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Down the stairs

ほの暗い灯り。
急ぐ2人。

電車が着く。
あっち側まで
できるだけ早く。

人混みの中、
空いた隙間を
駆け抜ける。

こっち、こっち、
すぐそばから
聞こえる声。

私を導くことば。

視線の先には
よく知る顔。

私を一番安心させる
あの笑顔。

進んだ先には、階段。

行こう、と、
降りていく。

どれくらい降りたか、
ぐるぐると回りながら、
螺旋でもない、
景色がない、

そんな世界を、
ただ、降り続けていく。

まだ…?
息を切らして、
不安がよぎるころ、

前を進むその人に
大丈夫?と声をかけた。

返ってきたのは光。
楽しくなってきたでしょ?
そう言って笑う。

早く、早く、
笑いながら
そう言って、
駆け降りていく。

あぁ、そうか。
楽しくてもいいんだ。
楽しんでもいいんだ。

許された気がして、
軽くなった心と、
開かれた胸が、
急に、足を速めた。

降りていくことの
開放感と高揚感。

昇ることばかり
見つめていた。 

 降りてみることのほうが
怖かった。

誰かと一緒なら
できるかもしれない。
怖くても、
降りられるのかもしれない。

1人でやろうとしなくても。

新月の日。
訪れた夢のお話。 

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