧めする。

 5−1.イヤホンの種類についてはできるだけ遮音性の高いものを使用すること。周囲の観客への配慮を忘れないよう、防音性の高い「カナル型」(耳栓方式)が推奨される。また本編内容とリンクする部分もあるので、映画の音声もうっすら聴こえるくらいにボリューム調整しておくのがベストである。

6.準備が整ったら、副音声ボイスドラマの視聴用に使用するスマートフォン・タブレットを「機内モード」にして待機する。

 6−1.機内モードは必須ではないが、アプリ利用中に電話やメールが入って音声ガイドが中断される可能性があるので注意が必要。

「プリキュア5ゆめのまちへ行く!」

映画に客演する「Yes!プリキュア5Go Go!」の登場人物、「夢原のぞみ・キュアドリーム」「夏木りん・キュアルージュ」「「春日野うらら・キュアレモネード」「秋元こまち・キュアミント」「水無月かれん・キュアアクア」「ミルク・美々野くるみ・ミルキィローズ」「ブンビー」による、もうひとつの“映画プリキュア”。ヒーリングっど♡プリキュアたちの活躍の裏で起こるサイドストーリー。

解説【ネタバレ】

「ヒーリングっどプリキュアたちと時を同じくして東京へやって来たプリキュア5の面々がある人物と会う」という意外といっては失礼だが、本格的なサスペンスストーリーになっている。プリキュア5の敵役「ブンビー」(声・高木渉)が全編(冒頭から35分ほど)に渡って登場すると言われて、おおなるほど、とすぐに分かるお子様はほとんどいないと思われ、筋金入りの「プリキュア5」マニアというか完全に「大きなお友だち」向けのとんでもない作品と言えるだろう。営業回りで菓子折りを買いに奔走する中小企業の社長(兼従業員)の悲哀をしみじみ聞かされてもちょっと……というか、かなり困る内容である。

解説【ネタバレおわり】

敵役をすべて成敗しないというプリキュアシリーズの特徴(ブンビーというキャラクターは他のシリーズでたびたび客演している経緯がある)がうまく活かされているともいえなくはないが、なにが哀しくて子供向け作品の副音声ガイドでしみじみと痛い目(?)に遭わされなければならないか、筆者に何か恨みでもあるのかと勘繰らざるを得ないのである。

もちろん本編映像とのシンクロ演出(プリキュア5がヒーリングっど♡プリキュアに合流する場面など)もなされているので、本来のサービス以上に、過剰に逸脱した快作(怪作)と前向き?に捉えるのが正しいのかもしれない。とはいうものの「一度映画を観た後に楽しむのがオススメだよ!」(公式Webページより)が、副音声ガイドまで聴かないと本編がわからないというのは問題だと思われた。試みとしては面白いが「プリキュア5は一体何をしにきたのでしょうか?」という本編を見た人なら少なからず抱くであろう疑問に対して、副音声ガイドがあるからと言われても困るのである。オーディオドラマを聴いている間は本編の内容など絶対に頭の中に入ってこないのでマルチタスクが苦手な人は前売り券を2枚以上買っておかなければならないと言われて納得できるのだろうかと言われれば甚だ疑問である。

おわりに

マナー広告等で散々注意されている「スマートフォンを映画館で使う後ろめたさ」から、想像以上にストレス全開な副音声ガイドが、どれくらい普及するのかは現時点では未知数に思われる。劇場側で正式なサービスとして承認されている(ちゃんと確認をとった)と分かっていても、観客同士のトラブルの元になるという懸念を払拭しきれないのが厄介である。

日本初!副音声ボイスドラマ」が最初で最後にならないことを祈るのみである。だいぶ苦言も呈したが筆者としてはこの企画、試みとしてはものすごく面白かったということも強調しておきたい。改善するべき点は多いとは思うが、問題をクリアしたときには映画館でしか体験できない、とんでもなく面白い仕掛けに化ける可能性を否定できないと思うので、今後の動向に期待したいところである。

追記。21年7月発売予定の「Blu-ray特装版」ならびに「DVD特装版」にドラマCDという形で「副音声ドラマ」が収録されることが発表された。「未公開パートあり」とあるのは良いとして、本編の副音声である以上、Blu-rayなりDVDの本編音声に組み込むのが筋ではないのだろうかと思うのだがどうだろう。

「了」

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